第1章 列車での出会い
初めまして、るでです!コーヒーと妄想をこよなく愛する新米小説家です。この作品は『もし記憶を共有する三人の関係が暴走したら?』というアイデアから生まれました。ハジメとナイラ、ライネアのドタバタ日常をどうぞお楽しみください!
読者の皆さんの感想が糧です…「作者、展開早すぎ!」でも大歓迎です
よろしくお願いします! ☆彡
よし、ここで俺の平凡な日常が突如変わってしまう直前の話に戻ろう。
手短に説明すると、俺は東京在住の青年——とはいえ生粋の東京人ではない。田舎からの転校生で、親の仕事の都合で東京に移住した。
自慢するつもりはないが、顔はまあまあハンサムで学業成績も平均以上。礼儀正しく地味な服装を心がけている。もちろん今まで彼女はいない。
数日前に大学入試を終えたばかりだ。結果はまだ発表されていないが、まあまあ手応えはあった。有名大学にも十分届くラインだと思う。
高校卒業を記念して中国に渡り、列車で単身「ロスオ市」へ向かっている途中だった。
列車が「シュニ市」に到着した時、新婚カップル2組と少女二人が乗り込んできた。彼女たちの顔立ちからして、明らかに中国人ではない。
現在、俺は車両右側の窓際席に座っている。一人の少女は向かいの席、もう一人は俺の左隣の空席に座り込んだ。
もちろん、彼女たちが俺に興味があるわけじゃない。単に座席番号が近いだけだろう。
どうやら二人の少女も互いに知り合いではなさそうだ。乗車してから一言も会話を交わしていない。
向かいの少女は冷たい顔立ちながら、磁器の人形のような完璧な造形美を持っている。透き通るような白い肌に、ブロンドの髪をさらけ出し、アニメでよく見るゴシック風の黒いドレスを着ている。
アニメ好きの俺にとってこの服装は珍しくないが、実際にそれを着ている人を見るのはやはり目を引く。コスプレなのかと思ったが、特に小物類は見当たらない。
一方、左隣の少女は強い女性的なオーラを放っている。一瞥しただけで人を恍惚とさせる美貌に加え、落ち着きと優雅さを兼ね備えた気質。絹のように滑らかな白髪が、思わず話しかけたくなる魅力を醸し出していた。
彼女のシンプルな白いドレスは、向かいの少女の服装と完璧な対照をなしている。
俺が声をかけようとした瞬間、左隣の少女が突然向かいの少女に話しかけた。まるで俺の存在を無視するように。
「こんにちは、私はナイラです。ご挨拶してもいいですか?」
「興味ありません」
向かいの少女は冷たく窓外を見つめたまま、誘いを無視する。
ナイラは少し眉をひそめると、礼儀正しく俺の方へ振り向いた。
「こんにちは、私はナイラです。ご挨拶してもいいですか?」
「あ、はい。俺はハジメです。よろしく」こんな美人を前に、声は震え頬が赤らむのを感じた。
「ハギメ?」
彼女の言語能力は悪くないが、発音が少しズレている。中国語と日本語が似ているからか、詳細はわからない。
「少し違うね。ハ・ジ・メ」と音節を区切って説明する。
「ああ、ハジメ」修正後、彼女は正確に発音できた。
「言語って難しいですね」ナイラは小首を傾けながら微笑む。
「英語の方がずっと複雑だと思うけど」
「глупый человек(馬鹿者)」
向かいの少女が突然外国語——中国語でも日本語でも英語でもない言葉を吐いた。
複数言語をかじっている俺にも、彼女の発言は理解できなかった。イントネーションからロシア語だろうか。だが意味は全く掴めない。
「あの子の言葉、わかった?」ナイラに耳打ちする。
「私も不明です」
互いに首を振り合ううち、車内の空気が急に張り詰めた。向かいの少女の瞳からは、イラ立ちと焦燥の混じった負の感情が滲み出ている。
「ふん!」少女は再び窓外へ視線を戻し、会話を遮断した。
ナイラと俺はきょとんとしたまま顔を見合わせた。
沈黙が支配する車内。向かいの少女は石像のように黙したまま、俺とナイラは気まずさを紛らわすように雑談を続けるが、すぐに話題が尽きてしまう。結局二人とも座席に身を預け、線路のリズムに身を任せることになった。
夕闇が迫り始めた頃、列車がタングル峠に差し掛かる。
『ご案内します。まもなくタングル峠に到達します。高山病が心配な方は乗務員までお申し出ください』車内放送が響く。
「タングル峠か…」母から聞かされた、酸素濃度の低さで乗客がパニックになる危険地帯の話を思い出す。
幸い大きな混乱もなく通過したが、酸素ボンベを使う乗客や、手すりに必死に縋り付く人影がちらほら見えた。
『タングル峠を無事通過しました。今後は高原に入ります。急な動作は高山病の原因となりますのでご注意ください』
「はぁ…やっと越えたわ」ナイラが安堵の息を吐く。
「これからが本番だね」
「少し落ち着いた気がする」遠くに連なる山脈を見やりながら答える俺。その時──
水平線に浮かぶ黒い点が視界を掠める。瞳孔を凝らすうち、突然の悪寒が背筋を駆け上がった。
点が急速に拡大する。反射的に鞄から双眼鏡を引っ張り出す。
何だあれは…?
