第16章 戦闘服
俺は急いで寝室を出ると、リネアとナイラが着替えを終えるまで外で待った。
外に出たとはいえ、二人の少女が服を着ている姿の残像が脳裏に焼き付いており、鼻血が出そうになるほど顔が熱い。完全に服を着終わるまで中に入ることを許してくれないんだから。
「手を見せなさい。検査してあげる」ナイラが袖をまくるように指示しながら掌を差し出した。
青白い肌を露わに要求に従うと、ナイラは一滴の血を摘出し俺の腕に塗った。「ハジメ、タイで要らない部分を切除する小手術を受けてみない?」
突然ナイラの唇が数ミリまで接近し、俺の口元すれすれに迫ってきた。
「ありえない。そんな狂った考えは捨てろ!」
誘惑的なまなざしを避けるように顔を背けた。もし騙されたら、本当に彼女の術中にはまってしまいそうだ。
「ふん!」
ナイラが不満そうに腕を強くつねった。俺は痛みに咽び声を上げながら手を引っ込めた。
「悪ふざけはよせ!結果はどうだ?体に異常はあるのか?」
「正常よ。遺伝子発現に少し変化があっただけで、構造的変異ではない」彼女は淡々と答えた。
「じゃあなぜ俺の見た目が...こんなに美しいんだ?いや、『イケメン』と呼ぶのはもっと的確か?合理的な説明は?」
「当然よ。雪山では極限環境に適応してたけど、文明社会に戻れば肉体的調整が必要になるわ」ナイラは腕を組んだ。「今流行りの『イケメン男子』基準に合わせただけ」
そう言いながら彼女は俺の頬を両方つねった。「こんな美しい顔が男子なんてもったいないわ!」
ムッとして彼女の手を払いのけた。「男が美しくていいんだよ。妬んでるだけだろう」
「妬む?あなたより惨めな他の男子たちが気の毒でね」
「言い訳は結構。だが他に理由があるんだろう?隠してるな」
「他に何の理由が?妄想はやめて!」ナイラの声が少し上ずった。
突然速くなった彼女の鼓動が手に取るようにわかる。俺はすぐにナイラの思考深く潜り込み、ついでにリネアの意識にも触れて確認した。当たりだ。
「急に黙り込んでどうしたの?」ナイラがますますいらだちを見せる。リネアからも同様の不安を感知した。
彼女たちの秘密を暴いた後、ナイラの質問を無視して鏡の方へ向き直った。
鏡に映る見知らぬ姿を再び観察する。以前の俺とは完全に別人だ。一つずつ詳細を分析してみよう。
まず顔。リネア好みのマッチョな輪郭とナイラ流の女性的な曲線が見事に融合し、中性的で魅惑的な容貌となっている。肩まで届く髪は——もちろんナイラの発案だ。そしてリネアのお気に入り吸血鬼アニメキャラを彷彿とさせる真紅の鋭い瞳と銀髪の髪。
身長は5cm伸び、177cmの体型はスリムながら筋肉質。腹筋のシックスパックや逞しい腕は、アスリート体型を好むリネアの趣味が反映されている。
だが最も驚いたのは:彼女たちの心の中で、俺のイメージが二人を虜にする磁力的なオーラを放っていることだ。分析を終え、苦笑いを浮かべながら振り返った。
「へえ~、そういう目で見てたんだ」わざとらしく指摘しつつ彼女たちの反応を観察する。リネアはまだしも、女性しか興味ないと公言してたナイラまでもが...
二人の頬が同時に熟れたトマトのように真っ赤になった。
「これ...これは単なる遺伝子の副作用に過ぎないわ!」リネアが照れ隠しに顔を背けながら反論した。
「私...世界中の女の子に謝らないと。さっきはつい...」ナイラは手で顔を覆い、苦悶の声を漏らした。
「いい、これ以上はやめろ。で、エアドロップはいつなんだ?」俺は話題を切り替えた。
ナイラが昨日約束していた通り、上層部から今日中に書類と装備が届くはずだった。
「太陽位置から計算すると残り15分。大気擾乱の分析によれば、航空機はまだ70km先」落ち着きを取り戻したリネアが仮想ホログラム画面を瞬きながら答えた。「順調なら16分後に前庭に着陸するわ」
我々は広場で待機した。正確に10分後、パラシュートで降下する発光コンテナが——リネアの予測通りに到着した。
生でエアドロップを見るのは初めてだ。興奮しながらコンテナを回収し、セキュリティコードを解除すると、小さな箱が四つ入っていた。一つは書類、残り三つは衣類用だ。
書類箱を開けると、中身はミニプリンターのような機械。「IDカードと銀行カードはどこ?」混乱しながら問うと、
『Gamma II 携帯ID作成機』と書かれたマニュアルが目に入った。ざっと読むと、各種公式書類を偽造できる機能のようだ。自撮り写真を登録しデータを入力すれば、政府データベースに登録された偽IDを発行。銀行カードは口座番号を入力するだけで本物と交換し、銀行ネットワークを改竄できるらしい。
「最新技術ね。セキュリティハッキングより実用的だわ」リネアが感嘆した。ナイラは満足げに頷く——伝説扱いされていたGamma IIが実際に送られてきたことに驚いている様子だった。
残り三つの箱には無銘の戦闘服と暗号化携帯が入っている。ラベルには仕様が記載されていた:耐放射線、熱感知回避、防弾仕様(軍用レベル)、適応型カムフラージュシステム、GPS、IFF識別装置、そして...おふざけ機能。
我々はきょとんと顔を見合わせた。戦闘服の襟裏には小さなメモが貼られていた:『忘れられない体験をあなたに。特別仕様・超柔軟素材』- 愛を込めて Miss M
「Miss Mらしい下品な宣伝文句」ナイラが呆れながら首を振った。リネアは赤面して目を泳がせている。
箱の底には『Gamma IIで身分データを登録してください』と書かれた指示書。早速ID作成機をセットアップする。
「ハジメ、写真撮ってくれる?」ナイラが髪を整えながら頼んだ。
内蔵カメラのシャッターボタンを押すと、フラッシュが光った。
パシャッ!
