第22章 最後の防衛線(2)
最初のページ。
最初のページには、五角形の黒いスタンプが押されていた。
[これは…?] ナイラとリネアは同時に安堵の息を吐いた。このスタンプの意味は重大すぎた。
人員移動命令:
機密レベル:極秘
実行時期:即時
命令内容:本日付をもって、我が局所属職員リネアの指揮権及び管轄権をXXXXXX部へ移管する。原本人事書類は本命令と同時にXXXXXX部へ転送済み。
[そのクソ部署の名前は何だ? なぜ書いてないんだ?] 俺はつい口を挟んでしまった。
[ハジメ!うるさいぞ!]
[悪い、つい…。こんなの初めてでな] リネアの視界を借りて覗き見しているだけなのに、まるでスパイ気分だ。
…気をつけよう。リネアに迷惑をかけちゃいけない。
これでリネアは、目の前の「姉さん」が味方だと確信できた。だが、この人事異動は明らかに不自然だ。
「申し訳ありません、ご存じなかったようですね」
姉さんは胸の谷間からもう一つの書類を取り出し、リネアの前に置いた。
[ちくしょう!なんでそこに保管するんだ!? まさかリネアの目を通して覗いてる俺に気付いて、わざと挑発してるのか?] 俺の集中力がまた乱される。
[少なくともFカップはあるわ] リネアとナイラも小さくはないが、それほどのサイズと対面すると、やはり劣等感を覚えるらしい。
「ここにサインを」姉さんは再び胸からペンを取り出し、署名欄を指さした。
[もうコメントするのも疲れた] いつまでこの手を使う気だ?
「機密内容は?」書類には秘密保持契約(NDA)しか記載されていない。
「申し訳ありません、署名後にしか閲覧できません」
姉さんの柔らかな笑顔に、何やら怪しい光が宿っていた。
「拒否したら?」リネアがつんけんと聞く。
「どうなると思う?」姉さんは悪戯っぽい笑みを浮かべ、肩をすくめた。
リネアは追い詰められた。…ああ、俺はただの観測者だ。
「分かりました。署名します」リネアはイラついたように息を吐き、サインをした。
それを見て、姉さんの笑みがさらに深まる。再び胸の谷間から書類が現れた。
[胸の谷間って…四次元ポケットか? どんだけ収納できるんだ? 深さはどれほどなんだ?]
リネアが警戒する間もなく、その谷間に頭ごと押し込まれる。
「あ、あんた! 離してよ――!」
「近づかないで…っ!」
リネアは必死で姉さんを押し返し、息を切らした。
「何するんですかっ! 私には恋人がいるんだから、変なことしないで!」リネアの思わず出た言葉に、ナイラと俺は頬を染めた。
[ナイラのことじゃないわよ!] リネアが慌てて否定する。
[じゃあ…俺のこと?] 俺は苦笑を隠せない。
[違う!そういう意味じゃないの!] リネアはますます慌て、顔を真っ赤に染めた。
「ごめんね、妹ちゃんが可愛すぎてつい…」姉さんはリネアをきつく抱き締めた。「あら、彼氏がいるんだ?」
「いい加減に!早く秘密情報を出しなさい!」
「はいはい…」姉さんはため息をつき、ファイルバッグから書類を取り出した。「これがあなたの任務書よ」
任務書内容:
氏名:特殊連絡員軍曹 リネア
階級:中尉
コードネーム:雪虎一号
所属:第十レンジャー偵察隊
配属:ラスト・ディフェンス・ライン
直属上官:M嬢
ラスト・ディフェンス・ライン概要:
『時計の針が真夜中を指す刻、数え続けるのは、ただ我らのみだ。』
第二次大戦後設立。人類存亡の危機に対処するため五大国が認可。グローバル軍の動員権及びレベル1危機時の核兵器掌握権を保有。英雄でも悪役でもない——人類と滅亡の間の防壁。
主要部門:
1. 第十レンジャー偵察隊
『我々は輝きの庭で挑まぬ——光の根源となり、混沌の闇を貫き砕く』
・超人的能力を持つ者で構成された戦闘部隊
・虎耳を持つリネアに最適
・高危険任務担当:超人テロ組織本部への潜入、時間歪曲地帯での諜報活動、秘密研究所から逃亡した実験体の鎮圧
2. スカベンジャー部隊
『世界は爆弾を恐れるが、その残毒を忘れている。我々が解毒剤だ』
・IQ200以上の天才集団:化学者、物理学者、兵器技師
・ナイラは前部隊から異動
・危険地帯浄化任務:チェルノブイリ2.0汚染地域の除染、冷戦期生物兵器の永久封印、反乱AI制御原子炉の停止
『人類最後の盾』
「感謝など望まぬ。ただ、あなたが安らかに眠るその裏で、我らが絶望の淵にて見張り続けていることを願うのみだ。」
我々の任務は文明の命運を決する——歴史は我々を脚注か墓標に刻むだろう
読み終えたナイラとリネアは同時に書類を閉じ、青ざめた表情を浮かべた。
[これ…想定の範囲を超えてるわ]
[え? じゃあ俺だけ取り残されたってこと?] 思わず呟いてしまう。
[ち、違う!今の言葉は無効よ!] 俺は慌てて前言を撤回した。
お疲れ様です!第22章、いかがでしたか?
今回の姉さんキャラ、書きながら「四次元谷間は便利すぎる…!」と一人でツッコミを入れつつも、なぜか羨ましさも覚える矛盾した気分でした(笑)。
秘密組織「ラスト・ディフェンス・ライン」の設定、実はコーヒーこぼしながら深夜3時に「人類存亡とか核兵器掌握権とか…これやりすぎでは?」と悩みつつ書いてました。
いつも応援ありがとうございます!
(現在AM2:45。姉さんの谷間描写が脳内ループして寝不足気味)。
(※追記:次回予告の「M嬢」、実はメガネっ娘です。絶対)