表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/31

水族館デート

 翌日。

 誠也は聖火と共に水族館にやってきていた。

 水槽の中を泳ぐクラゲを見て、聖火は楽しそうに笑う。


「見てみて、誠くん!このクラゲ、プリンみたい」

「それはプリリンクラゲだった気がする。プリンみたいな味がするって、聞いたことがある」

「へぇ~食べられるんだ」


 興味深そうにクラゲを見つめる聖火。

 いつもならワンピースのような可愛らしい服装なのだが、今日はボーイッシュコーデ。

 Tシャツにワイドパンツ、そしてスニーカー。

 別の意味で彼女の魅力を引き出していた。


「どうしたの、誠くん?私のことを見つめて?」

「あ、いや……いつもと服装が違くて、その……見惚れてた」

「フフフ。ありがとう。たまにはこういうのもいいかなって思ったの」

「そうなのか」

「ねぇねぇ次……あっち行こう」


 聖火は誠也の腕と組み、歩き出す。

 彼女の柔らかな胸の感触が腕に伝わり、彼は顔を赤く染める。


「せ、聖ちゃん。胸が当たってる」

「誠くんをドキドキさせたくて、当ててるの。いや?」

「い、いやじゃない」

「ならよかった」


 いたずらに成功した子供みたいに笑う聖火を見て、誠也は素直に可愛いと思った。


<><><><>


「わぁ……くすぐったい」


 誠也たちがやってきたのは、ドクターフィッシュという小さな魚がたくさん泳いでいる水槽がある場所。

 その水槽に手を入れることができ、聖火は自分の手を入れていた。

 たくさんのドクターフィッシュが聖火の手に集まって、パクパクと口を動かしている。

 

「誠くんもやってみなよ。くすぐったくて、気持ちいよ」

「そうだな。面白そうだし」


 誠也は水槽の中に両手を突っ込んだ。

 すると大量のドクターフィッシュが彼の両手に集まった。

 突然の事に彼は目を丸くする。


「うわっ!な、なんでこんなに集まって」

「ドクターフィッシュってゴミを食べてくれる魚だから、誠くんの手がきっと汚れてるんだよ」

「嘘でしょ?地味にショックなんだけど」


<><><><>


 次にやって来たのは、イルカショー。

 可愛らしいイルカが何度もジャンプする。

 それを一番前の席で誠也と聖火は見ていた。


「わぁ~すごい!」

「なぁ聖ちゃん。なんでわざわざ一番前の席でイルカショーで見るんだ?濡れるぞ」

「大丈夫。ここのイルカショーは最前席には見えない魔法の壁があって、水飛沫が来ないようにしてくれて―――」


 聖火が説明していたその時。

 大量の水が聖火と誠也を濡らした。

 慌てた様子のスタッフが、誠也たちのところにやってくる。


「すみません!どうやらそこだけ魔法の壁が発動していなくて」


 まさかの不運に誠也はハァとため息を吐く。


「すっごい濡れたな、聖ちゃん」

「……」

「聖ちゃん?」


 返事がない聖火に誠也はチラッと視線を向ける。

 聖火は俯きながら、身体をプルプルと震わせていた。

 そして彼女は、


「プッ!アハハハハハハハハ!」


 笑い出した。


「こんなこともあるんだね。いやー参った参った。アハハハハハ!」


 明るく、そして楽しそうに笑う彼女を見て、誠也も釣られて笑った。


<><><><>


 イルカショーを終え、スタッフに服を乾かしてもらった後、誠也と聖火は水族間の中にあるレストランにやってきていた。


「見て見て誠くん!このカレー青いよ!」

「そうだな……すっごい食欲が湧かない」


 二人が注文したのは、青いカレーライス。

 色が青いせいで、誠也は美味しそうに思えなかった。


「じゃあ、食べようか。いただいます」

「い……いただきます」


 誠也と聖火はスプーンでカレーライスを掬い、パクリと口に入れる。


「うん。普通のカレーライスだね」

「そうだな……」

「どうしたの、誠くん?黙り込んで?」

「いや……ただ、幸せだなと思ってな」


 モンスターの大群によって全てを失った過去(未来)の自分。

 そのことを思い出しながら、誠也は口を動かす。


「俺は……あの時……タイムリープ前は生きるのが辛かった。でも今は生きてるのが幸せだ。聖ちゃんを守れてよかった。聖ちゃんと付き合えて死ぬほど嬉しい」


 死んで過去に戻り、大切なものを守るために強くなり、そして全てを守った誠也。

 彼の中にあるのはただ一つ。

 幸せだった。


「この幸せを……守り続けたい。聖ちゃんを守り続けたい」

「……誠くん」

「ご、ごめん……なんか恥ずかしいことを言って」


 照れて頬を指でポリポリと掻いていた誠也。

 そんな彼の唇に、聖火は自分の唇を重ねた。

 突然の事に誠也は目を見開く。


「えへへ……キスがカレー味って不思議」


 恥ずかしそうに微笑む聖火。

 彼女の頬が赤く染まっている。


「ちょ、聖ちゃん。なにして」

「いや~……誠くんの話を聞いていたら我慢できなかった。嫌だった?」

「いや…その……すっごい嬉しいです」

「よかった。……誠くん。私も幸せだよ。大好きな人と恋人になれたんだから」

「聖ちゃん……」

「でもね……だからこそ嫌なの。誠くんだけが悪魔討伐しに行くの?」

「聖ちゃん?」


 誠也がなにを言ってるんだと尋ねようとした時、聖火は真剣な表情を浮かべる。


「誠くん……私も悪魔討伐に行くから」


 その言葉を聞いて、誠也は一瞬だけ思考が止まった。

 読んでくれてありがとうございます。 

 気に入ったらブックマークとポイントをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