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彼女たちの記憶を共有した俺の異常な日常  作者: るでコッフェ
第一巻
35/94

サイドストーリー2 メモリートークショー1

 簡潔に言えば、私たちは今集合的意識の空間にいた。広大な想像の海の中心には、マイクと豪華な3脚の椅子を備えた荘厳な演壇がそびえ立っている。


 カチッ!

「ハジメ、カメラの録画はオン?」前髪を整えながらリネアが聞く。


「ちょ待ち、今起動する」俺はホログラフィックカメラの側面にあるボタンを弾く。赤いランプが花開き、録画開始の合図だ。


「準備OK!」親指を立てて二人に向かって合図する。


「では、読者様へのメッセージ伝達儀式を始めましょうか」外交官のような笑顔を浮かべながら、ナイラが机の上で優雅に指を踊らせる。


 イチ。

 ニ。

 サン。


「メモリートークショー第一巻お別れスペシャルへようこそ!」三人の声が重なる。リネアの声はわざと張り上げさせてテンション調整した。


「今回のエピソードでは、小説『彼女たちの記憶を共有した俺の異常な日常 』の締めくくりストーリーとキャラクター分析を徹底解剖します!」プロ司会者のように解説するが、すぐに二人の態度に崩される。


 パチパチパチ!

 ナイラが芝居がかった拍手で応える一方、リネアは咳払いしながら顔を背ける。「こっちまで...おバカな真似に付き合うなんて期待しないでよね」と呟くが、瞳の輝きが怪しい。


「本題に入る前に、今夜の司会者トリオをご紹介しましょう」彼女たちが不機嫌になる前に話題を変える。「右側は、甘い笑みで敵を罠にはめる天才頭脳の腹黒女...ナイラ・アスカ!」

「ハジメ!」叱責するような声を上げたナイラは、すぐに政治家らしい水晶のような笑顔に変わる。「その紹介文は私が読者から嫌われるように仕向けてるわね。訂正すべきかしら?」


「あら、ナイラの『視聴者様挨拶忘れ』がまた発動か」カメラを指さしながら遮る。


「まあ!」作り物の驚きで口を手で覆う。「尊き読者様、改めてご挨拶を。ナイラ・アスカと申します。麗しき容姿とユニークな実験を愛する者ですわ~」ウインクしながら言い、リネアを顰めさせる。


「続いて」また喧嘩が始まる前に急いで続ける。「柔らかい毛並みに隠された野良猫のような鋭い舌使い...リネア・ジョバンカ!」


「ハ、ハジメ!!」頬を真っ赤に染める。「その恥ずかしい紹介は何のつもり!?野良猫...柔らかい毛並み...バカ!」霧のかかった目で俺を睨みつけながら拳を握る——ツンデレ症候群発作の兆候だ。


「見ろ?扱いに明らかなダブルスタンダードよ!」ナイラが細目になり、人差し指で椅子の肘をコツコツ叩く。「私が腹黒で、彼女が可愛い猫...ふむ?」


「そういう問題じゃないわ!」俯きながら反論するリネアの三つ編みの先が揺れる。


「落ち着け」安全距離を保ちながら近づく。「これはただのストーリーダイナミクスに沿ったロールプレイだ。それに」悪戯っぽい笑みを浮かべる。「二人とも自分の役柄には慣れてるんだろう?」


「どこがロールプレイ!」


「そして最後に!」素早く割り込む。「二つの極の狭間で板挟みになりながらも番組を進行する苦労人... 高橋ハジメ! あなたたち二人の嵐のような態度に翻弄されながらも今日の司会を務めます!」


 集合意識の空間は突然、大人ぶったナイラの口論と負けじと拗ねるリネアの声で騒然となる。俺は苦笑いしながら彼女たちの言い争いを放置——少なくとも自己紹介コーナーで我々の独特な化学反応は引き出せたようだ。


「読者様もお察しの通り、司会者としての俺の立場は代替不可能だ」カメラに向かって目を細めながら、突如現れた幻の木製テーブルを指でコツコツ叩く。


「さあ、次は『出演者たちの本音』コーナーに突入!」突然硬直するリネアをドラマチックに指さす。「リネアさん、どうぞ~」


「え? あ、あたし...? っつーか...」リネアは言葉に詰まり、子猫のように恐怖で縁取られた瞳で髪のリボンを握りしめる。沈黙。空間には針の落ちる音が響く。


「クンッ!」ついにツンデレ特有の甲高い声で爆発。「ど、読んでない人に言っとくけど...この小説...超常識はずれ! 記憶共有なんてデジタルストーカーみたいな設定、作者はきっと頭がイカれてると思う!」


