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彼女たちの記憶を共有した俺の異常な日常  作者: るでコッフェ
第二巻
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第41章 洞窟への突入

「状況を報告しろ!」ツインテールはプロトコルに従い、リネアの小さな頬をピンと引っ張った。


「了解!」リネアは旅路で観察した全て――変異体人類グループの反乱を含む詳細な報告を淡々と述べた。


 報告を終えると、リネアはハッと何かを思い出したように、着陸カプセルのある方へ走り出した。ハッチを開け、強打で気絶しているナイラの身体を担ぎ上げる。


 青白い顔のナイラを見下ろし、リネアは一瞬、その無防備な姿にどこか愛らしさを感じたが……次の瞬間、ナイラが目を開けると、胃液をリネアの顔面に吐き出した。


「きもい…!」リネアは憮然とした表情でナイラを地面に放り投げた。


 しばらくしてナイラが回復する間、リネアは戦場周辺を点検し始めた。「これは……」彼女は一体の死体をひっくり返しながら思索にふけり、他の比較的無傷な遺体たちをじっと見つめた。


「問題でも?」ナイラも死体群を見るが、異常は見当たらない。


「2年前に謎の失踪を遂げた傭兵たちよ。私も調査に関わったが……まさかここで発見するとは」


 傭兵が任務中に一時的に消えるのは普通だが、集団での失踪は不自然。通常は行動前に暗号を残すが、彼らは何の痕跡も残さなかった。


 この大量失踪は地下世界に衝撃を与え、幾つかの組織が巨費をかけて調査したが手がかりなく、結局「謎の任務中に戦死」と処理されていた。


 実際に彼らは謎の死を遂げていた。正体は判明したが、リネアには真の敵の特定がまだ不可能だった。


 傭兵は金銭で動くだけで、永続的な所属先はない。時に自分が誰のため働いているかも知らない。


 リネアはバレッタを隠す場所を見つけると、地面からAK-74を2丁回収し、弾薬もいくらか手にした。


「ナイラ、これを携行しろ」

「了解」


 準備を整えると、ツインテールは熱感知センサーで洞窟の入口をスキャン。生命反応は検出されない。


「武装脅威は排除済み。洞窟探査任務を開始する」


 その瞬間――ツインテールのシステム内に隠されていたコードが突然起動。画面に新たな指令が表示された。


『指令:スカベンジャーチーム『ブルーレイⅡ-Ⅲ型』に合流し、地雷処理班27号と連携して核兵器解体任務を完遂せよ』


 ツインテールがリネアに近づき、ホログラフィックスクリーンに新任務の詳細を表示した。


 指示を伝えると、ツインテールは即座に洞窟の入口へ向かって動き出した。


「待て!変異体人類部隊はまだ洞窟内にいるわ!戦略もなしに突撃するなっ!」

 リネアは無謀に進もうとするツインテールの腕を掴んだ。


 ツインテールが停止し、赤く点滅する瞳で再スキャン。「二次スキャンで確認:半径10km内に生命反応なし。侵入を許可」


「分かったわ…ナイラ、警戒を怠るなよ」


 リネアは以前、入口で警備していた傭兵たちの存在をぼんやり記憶していた。今や彼らは痕跡すら残さず消えている。分析システムさえこの洞窟の構造をマッピングできない。『いったい何が潜んでいるのやら…』


「わかった」ナイラは遺伝子改造で骨密度と臓器の位置を再調整し、戦闘態勢を整えた。


 洞窟内に足を踏み入れると、鉄臭い血の匂いが鼻を突いた。戦場慣れしたリネアとナイラでさえ反射的に息を止め、遠方で朝食を摂ったばかりのハジメは嘔吐反射を必死に押さえた。


 目の前の光景は、最凶のホラー映画監督ですら想像できない残酷さだった。無残に散乱する死体――不自然に歪んだ体、風船のように膨れ上がった四肢、破裂した頭部から滲み出す灰色の塊。


(注:最も恐ろしく不気味な情景を描写したいのですが、適切な言葉が見つかりません。読者の想像に委ねます――生物学的変異と極端な暴力の融合をイメージしてください)


 洞窟は巨大軍事基地へと変貌していた。主通路には装甲車、戦車、戦闘機が整然と並び、山積みされた武器と弾薬はかつての兵力の規模を物語る。しかし今、数千の兵士たちは異常な傷を負った血まみれの亡骸と化していた:対称に切断された身体、蝋のように溶けた皮膚、恐怖で石化したような表情。


「死亡推定時刻…30分以内よ」ナイラが指先の血滴を撫でながら呟く。


「通常兵器ではないわ」リネアは半分消滅した死体を指差した。「まるで…巨大生物の咬痕のようだけど――」


 無秩序な傷のパターン、同時多発的な死亡時刻、死体の遺伝子改造。二人は気づいた――『あの存在』だけが、数分でこの惨劇を引き起こせると。


 傭兵たちの凍りついた恐怖の表情は、彼らが非道の虐殺に遭った証拠だ。ひっくり返された装甲車が物語るのは、戦いではなく「一方的な殲滅」という事実だった。


 銃痕と空になった手榴弾の散乱が、彼らが最期まで激しく抵抗したことを物語っていた。しかしその英雄的行為も虚しく――鋼鉄の床には凝固した血の海が広がるだけだった。


 ツインテールは洞窟最深部の制御室へと彼らを導いた。冷たい手つきで30分前の監視カメラ記録にアクセスする。


 画面には変異体人類部隊が、一人の痩せ衰えた老人に従って基地に入る様子が映し出された。正体不明の武装集団が奇妙なシンボルが刻まれた金属製の箱を運んでいる。


 老人は煙を立てる黒い結晶を20個以上取り出す。変異体チームが騒然となる中――

 突然、彼らの顔が痙攣し、筋肉が不自然に膨張。瞬く間に、家畜を屠るが如く傭兵たちを引き裂く殺戮マシンと化した。


 銃弾や爆発は変異体をさらに凶暴化させるだけ。老人と部下たちは薄笑いを浮かべ、この虐殺をダンスの再演でも観るように眺めていた。


 最後のシーンでは、胴体を破壊された傭兵が崩れ落ちる傍らで、変異体たちが次第に「平静」を取り戻す――瞳は虚ろになり、主人に従って地下通路へ消えていく。


「不自然ね。なぜ監視記録を消去しなかったの?」リネアが眉をひそめる。


「彼らには不要だったからよ」ナイラが倦怠気に呟いた。「ここにある全てが暴露済みなら、わざわざ消す必要もないわ」


 記録を見終えた後、空気が鉛のように重くなった。リネアがそっと拳を握る。この規模の部隊を数分で壊滅させる力――

 小国ですら彼らの前ではひとたまりもないだろう。


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