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彼女たちの記憶を共有した俺の異常な日常  作者: るでコッフェ
第二巻
45/94

第43章 誘惑に追い詰められて

 再びハジメ視点へ


 リネアの単独作戦のせいで、俺の興奮は収まらず一睡もできなかった。まあ、それは大した問題じゃない。


 より厄介だったのは、「一人で寝るのが怖い」と言い訳してテントに潜り込んできた姉さんの方だ。


 血の気の多い俺を見て、作戦成功と思い込んだ姉さんはジャケットの裾を引きながら、口に避妊具をくわえ、まばたきする瞳で反応を待っている。


 もしこの狂った日々の前に、姉さんほど優しくて美しい女性に出会っていたら、きっと理性を保てなかっただろう。


 だが今は、リネアとナイラの姿が頭を占めていて、他の女性を考える余裕などない。それに軍事マニアにとって今夜は、作戦会議で戦術や落下傘、核兵器の話に夢中になるのが当然だ。


 この上なく魂が燃える話題ばかり。


 ほとんど裸同然の天然姉さんの誘惑になど興味を持てるわけがない。


 例えるなら、ワールドカップ決勝戦のロスタイムに愛するチームが決勝点を決めた瞬間を見ているサッカーオタク。たとえ理想の女神がベッドで裸で待っていようが、試合を見続けるに決まっている。


 夜半を過ぎ、リネアの戦闘危機が去った頃、ようやく姉さんに意識が向き始めた。彼女は気まずそうに黙り込み、世話を焼きたがりながらも誘惑を続けている。


 最初は紅茶を淹れたり飲み物を準備したり、寒さで震えるふりをしていた姉さん。次第に態度を変え、夜這いのような行動に移ってきた。


 視線を感じた姉さんが突然抱きついてきた時、俺はようやく事態に気づいた。


「ひーちゃん、そろそろ始める?」 姉さんは素早くシャツのボタンを外しながら囁いた。

「ダメだ、そんなことは…」


 俺は抵抗して手を払おうとした。だが姉さんはますます激しくなり、シャツの襟を引き裂き、上から押し倒しながら唇を重ね、徐々に下へと移動し始めた――


[ハジメ、本気で望んでいるの?] ナイラが割り込んできた。


[違う!全然そんな!] 俺は慌てて否定した。


[ふん…口では否定して、『弟くん』は正直ね] リネアが皮肉った。


[俺…我慢できない…] 姉さんの誘惑に体が反応し始めていた。手遅れになる前に制御しなければ。


「姉さん、落ち着け!」 突然体位を逆転させ、彼女の手首を押さえつけて下敷きにした。だが姉さんはますます興奮している様子。


 そう、これがチート能力の代償だ。この顔も災いする。シカとの事件以来、この力には予期せぬ『フェロモン』効果があることに気づいた。


「パン!」 俺の手の平が姉さんの頬に鋭い音を立てた。


 姉さんはハッと我に返り、顔を背けながら恥じらった。「ひーちゃん…激しすぎるよ。姉さん…まだ覚悟できてない…」


 ったく、明らかにお前が俺に乗り上げてきただろ!状況は再び混乱し、俺はまたもや切り抜けなければならなかった。


「姉さん、これは間違いだ。早く服を着て!」


 俺は急いで服を整えた。だが姉さんは服を着ていないばかりか、体に纏っていた唯一の衣類も引き裂かれていた。


[何も見てないぞ!] ナイラとリネアが他の女性の裸を見る俺に怒り出すのではないかと心配し、顔を背けた。


「ひーちゃん…姉さんは気にしないよ~」姉さんは俺の顔を膝の間に引き寄せ、潤んだ目で見つめてきた。

「でも俺は嫌だ」即座に答えた。


 瞬間、姉さんの表情が凍りついた。涙の粒が頬を伝った。

「ごめんね…これからもう邪魔しないから」まさに『失恋』という表情そのものだった。


 理解できなかった。どうして姉さんがここまで深く惚れるなんて。出会ってまだ一日しか経ってないのに! 内心では理由がわかっていたが。


 姉さんは適当に服を着て、すすり泣きながらテントから飛び出した。

[俺、やりすぎたか?] 胸が締め付けられる思いだった。

[いいえ] ナイラがきっぱり言った。

[正解よ] リネアは冷たく答えた。


 二人に賛同されても、罪悪感が消えない。しばらくして姉さんを探しに行った。


 テント近くで星を見上げる姉さんの姿があった。目尻がまだ濡れていた。

「姉さん…ごめん」隣に座り、涙の跡を拭った。


 姉さんは頬を優しくつねり、「悪いのは姉さんよ。欲張りだった…ひーちゃんがかっこいだから、独り占めしたくなっちゃって。許してくれる?」


「姉さんを責めたりしないよ。姉さんを見てたら…俺も我慢できそうになかった」照れくさそうに答えた。


「ひーちゃんって本当に口説き文句が上手いのね」姉さんは許されたと解釈し、目が満月のように柔らかくなった。


「それなら…姉さんが追いかけてもいい?」


 身を引こうとした矢先、俺の赤らんだ顔を見て、姉さんの情熱に再び火が付いた。


 頬が火照った。こんな露骨に追いかけられると宣言されたのは初めてだ。


[どうすればいいんだ?!] リネアとナイラに助けを求めた。

[答えは明白よ!] 二人の声が重なり、テレパシー越しにも脅威の震えが伝わってきた——間違った答えをすれば足を砕かれるような圧力だ。


「本、本当は…好きな人がいる」脳が思考する前に言葉が飛び出した。


「その子はひーちゃんの気持ちに応えてる?」姉さんが詰め寄る。片想いならまだチャンスは残っているとでも言わんばかりに。


「わからない…」実際のところ、二人とも明確に気持ちを表明したことはなかった。


「その子のこと、教えてくれる?」


「その子は…冷たいけど面倒見がいい。可愛いけど厳しい。優雅だけど狡猾なところがある」考えなしにリネアとナイラの特徴を並べていた。


[な、なにをバカなことを!] リネアの声が甲高く響く。一方ナイラは赤耳になりながら顔を背けていた。


「ひーちゃんって意外と女好きなタイプなのね~」姉さんは俺の鼻をつまんでジタバタさせた。


「ち、違う!俺は一途だ!」言葉が喉で詰まった。二人の間で心が揺れるくせに、どうしてそんなことが言える?


 一瞬の沈黙後、姉さんは突然俺に抱きつき、顔を胸に埋めた。

 下心のない感情の発散だとわかったので、そのままにした。


「ひーちゃん本当に意地悪…好きな人がいるのに、姉さんを惚れさせるなんて」

 柔らかな顎が胸元を擦り、まるで同化しようとするかのようだ。まったく理解不能な理屈だった。


「姉さん…そのつもりは…」

 徐々に罠に嵌められていく感覚。気づいた時には手遅れだった。


「関係ない!賠償しなさい!」彼女の瞳が鋭く光る。吐息が首筋を這い、全身が硬直した。


「ど、どう償えば…気持ちは代われない…」

「三日だけ彼氏になって。簡単に逃がさないから」姉さんは突然俺を押し倒し、顔を近づけた。


「でも俺には好きな人が…」


「たったの三日。彼女たちには内緒でいいじゃない」小悪魔のような笑みが浮かぶ。汚い手管に得意げだ。


[誰が内緒だ!] リネアとナイラの声が剣戟のように交差する。[全部聞こえてたわ!]


「だけど…」

「シー!」指が唇を押さえた。「静かに」

 殺気立った沈黙が10秒続いた。


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