「その通り!」知性的なポーズでこめかみに中指を立てるナイラが割り込む。「最初は作者さんは自信喪失してたわ。『陳腐なラブコメやシステムものに変えるべき?』って。読者様の支持が絶望の淵から救ってくれたのよ」


「もし敢えてバッドエンドで締めたりしたら」リネアが突然刀のような眼差しで襲いかかる。「あたしがプロット解析のナイフで原稿を貫く! 七世代先まで小説を読むトラウマを刻み込んでやる!」


「速報です!」想像のテレプロンプターを読むふりをする。「作者から悲報:悲劇的結末が検討中!」


「えええっ!?」二人の甲高い悲鳴。ナイラは幻のグラスを落とし、リネアは空気で喉を詰まらせかける。


「安心しろ」苦笑いしながら自分の髪を揉む。「神の本ではハッピーエンドが保証されてる。ただし...」深く息を吸い込み、「...あなたたちのケンカ癖で運命が変わる可能性はある」


「ど、どんな運命よ!? ふざけるなハジメ!」リネアが机を叩きながら怒鳴るが、真っ赤になった耳が心配を裏切っている。


「では」策略を練るナイラに振る。「巻末の第一特別編についての意見は?」


「ちょ、待って!」水をかけられた猫のように跳び上がるリネア。「な、なんでこんな恥ずかしい話題を...! これまたどんなプライバシー侵害よ!?」


 ナイラは優雅に脚を組み、悪魔的な笑みを浮かべる。「リネアちゃん、あなたの純真さは過去の章で丸裸よ。まだ隠すつもり?」


「だ、黙れ!!」耳を塞ぎながら叫ぶリネアの顔は熟れたトマトのよう。「これ...文芸版人権侵害だわ!!」


 カメラに 悪巧み 気取って近づく。「視聴者の皆さん、このレア表情はお早めに保存を」ナイラとこっそりハイタッチ——悪魔コンビの妨害作戦成功!


「最後のコーナー!」リネアが椅子を投げる前に先回りする。「作者への苦情コーナーだ。ナイラ、どうぞ」


「ふむ」ナイラが顎を叩き、実験用マウスを観察する研究者のような笑みを浮かべる。「作者さんはサディストね。私たちを荒唐無稽な状況に閉じ込めるなんて:変異蚊のパーティー、探偵風ブラインドデート、それに...あの記憶共有シーンまで」目を細める。「でも...」突然柔らかい声に。「そこが予測不能な魅力よ。RNAウイルスのように——予測不能で、致命的」


「あたしは...」リネアが幻想の天井を見つめながら呟く。「...ちょっと感謝してる。方法は頭おかしいけど、作者の頑張りで私たちは...」


「おや?軟化したかしら?」ナイラがニヤリ。


「ち、違う!!勝手にしろ!!」リネアがカメラに背を向けるが、肩の激しい上下が丸見えだ。


 意識空間が突然暖かいオーラに包まれる——


「次は作者への秘密メッセージコーナー!」ナイラが狡猾な目でカメラに近づくのを指さす。


「私のリクエストはシンプルよ~」ネコが獲物を見るように舌を舐める。「私専用の天使軍団を追加して!それと...」声を曇らせて囁く。「...密室実験室で、看護師コスチュームを着てビィーップしながらビィーップするシーンを...」


「カット!!」マイクを奪い取る。「リネア!規制される前にセーブしろ!」


 ナイラを膝で押しのけながらマイクを掴むリネア。「あ...あたしからは...」皺だらけのスカートを握りしめながら喘ぐ。「下品な女を増やさないで!それに...恥ずかしい表情を追加しないで!!」


