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彼女たちの記憶を共有した俺の異常な日常  作者: るでコッフェ
第二巻
38/94

第36章 リネアの任務状況

 リネア視点

 呪いの手紙を処理した後、私は戦闘装備を再点検した。


 防寒用戦闘服一式、バレットとデザートイーグル各1丁、大口径弾100発、拳銃弾200発、ライフル用マガジン5つ、拳銃用マガジン6つ、戦闘用ナイフ2本。


 [普通の襲撃者なら、この限られた兵站が問題になるだろう。だが私には関係ない。弾道計算なんて脳内で完結するんだから。この弾丸一つ一つが確実に敵の頭蓋骨を貫くわ]


 [狙撃用スコープ?最適射撃距離?戯れ言ね!この肉眼の方が古臭い機械より精密だもの]


 見下すような視線でスコープを投げ捨てた。補助器具なしの狙撃こそ、真のスナイパーの誇りだ。


 [ハハハ……!]刃物のような笑いが喉から零れ落ちる。


 [リネア、無謀すぎる。スコープを装着し直せ]ハジメが不安げな眼差しで私を監視する。


 [あんた、私の技量を疑ってる?]氷のような口調で言葉を突きつけ、意識的に距離を置く。


 [違う!ただ…お前を危険に晒したくないだけだ]


 [か…関わらないでよ!]


 彼の声の震えに胸がざわめく。だが私は感情を押し殺した――この高慢と意地が弱さを認めることを許さない。


 装備の確認を終え、私は任務報告書にあった謎の洞窟へ急行した。


「全ユニット、位置確認!」無線からしわがれた声が響く。


 [……]いくつかの部隊報告が流れた後、私の名前だけが無線を沈黙させた。


「スノータイガー01、周波数確認。応答せよ」


 私は意図的に無線を無視した。単独偵察任務で位置を明かすのは自殺行為だ。ましてやチーム内の裏切り者の疑い……


 無反応を見て、敵は通信周波数を変更したようだ


 [私の通信を撹乱?戯けるな]親指が無機質に周波数ボタンを踊る。数千の電波の中から暗号化された囁きを捕捉する。


「全ユニット、グリッドブラボー7に集合。『白夜の太陽』との直接接触を許可する」


「新人はどうする?」


「現場で射殺だ」


「それは筋が違う。どうせ同じ境遇の同胞なら、機会を与えるべきでは」


「一ヶ月前なら慈悲も示したが…今はリスクが大きすぎる。即時排除だ」


「だが…」


「異論は認めぬ。黙れ!」


 無線の電源ボタンを握り潰す。状況は明瞭だ――この変異体チーム全体が反逆を企てている! 元々困難な任務がさらに絶望的になった。


 ラスト・ディフェンス・ラインは裏切り者を想定していたが、全面反乱など予測外だ。これほどの脆弱性は組織の根幹を揺るがす。


 変異体チームの戦闘効率は通常兵の比ではない。彼らの反乱は肝心要への直撃だ。


 反逆の理由などどうでもいい。今、この脳裏に燃えるのはただ一つの信念――根絶やしにしてやる!


 洞窟へ向かう迂回路を進み、作戦区域の部隊配置を避ける。変異体各員の特殊能力を考慮すれば、戦力分析なしの接触は自殺行為だ。


 夕闇が夜明けに変わる頃、ようやく目標洞窟の境界に足を踏み入れた。


 崖の光と影の戯れから、128の武装シルエットが洞窟に潜伏しているのが感知できる。各熱源が記憶領域にマッピングされる。


 即座に理想的な狙撃ポイントを選定。肩に載せたバレッタが冷たく呼吸を合わせる。五感全てが破壊力・攻撃パターン・弱点の計算に集中する。


 [戦場解剖を始めよう]


 DShK-38/46(重機関銃)6基、SVDドラグノフ3丁、RPK-74が10丁、残りは改造AK-74。


 [あら?RT-20まで?]クロアチア製対物ライフルに目を見張る。なぜ象並みの兵器がここに? そんな破壊力は過剰というもの――


 唾を飲み込んだ。非正規軍団の装備としては異常すぎる。


 かつての私なら、この戦力差に撤退を選んでいた。だが今は、弾道予測が可能な超演算脳を有する。敵弾も味方弾も軌道が読めるのだ。引き金を引いた瞬間、彼らの死体が転がるまで安眠できる計算だ。


 距離4キロ。私の弾丸が敵に到達するまで10秒――敵の反撃も同時間だ。その10秒で必要なのは…せせら笑う余裕だけ。


 敵弾の軌道計算能力により、彼らの鉛の雨を塵芥のように躱せる。重機関銃やRT-20の有効射程は3,000メートル。雑魚兵が1,000メートルまで這いずり回っても、私の皮膚に傷一つ付けられまい。


 6基の鉄の巨獣(DShK-38/46)が最優先目標。真っ先に葬り、次にRT-20を処理する。敵が1,200メートルゾーンに接近したら、SVDとRPKを狩る。500メートル以下? ネズミを一匹ずつ駆除するだけだ。


 [待て…冷静に…奴らに先手を取らせろ]


 岩陰に身を伏せ、バレッタを呼吸と同調させる。変異体チームはまだ姿を現さない。洞窟深くに誘き込むまで、この武装集団との戦闘を遅延させる必要がある。


 百人以上の武装勢力に変異体チーム…この包囲網を突破するには奇跡が必要か


 [リネア]ハジメの声が意識に潜り込む、柔らかいが煩わしい調子。[お前は強いが、無茶をするな]


 [黙れ!今無茶しなければ、一瞬の隙で頭を飛ばされるわよ!]鋭く返しつつ、彼の心配の波動が胸を不規則に鼓動させる。


 […確かに。わかった。俺が支援する]


 [支援?どうやって?――]


 [ナイラ]ハジメが遮る。[準備は?]


 [待って、もうすぐよ。3…2…]ナイラの囁きが神経を撫でる。


 急に首筋に蚊に刺されたような感覚。視界が徐々に滲み、世界が螺旋を描く。


 [はあっ!?これ…何を――]


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