しゃけ弁当
続けてみます。
「今日は焼き鮭弁当が食べたい。」
たまにこんな日がある。
毎日妻はお弁当の中身を変えてくれる。
全く持ってメニューに不満はないのだが、たまに「〇〇の口」になってしまうことがある。
本来であれば、何日も前からメニューリクエストのため、妻へのゴマすりをかかさない私だが、
如何せん急に来る欲に成す術はない。
この欲を満たさない選択は、仕事のため、ひいては家族のためにもあってはならない。()
日頃の自分の行いを信じて、妻と交渉をする。
「焼き鮭の弁当が食べたい。」
少し申し訳なさを演出しながら、妻へ伝える。
ひと時の間に
妻の言動を、私はなんとなく想像をする。
①材料問題に言及。②その日の気分からのリアクション。③日頃の弁当への言及。etc…。
我ながらとてもマイナス思考だとは思う。
ーーー今日の妻はどんな気分だろうか。ーーー
妻は、私に笑顔で、作業を止め、言った。
「今言わないで」
その日のお弁当は照り焼き弁当。とてもおいしい昨日の夕ご飯だった。
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帰宅すると、妻は晩御飯の支度をしていた。
「今日もおいしかったよ。」
若干の気まずさを伴いながらお礼を言った。
リアクションはなかった。
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翌日。朝目を覚まし、リビングへ行き、朝食を食べる。
新聞は読むが、眠気で頭に入ってこない。
寝ぼけた私のところにお弁当箱が置かれた。
「ありがとう。」
いつものように礼を伝え、支度し、出社する。
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眠気は覚めず、気づけばお昼になっていた。
うつらうつらお弁当箱を開ける。
中身は焼き鮭弁当だった。
ふっくらと焼かれた焼き鮭が白米の上に鎮座。
骨は綺麗に抜かれていた。
こんな最高な妻が他にいるだろうか。
その日、午後の仕事は手につかなかった。
妻をビジュアル化したい。