卵焼き弁当
お気に入りの手料理「卵焼き」。
妻のアレンジが光るこの一品。
しかし、今日はいつもと違う妻の味…。
私は妻の卵焼きが好きだ。
うちの卵焼きは某調味料を用いたしょっぱいタイプだ。
そこに時折、海苔を巻いていたり、ほうれん草やネギなど野菜が巻いていたり…。
とってもレパートリーが多いのだ。
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今日の弁当にも卵焼き。妻の卵焼きは世界一おいしい。
今日の卵焼きはカニカマを巻いていた。
カニカマの赤と卵焼きの黄色。そこにブロッコリーが弁当箱の端っこで彩りを与えてくれている。
見て楽しい、食べておいしいお弁当を作れる妻は天才かもしれない。
しかし、この日の卵焼きはいつもと違った。
箸で持った時の重さ、食べごたえ、味までも…。
調理ミスだとしたら、珍しい。
私は考えた。
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終業後、帰宅する前に私は寄り道をした。
スーパーで、ある程度の食材を仕入れ、最後に薬局へ寄った。
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帰宅すると家の電気は消えていた。
妻は寝室で寝ているらしい。
私は家の中を見渡し、情報を集める。
夕ご飯の用意がまだだったようなので、私はキッチンに向かった。
ひとり分の鍋を2つ用意し、スープを作る。
野菜を切り、キノコ・豆腐を入れ、最後に生姜を効かせたつみれを落とす。
鍋は私が結婚前から作っていた数少ない得意料理だ。
私はその日、久しぶりの自作料理を食し、入浴等を手早く済ませ、早々と就寝した。
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翌朝、妻はいつものようにキッチンにいた。
食洗器には昨日の鍋が2つ。
いつものように妻の作った弁当を持ち、会社へ行く。
その日の弁当にも卵焼きが入っていた。
昼、世界一の卵焼きに私は舌鼓を打った。
不器用な主人公の精一杯の思いやり。
聞けない弱さと聞かない優しさ。