二人の撮影が終わり、今度は俺の番だ。
「身分データ入力完了。名前と生年月日を入力してください」
デジタルフォームに記入すると、機械が音声通知した。「名前:彼方ハジメ。生年月日:xoxoxxx。性別:女性。確定しますか?」
「バカめ! なんで自動で女性になんだ! 機械が故障してる!」額を叩きながら抗議する俺だった。
ナイラが悪戯っぽく笑った。「良かったわ。タイで手術するなら、IDの性別変更不要だったのに」彼女の指がハサミの形をチラつかせる。
「妄想はよせ! 俺は『弟』を裏切ったりしない!」俺は反射的に股間を両手で覆った。
「あなたたちっ…静かにしなさいよ!」リネアが革靴を鳴らしながら怒鳴った。頬は熟れた林檎のように真っ赤だ。
「はいはい…手動で直すよ」性別設定を『男性』に再設定する。
カチカチッ!
「IDカード発行完了です。お取りください」
プラスチックカードを掴む。「名前:彼方ハジメ。性別:男性」。ほっと一息。とはいえ、カード写真の儚げな中性的な顔は相変わらずだ。
ナイラとリネアは偽ID作成に熱中している。リネアは『アリス・エインネヴァ』——古典文学の登場人物のような堅苦しい名前を選択。ナイラは『アイリス・グレイス』と上流階級のお嬢様らしい名前に決定した。
装備をまとめ終え、奇妙な戦闘服を抱えて部屋に向かう。シカが忠犬のような眼差しで待っていた。
「ハジメ様、着替えのお手伝い?それとも…シカ、少し離れてますか?」
「結構。だが…ここにいろ」
シカが背を向けると、体に巻いていた虎の毛皮を解いた。ハイテク戦闘服は肌に密着。——いや、これは密着しすぎている。股間の膨らみが輪郭くっきりで、『弟』の位置を数度調整する羽目に。
ああ…クソっ!伸縮性素材だなんて!
肩まで届く銀髪も厄介だ。動くたびに視界を遮る。
ドア越しに聞こえるリネアとナイラの着替え音で、「弟くん」が再び反乱を起こす。全身の集中力で鎮圧にかかった。
「ハジメ様…振り返っても?」
「待て!」急いで虎の毛皮で下半身を覆う。「よし」
シカが俺を見つめて息を飲んだ。「お方…とてもお凛々しい」彼女の幼い頬が桜色に染まる。
「へっ…別に…?」靴先で床をゴシゴシ擦る。純粋な褒め言葉に耳が熱くなる。
「ねえ、シカ。髪整えられる?」プラチナ色の乱れた前髪を撫でながら訊ねる。
「少しなら…」
「昔のように短くしてくれ」
「分かりました!」彼女の瞳がキラリと輝く。小さな手には銀の裁ちバサミが握られていた。
お待たせしました!第15&16章、いかがでしたか?
今回の主人公の大変身(外見的&物理的!)、書いてて「これで読者の皆さんをぶっ飛ばすぞ…!」と一人盛り上がりつつ、シカさん絡みのトラブル描写には冷や汗タラタラでした(笑)。銀髪イケメン化したハジメとパーティのドタバタ劇、ナイラの微妙な反応やリネアのテンパり具合…まさに「神展開」という言葉が似合う回になったかと。
「朝起きたら別人になってた」あるある…じゃなくて超絶レアケースですが、この変化には重大な伏線が絡んでますよ~。次章以降でじわじわ明かされるのでお楽しみに!
ところで今回の変身シーン、友人に「イケメン化した主人公のビジュアル想像するだけでクラクラする」とボヤいたら「お前が一番楽しんでるだろ」とツッコまれたのは内緒です。
【重要なお知らせ】
実はここ数日、大学の課題地獄に巻き込まれておりまして…(教授陣のドS魂が炸裂中)次の更新が少し遅れるかもしれません。でも大丈夫!魔物より怖い締切に食われないよう、必ず17章をお届けしますので、もう少しだけお待ちくださいませ~!
いつも応援本当にありがとうございます! この銀髪ハジメがどんな騒動を巻き起こすか、そしてリネアの「全部見た発言」への反撃にご期待ください。では、レポートの海で溺れかけながらも、また次回更新でお会いしましょう~!
(※現在AM3:33。鏡を見るたび「お前誰やねん」とツッコミ入れてる自分が哀れすぎる。大学の課題も主人公の変身も、全部「成長痛」だと信じて今日も頑張ります…!)




