第983話 瘴気のお勉強⑧お試しお茶会<前編>
ふわぁあああぁああ。
あくびが出る。
もふさまも大きくあくびをした。
お試しのお茶会は思わぬところで大所帯なものになってしまったので、ゲームのカードやお菓子を追加で作っていたら寝るのが遅くなってしまった。付き合ってくれたもふさまも眠そうだ。
とりあえず、みんなに行き渡る数は用意できた。
ライラとケイトがクラスの子にお茶会の話をしたみたいなんだよね。
そしたら、貴族のお茶会ってどんなの?
え? リディアのおうちで教えてくれるの? お茶会の作法を??
と、みんなものすごーく興味があるようなので、ふたりも16人も同じことと、みんなお試しのお茶会に誘うことになった。
わたしは休息日の前日にいつものように王都の家に帰ってきて、お茶会の準備。
当日は、エリー、ユリアさま、アイボリーさま、マーヤさまが協力してくれることになって、D組の女子たちを馬車でシュタイン家まで送ってくれることになっている。
わたしは一応ホストなので、お出かけ着に着替えた。
みんなには制服で来てもらうことになっている。
「お嬢さま、おはようございます。朝食はどうなさいますか?」
「お茶会でお菓子を食べるから、朝はいらないわ。それより、いっぱい友達を呼んじゃって、仕事を増やしてごめんね」
「お嬢さま、私は嬉しいですよ」
「嬉しい?」
……ここにもワーカーホーリックが?
「領地の外れの家は特別ですから家に人を呼べなかった。令嬢といえばお茶会です。お友達を呼んで会話を楽しむ。お嬢さまのそんな普通の令嬢のようなところを見られる日がくるなんて……。アルノルトは感動しております」
本当に目が潤んでいる。
確かに普通の令嬢がしてくるようなこと、してこなかったからなー。
「〝フォロー〟は任せてください」
アルノルトまでテンジモノ語を使って、胸を軽く叩いた。
「それでは、よろしくね。みんなとても素敵なお友達なの。先生としてきてくれるのが貴族のエリー・ヘイウッド嬢、ユリア・ハミルトン嬢、アイボリー・フリートさま、マーヤ・ハバーさまよ」
「心得ました、お嬢さま」
アルノルトに促されて客間に入ると、丸いテーブルに5脚の椅子が1セットで4つ配置されていた。そして上座にあたるところに長テーブルに椅子が2脚。
窓際にもいくつかずつ椅子が置かれている。
「リー、おはよう。用意は整ったみたいだね」
「おはよう、アラ兄。今日はうるさくなるのに、気持ちよく許してくれてありがとう」
アラ兄もロビ兄も騒がしくなるのは目に見えているのに、気持ちよく許可してくれた。
「部屋にいるから、手伝えることがあったら言ってね」
「ありがとう。ロビ兄は?」
「あれ、もふもふたちを連れてダンジョン行ったよ。エリンとノエルも連れていくって言ってたよ」
「え、そうなの?」
「わたしが起きたときはみんな寝てたのに」
支度をしている間に、ロビ兄とダンジョンに行ったみたいだ。
「もふさま、ごめんね、こっちに付き合ってもらって」
『我はリディアと共にいる』
ふふ、心強いな。
お菓子を運んでもらう順番を伝えているうちに時間になったようで、アルノルトがピクッとする。
「馬車が来たようです」
お出迎えしなくては。今日はホスト役だから、しっかりしないと!
最初にやってきたのはユリアさまの馬車だ。
レニータ、キャシー、ジョセフィン 、ダリアを乗せていた。
ユリアさまは目の覚めるような青いドレス。とてもよくお似合いだ。
みんなは制服。
アルノルトが丁寧に迎えて、みんなが玄関に入ってきた。
みんなにカーテシー。ようこそいらっしゃいました。来てくれてありがとうと感謝を伝える。
わたしは身分の高いユリアさまにまずご挨拶。それから今日引き受けてくれたこと、馬車のこと、諸々のお礼を言った。
そしてみんなに向き合う。一人一人にカーテシーをしていく。
みんなユリアさまから習ったみたい。
ユオブリアではカーテシーをするのは貴族女子だけだ。平民の挨拶は左手を胸に置き一礼。その時、微かに片足を引く。
いいじゃん、いいじゃん、みんな決まっている。
次の馬車が来たので、客間への案内をデルに任せる。執事見習いは今年度で見習いから執事となり、他所に移ることになっている。一緒に暮らしていたおばあさんが去年亡くなり、身寄りはいなくなってしまった。それを機にデルは新天地を広げていく選択をした。もちろんわたしたちは応援する。
今日は人がいるので、急遽来てもらっている。ヘリにもだ。
メイドは一時ペリーがいたけれど、彼女は1年ほど働き蓄えができると、商会の下働きを始めた。商会の仕事が好きで、もう一度トライしたいと思ったようだ。1年の間に家族との関係も正常になっていたので、もう大丈夫だと思う。
最後に土下座でお礼を言われたときはびびったけど、いい顔をしていた。
そしてメイドはまたヘリひとりになってしまったんだよね。
その代わりというか、来年度からピドリナが料理長をまたしてくれることになっている。ダインはフォンタナ一族に預けて修行させるんだって。ダインは執事の道を進むのではと思っていたので、その選択に驚いた。
次にきたのがマーヤさまの馬車。
メラン、ジニー、ウォレス、クラリベルを連れてきてくれた。
4人ともしっかりとした礼。ふふ、バッチリだね。
お次はエリー。
アイデラ 、チェルシー、アンナ、マリンと一緒に。
4人も礼は完璧。
最後はアイボリーさま。
ロレッタとラエリン、今回の主役であるライラとケイトを連れてきてくれた。
4人も完璧に仕込まれている。それも口上つきだ。ちゃんとわたしが声をかけた後からだし、侯爵令嬢のアイボリーさまの手ほどきなら、間違いはない。