鼓動が一瞬止まる。その形状はFPSゲームで数百時間向き合ったあの兵器に酷似している。
まさか…ロケット弾!?
冷や汗が首筋を伝う。表情の変化に気付いたナイラが双眼鏡を奪い取る。
「伏せろ!RPGだ!!」
その叫びと同時に、爆発音が車両を引き裂いた。
世界がぐにゃりと歪む。線路から放り出された車両ごと、俺の体は橋梁下の川へ投げ出される。激しい衝撃で意識が飛んだ。
気が付くと、じめじめした洞窟の闇の中だった。近くで聞こえる水音から、川の流れに運ばれて来たらしい。
全身が軋む。骨折はないようだが、打撲の痛みがじんわりと襲う。
「あの攻撃…いったい? 他の乗客は?」疑問が頭を駆け巡る。不安が胃袋を締め付ける。
「チッ!中国軍のミサイルなわけない…システムエラーだって? そんな致命的ミス許されるはずがない!」
脳裏を駆け巡る超大国や秘密結社の名前に頭が熱くなるが、全て払い除ける。民間人を攻撃する意味など——利益もなく、狂気の沙汰でしかない。
タングル峠は戦略的要衝ですらない。「乗客に重要人物が?」
推理がまとまらぬまま、突然の激痛が頭蓋を貫く。意識が再び遠のく。
次に目覚めた光景は悪夢そのものだった。ピラミッド型の石の祭壇に鎖で縛られ、ナイラとゴシック少女も同様に三角形に拘束されている。
黒白のローブをまとった集団が無言で取り囲む。不気味な紋章が刻まれた儀式用の短刀が鈍く光る。
「カルト…!?」喉が軋む。歴史書で読んだ古代祭祀の再現か。
頭蓋の中で悲鳴が渦巻く。恐怖で声帯が凍り付いた。全身を冷汗が濡らすが、舌が回らない。
後悔が脳を噛む:なぜ一人でチベットに来たのか?
映画のホラーシーンさながら、俺たちは無力な人形だ。ナイラたちの傷からは微光が漏れ、闇に浮かび上がる。
ナイラの瞳が訴える:<どうすれば?>
俺の眼差しはもっと絶望的だった:<もう終わりだ>
儀式は意図的に引き延ばされる。彼らは生ける彫像のように立ち、短刀を握りしめたまま時を刻む。一時間が瞬きのように過ぎる。
走馬灯が駆け抜ける:父の厳しい顔、双子の妹の笑い声、突然懐かしくなる平凡な家族団らん。
「死ぬまで童貞か…」
「ナイラ」枯れた声が静寂を破る。「彼女いる?」
「いない」彼女の目は依然カルト集団を監視している。
「じゃあ…付き合ってくれないか?」
「ええ」
苦笑いが緊張を解く。せめてもの「彼女あり」ステータス。だが瞼が熱くなる:クソ!こんなの不公平だ!
満月の光が突然祭壇を照らす。カルト集団が一斉に動き出す。
瞼を瞠り続ける——卑怯者のまま死にたくない。しかし予想外の展開が:
前列が嗄れた呪文を吐き出すと、自らの喉に短刀を突き立てる。次列が続いて心臓を貫く。呼吸する間に、血溜まりと三人だけが残された。
血が蠢きだす。祭壇の彫刻を伝い、地獄の根のように俺たちの体を這う。皮膚にタトゥー様の紋様が浮かび、灼熱感と共に千本の針が一度に突き刺さるような痛みが神経を焼いた。
全ての神経が引き裂かれるような感覚。千本の炎の棘が皮膚を食い荒らし、繰り返し肉体を焙りつける。
鎖を噛みしめながら俺は狂ったように叫び続ける。ナイラたちも最早優雅さなど微塵もなく、洞窟にこだまする枯れた悲鳴を絞り出していた。
この苦痛は永遠に続くのか。そう思った瞬間、第二波が襲う——前回を凌ぐ残虐さで。
凍りつく恐怖、偽りの陶酔、滾る憎悪——異質な記憶の断片と混ざり合い、精神を侵食する。最早これは物理的な痛みではない。
精神的な苦痛は意志力では克服できない。失神すら許されず、錆びた針で脳髄を抉られる感覚。頭蓋骨が砕け、溶けた金属が神経を這うような。
叫び声は喉で潰える。鎖にぶら下がる肉体は人形のようだ。視界の端で、ナイラたちも同じく崩壊していく。
この地獄がどれほど続いたか。1時間?10時間?人間の耐久限界を超えている。鎖がなければ、とっくに自害していただろう。
狂気が脳を舐めるが、謎の力で意識は強制的に維持される——苦しみ抜かせ、壊れかけても安らぎを与えない。
突然、全ての痛みが真空に吸い込まれるように消えた。安堵の息もつかぬうち、三人同時に闇が襲う。
第一章、いかがでしたか?読んでくれてありがとうございます!
三人の中では誰が好きですか?無口なナイラ?暴力的なライネア?それともツッコミ担当のハジメ?コメントで教えてくださいね~♪
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