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新たな依頼

「はぁ!?悪魔を討伐しろ!?」


 病院の病室で誠也の声が響き渡った。

 ハンター協会会長の大和林葉は頷く。


「はい。二週間後、ハワイを支配している強力なモンスター……悪魔を討伐してほしいのです」

「ちょっと待ってくださいよ!悪魔って竜種と同じぐらい厄介な化物じゃないですか!」


 悪魔。

 誠也が倒した竜種と同じ上位のモンスター。

 ただ竜種と違い、別の意味で強い。


「悪魔は知能が高くて、強力な魔法を使います。そんな奴を倒せって」

「竜種を倒したあなたなら不可能ではないでしょう」

「そ……それは」


 ハンター協会会長の言う通り、今の誠也なら不可能ではない。

 強力な特殊武器―――神器。

 そして神のスキル―――ユニークスキル。

 この二つを使えば、悪魔に勝てるかもしれない。

 加えて、


「今のあなたのLVは64。LVの上限値を超えているあなたしかできません」

「うっ……」


 そう。

 今の誠也はLVが64になっているのだ。

 竜種を討伐したせいか、それとも限界を超えた戦いをしたからか。

 原因は不明だが、この世界で最強の人間は―――誠也だ。


「で、でも今の俺は入院していますし」

「明日、退院でしたよね?」

「そ、それは……そうですが」

「……あなたがこの依頼を受けたくないのは分かりました。ですが、そういうわけにはいかないのです」

「どういうことです?」

「実は……政府からあなたを悪魔討伐に向かわせろと言われているんです」


 誠也は目を細める。


「……なぜ?」

「上位モンスターである竜種をたった一人で倒したあなたを高く評価しており、他の上位モンスターを討伐できると政府は考えているみたいです」

「なるほど」


 大切な人を守るために戦った結果、他の上位モンスターを討伐することになった。

 誠也は頭を抱えたくなる。


(まぁ……上位モンスターを討伐すれば、支配された小さな島や国を取り戻しやすくなるのは間違いないしな)


 いくつもの国を支配しているモンスターたち。

 そんなモンスターたちを支配しているのが、上位モンスター。

 上位モンスターは他のモンスターと違い、統率する能力を持つ。

 誠也の故郷を襲ったのも、モンスターの大群を引き連れた竜種だ。

 だが逆に言えば、上位モンスターさえ倒せばモンスターは混乱し、倒しやすくなる。


(だけどやりたくないんだよな……でも林葉会長は諦めてくれなさそうだしな。なんとか依頼を断る方法……あ、そうだ)


 誠也はあることを思いつく。


「いいですよ。悪魔討伐を受けましょう」

「本当ですか。よかったです」

「ただし条件があります」

「条件?」

「俺が倒した竜種。そいつの素材を全てください」

「!!」


 林葉は目を大きく見開く。

 だが彼女の反応は当然だ。

 上位モンスターの素材は何億もするぐらい価値がある。

 爪や牙などは最高の武器となり、内臓や血は最高の薬となるのだ。

 それを全て寄越せと言われたら、普通に困る。


「因みに竜種の素材はあくまで依頼を受ける条件。悪魔討伐に成功したら……その悪魔の素材は全て俺が貰う」

「……」


 顎に手を当てて黙り込む林葉。

 そんな彼女を見て、誠也は悪魔の如き笑みを浮かべた。


(勝った。これで俺は悪魔討伐に行かなくて済む)


 誠也が勝利を確信していた時。


「わかりました。ではそのように」

「え?」


 誠也は目を丸くした。

 まさかの予想外の言葉に、彼は驚きを隠せない。


「え?ちょ、ちょっと待ってください。竜種と悪魔の素材を全て寄越せって言ってるんですよ?」

「だから……それで構いませんと言っているのです」

「竜種と悪魔の素材を全部で合わせたら、最低でも十億はするんですよ!?それなのになん―――」

「国一つ奪還できるなら安いものです」


 林葉の圧が籠った言葉を聞いて、誠也は黙り込む。

 彼女の瞳には、強い覚悟の光が宿っていた。


「我々人類は……ずっと望んでいたんです。モンスターを全て排除し、全ての国を取り戻すのを。そのためなら一億だろうが十億だろうが払いますよ」


 林葉から感じる気迫に、誠也は息を呑む。

 彼は甘く見ていた。彼女の覚悟と願いを。

 誠也にとって守りたいのは幼馴染と家族だ。

 それさえ守れればそれでいいと思っている。

 だが林葉は違う。

 彼女は本気でモンスターを全て排除し、全ての国を取り戻そうとしている。


「では……失礼します」


 林葉は一度頭を下げた後、病室から去っていった。

 残された誠也は大きなため息を吐く。


「あ~、クソ……マジか。悪魔討伐」

「……誠くん」


 聖火は自分の手を誠也の手に重ねた。

 彼女は眉を八の字にして、心配そうに彼を見つめる。


「そんな心配そうな顔をしないでよ、聖ちゃん。俺は大丈夫」

「でも……」

「俺は絶対に好きな女を置いて死んだりはしないから」

「……約束だよ」

「約束だ」

「もし約束を破ったら……」


 聖火は瞳を真っ暗に染めながら、誠也の耳で囁く。


「私も後を追うから」


 読んでくれてありがとうございます。

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