聖火の強さ
「今……なんて言った?」
誠也は呆然としながら、聖火に問う。
「私も悪魔討伐に行くって言ったの」
「なっ!!」
誠也は思わず椅子から立ち上がる。
「何を言ってんだ、聖ちゃん!死ぬつもりか!!」
レストランにいる他の客は誠也に視線を向けるが、彼は無視した。
今、それより誠也が最も気にしなければならないのは聖火のほうだ。
「悪魔は上位モンスター。しかもモンスターの大群を従わせているんだぞ!?」
「もう決めたの。私も行くって。それにすでに決まっている事なの」
「決まって……どういう」
「実は悪魔討伐作戦で色々なハンターや守護騎士が集められているの。その作戦に私も参加したの」
「はぁ!?悪魔討伐は俺だけじゃないのか?」
まさか自分以外にも悪魔討伐する者がいるとは、誠也は思わなかった。
だがそれより誠也が一番驚いたのは、悪魔討伐の作戦に聖火が参加した事だ。
「なんで、なんでハンターでもなく、今は守護騎士でもない聖ちゃんが……どうして」
「……実はハンターの資格を持っているの」
「!?」
「ランクはC。LV23。悪魔討伐作戦に参加する条件は満たしているよ」
「いつの間に……」
誠也は頭痛を覚え、頭を抱える。
予想外だった。
まさか幼馴染が悪魔討伐に参加するとは思わなかった。
「今すぐ……その作戦から抜けろ」
「嫌だ」
「聖ちゃん!」
なんとか説得しようとする誠也は聖火の目を見て、黙ってしまう。
黙ることしかできなかった。
聖火の赤い瞳には、強い覚悟が宿っている。
大切な人を守りたい、大切な人と戦いたい。
そんな想いが誠也に伝わってきた。
誠也は椅子に座り、ハァとため息を吐く。
「何を言っても……無駄なんだな」
「ごめんね。私も譲れないものがあるの。まぁ……それでも行かせたくないって言うなら」
「私と勝負しよう」
<><><><>
水族館を出た後、誠也と聖火は巨大体育館にやってきていた。
そこではスポーツの練習する者もいれば、武器や魔法などを使用して模擬戦をするハンターもいる。
「準備はいいか、聖ちゃん?」
「いつでもいいよ、誠くん」
ハンター専用の大きなリングで、武器を構える誠也と聖火。
彼らが使う武器は体育館で借りたもの。
誠也は盾と斧。
聖火は槍。
(聖ちゃんを悪魔討伐に行かせないためにも、この勝負……絶対に勝たないと)
愛する恋人を死ぬかもしれない戦場には行かせない。
そのために誠也は本気を出す。
今、彼らがいるリングではどんなに相手が傷つけても、死ぬことはない。
そして二人が装備している武器には殺傷能力はない。
故に彼は本気を出せる。
「〈盾強化〉〈斧強化〉〈武装超強化〉〈超加速〉」
スキルの力で武器と己の速さを強化した誠也は床を強く蹴り、弾丸の如き速さで聖火は突撃する。
「〈魔気〉」
斧に黒いオーラを纏わせ、彼は力強く振るう。
実力者でも回避不可能の一撃。
それに対して聖火は、
「甘いよ、誠くん」
槍で受け流した。
目を大きく見開く誠也。
そんな彼に向かって聖火は、槍の刺突を放つ。
咄嗟に盾で刺突を防ぐ。
しかし、それで終わるじゃなかった。
「行くよ」
次の瞬間、怒涛の連続刺突が誠也を襲う。
一撃一撃が重く、そして速い。
誠也は斧と盾で全ての攻撃を防ぐ。
だが少しずつ彼は後ろに下がっていく。
(なんだこれ!?LV23の動きじゃないぞ!)
このままじゃあ負ける。
そう思った誠也は強力なスキルを使う。
「〈狂化〉!」
次の瞬間、誠也の身体から赤黒い炎が発生、彼の目が赤く光り出す。
己の肉体を超強化した誠也は、人間を超えた速さで斧と盾を振るい、連撃を放つ。
回避も防御も不可能の連撃を聖火は、
「全て見えてるよ」
槍で全て受け流した。
斧の斬撃も、盾の打撃も、全て無効化される。
その事に誠也は信じられなかった。
(バカな!LVも、スキルの数も、戦闘経験も俺の方が上なんだぞ!?なのに……なんで!)
驚愕している誠也に、聖火は静かな声で囁く。
「終わりだよ」」
聖火は槍に炎を纏わせ、鋭い刺突を放つ。
超高速に放たれた刺突は、誠也の斧を弾き飛ばす。
そして炎を纏った槍を、誠也の首元に向ける。
「私の勝ちだよ、誠くん」
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