「待てよ」想像のメモ帳を広げる。「リネアの照れ顔は最高のコンテンツだろ——」


「黙れ!!」リネアの靴が顔寸前をかすめる。「次はハジメの番よ!司会者って理由で逃げるな!」


「俺はただ...」ロマンティックヒーロー気取りでカメラを見つめる。「作者、ラブシーン増やせ!ハーレムルートで手繋ぎまみれ、頬チュウ日常化、そして——」


「全面拒否!!」二人の声が轟く。ナイラが裁判官のように腕組み、リネアはハンカチを噛み千切る。


「でもラブコメタグ付いてるだろ!」意識空間の天井で点滅するジャンルタグを指さす。「他の主人公と違って、俺たち第1章から親密なんだぞ!」


「だからこそ!」リネアがテーブルを叩き幻想のグラスを割る。「安っぽい恋愛ドラマ抜きで心通わせられることに感謝しろっての!」


「ええ」冷血科学者の笑みを浮かべるナイラ。「感情探求は実験的に行うもの:幽霊カフェデート、宿敵ロールプレイ、あるいは...」目が輝く。「...更衣室でのコスチューム事故でビィーップ——」


「ストップ!!」リネアが耳を塞ぎながらしゃがみ込む。「この番組はファミリー向けでしょ!!」


「失礼だが、この小説は15+指定です」カメラに向かって目を細めながら訂正する。「では本題に戻り——」


「もうたくさん!」ナイラが立ち上がる。「ハーレムが欲しければ、戦争で私たちを倒して見せなさい!私のシナリオではあなたが...」


「必要ないわ!!」リネアが緊急シャットダウンボタンを叩く。カメラのランプが赤く点滅。


「ほら!バッテリー切れだ!」ジグザグに走りながらリネアの枕攻撃をかわす。


 ガシャン!画面が真っ暗に。


 舞台裏:

「ハジメ!!」

「カメラ再起動しなさいよ!」


 波音と怒鳴り声が暗闇に飲まれる。


「よし、復旧した」想像のネクタイを整えながら、ちらりと薄暗いカメラレンズを見る。「最後に、作者を代表して——この物語の酸素となってくださった読者様へ、天にも届く感謝を捧げます」


 リネアがツンデレ特有のぎこちない動きで髪のリボンに触れ、声を詰まらせる:「別に...反応なんて求めてないけど...と...とにかく、ありがと」。素早くうつむき、赤らみ始めた頬を隠す。


 ナイラが外交官のような身振りで指を優雅に回す:「私たちの感謝は幹細胞培養のように——皆さんの応援で指数関数的に増殖しますわ」。悪魔的な笑みを浮かべ、「次巻へもエネルギーを注入するのを忘れないでね~」


「ありがとうございました!」三人の声が揃い、完璧にシンクロしたアイドル式お辞儀——リネアを赤面させるために密かに仕込んだ演出。


 最後のメッセージ:

「画面が完全に暗くなる前に」ホログラム携帯をいじるナイラを指さす。「別れの言葉は?」


 ナイラがカメラへ燻し銀の視線:「第二巻のプロットツイストに備えなさい。内緒話——」


「もういい!」リネアがマイクを奪い、怒りと感動が入り混じった声:「ただ楽しんで! コスプレイベントとか...メイド服サービスなんて絶対に期待しないでよね!」


 クロージングカウント:

 イチ。

 ニ。


「第一巻お別れスペシャル、閉幕!」アイドルグループのように跳び上がる。「コメント残して? メイド服のリネアをお届け——って違う! そうじゃなくて——」


 ブーッ!人工的なシャットダウン音が発言を遮断。


ポストクレジットシーン:

かつての荘厳な意識空間はがらんどうの倉庫と化していた。


ハジメが比喩的な埃を払いながら疲れた顔。「ガラガラ!」次元の扉が紙を破る音と共に開く。


作者:(皺になったTシャツとクマ目で登場)「また…カメオ出遅れたか…」一晩中執筆したゾンビのようなしゃがれ声。


ハジメ:(箒をむせながら)「すみません先生。ナイラが新キャラのプロトタイプを持ち逃げし、リネアは自分を部屋に閉じ込めて…」


作者:(虚ろな目で空の演壇を見つめる)「ただ…みんなと記念写真が…」プリンタから出たばかりの温かい特別編原稿を握りしめる。


ハジメ:(先輩風に背中を叩く)「次回はファンサービス編を作りましょう。水着姿のナイラも確約しま——」


作者:(光の粒になりながら消失)「第二巻であなたの為に…ラブコメ地獄を…書いてやる…」


ハジメ:(空中に浮かぶ読者コメント群を見上げ苦笑)「先生…僕らは皆…貴方の手の平の上で踊る人形ですよ」


ナイラの高笑いが響く中、画面が暗転。

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