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彼女たちの記憶を共有した俺の異常な日常  作者: るでコッフェ
第一巻
30/94

第30章 バカなチンピラに関わる朝

 翌朝、騒がしい物音で目が覚めた。テントを出ると、国道沿いに4、5台の車が停まっているのが見えた。運転手らしき3人が激しい口論を繰り広げていた。


【放っておけ。俺の知ったことじゃない】帽子を深く被り、テントを撤収して軍用ブーツに身を固めると、馬に乗り込んだ。リュックから両刃のダガーを2本取り出し、1本は腰裏に、もう1本はブーツに隠した。


 準備を整え、真っ直ぐな道路沿いを進み始める。騒ぎの傍を通り過ぎようとした瞬間、バイク集団がこっちに目を向けた。


「親分!逃がすなよ!こいつが俺を殴った奴らの仲間だ!」足を押さえて痛がり芝居する男が叫ぶ。5~6人のスキンヘッドの男たちが金属バットを構えて立ち塞がった。


【なんだこれ?通りすがっただけなのに...】


【この辺りで略奪や恐喝を働くローカル・ギャングよ】リネアが辛辣な口調で割り込む。【見なさい、あの痛がってる男の足に傷なんてない。親分は『女の子』が一人きりなのを狙ってるの】


【わざとトラブルを作り、人質を取って金品や...他のものを要求する】冷たい笑いを添えてナイラが続ける。【あなたの顔がターゲットになったわね】


【最悪の運命だ...!】


【むしろ彼らの方が不幸になるわ】リネアが嘲笑う。【後方の3人の騎馬兵を見なさい。長銃身のライフルが鞍に結びつけてある。田舎者ギャングの度胸が笑えるわ】


【関わるのも面倒だ...】舌打ちしたい衝動を抑える。


「何の用だ?」彼らの下心を見抜きつつ、無知を装って問いかける。


「うちの子分を殴って逃げる気か!今すぐ馬から降りろ!」親分が唸る。部下の一人が早速、金属バットで俺の鞍を叩きつけた。


「親分!こいつを見てください!」別の部下が鞍の袋を開けて喚く。「金塊だ!全部金だぞ!」


「このバカ野郎!」親分が部下を平手打ちにする。「何百斤もの金を落とすところだったじゃねえか、このドアホ!」


「小娘、なかなか色っぽいじゃねえか。2万~3万払って、俺たちと少し『遊んで』くれりゃ、今日は見逃してやるよ」親分が腿元を舐めるように視線で撫でながら言う。


【ふふ...市場のチンピラ以下ね。口だけ達者で根性は小指の先ほどもない】ナイラが冷ややかに嘲笑う。


【そうね。マフィアと呼ぶのも憚られる】リネアが嫌悪感たっぷりに同調する。二人とも本物の闇社会を知り尽くしていた。真の大物はむしろ謙虚なもの。こういう社会のクズどもが、弱い女を食い物にしたがる。


「誰も殴ってない。どけ!」声を鋭く立てると、馬の尻をパンと叩いた。馬は前脚を上げ、目の前のギャングを踏みつけた。


 バキッ!


 悲痛な叫びが屠殺場の豚のように響いた。「親分!足が...ぐしゃぐしゃだ!」部下の泣き声に、返ってきたのは容赦ないビンタだった。


「役立たずが!」親分が唾を飛ばす。「おい!この牝犬を捕まえろ!今日中に俺たちの玩具にしちまう!」


 リーダーは苦悶する部下にすら目もくれない。「選択肢は二つだ、小娘」狡猾な目を細める。「一つ、俺の妾になる。高級ドレスを着せて別荘に住まわせてやる。月3万払うぜ」


「もう一つは...」黄ばんだ歯を見せて嗤う。「ここでみんなで犯すしてから、中国海のクルーズ船に売り飛ばす。選べ!」


「へえ~警察に通報されても平気なの?」遠くを走る数十台の車列を睨みながら言い返す。


「警察だと!?」荒々しい笑いが炸裂する。「10km先まで電波不通だ!どんなに叫んでも誰も聞きゃしねえ!」酒臭い息を撒き散らし近づいてくる。「仮に通報できたって、あいつらが来るまで2時間は『遊べる』からな」


【虎の前で猿が吠えてる様だわ】ナイラが嫌悪混じりに呟く。


【きもい!】リネアの声が怒りに震える。彼らの獰猛な欲望の臭いが喉元を締め付ける。


 確かにこの道路は電波が届かない。だが通行中のドライバーや観光客が黙ってないはず。チャンスがあれば緊急通報ボタンを押しているだろう。高原州の民はこんなチンピラを許さない――通報するのに躊躇なんてしない。


 それに、この州の幹線道路は数えるほどしかない。これだけの人数でいれば、雪山で凍死屍になる覚悟がない限り、数時間で逮捕されるのがオチだ。


「お前の提案など選ぶものか、この脳みそ猿が!」左目で嘲笑いの瞬きを送り、舌を出して挑発する。その表情がたちまち醜い集団の怒りに油を注いだ。


「良けえ!自業自得だ!」親分の顔が紅潮する。「まだぼやっとしてんじゃねえ!この生意気女をぶっ潰せ!!」躊躇う部下の尻を蹴り上げる。


 手下たちが慌てて押し寄せ、汚れた手が馬上の俺の足腰を掴んで引きずり降ろそうとする。


「そんなこと誰が許す!」


 腰裏から抜いたダガーが空気を切り裂く。刃先が胸元で冷たい輝きを放ち、腰抜け集団は凍りついた。薄笑いを浮かべながら彼らの震える様を眺める。


 親分の充血した目が俺の表情を捉えると、額の血管が膨れ上がった。勝利の微笑を深めるたび、彼は沸騰するやかんのように唸り声を上げる。


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