第95話 ファーストコンタクト⑥ハウス
『マスター、微弱な意思が話しかけてきています』
え? タボさん? アナウンスはあっても、タボさんの方から話しかけてくるなんてこと、今までなかったのに。
『リディア、どうした?』
「タボさんが、微弱な意思、話しかけてきてるって」
『繋ぎをとってもらえ。我にも通じるようにしてくれ。何かしないとこの部屋からは出られそうにないからな』
そうだね、ドアないもん。
「タボさん繋いで。あと、もふさまも聞こえるよう、して」
『Yes、マスター。微弱な意思とコネクトを開始します。ピーーーーーーー。あちらの魔力が足りません。マスター、魔力の〝付・与〟の、許可を』
「許可、します」
『魔力、付与。コネクト継続。ピーーーーーーー。探索3の機能が使えるようになりました。変換します。〝翻・訳〟作動』
『音声出力クリア。私はメインハウス・デス。新マスターは名前登録をお願いシマス』
タボさんとはまた違う声だ。
『リディア、名前を言ってみろ』
わたしはじとっと、もふさまを見た。
「この流れ、名前言ったら、マスターなる、気がする」
『わかっているじゃないか』
「ダメ。父さま、相談する。タボさん、この部屋出る方法わかる?」
『メインハウスの意思が微弱すぎるため、情報は導き出せません』
「わたし魔力もっと付与する」
『魔力は十分に付与しましたが、マスターと繋がらないと、本来の力が出しきれないようです』
『ほら、リディア、仕方ないだろう?』
もふさまは面白がっている。
「わたし、名前、リディア」
『新マスター、リディア。音声認証、虹彩認証、静脈認証、クリア。新マスター仕様に調整します』
虹彩や静脈認証って、めちゃくちゃハイテクじゃない?
また部屋が青く光った。思わず目をつむる。目を開けると……部屋はわたしに優しい仕様になっていた。
石造りの冷たい感じのする部屋が、木の温もりを感じさせる木造りになっている。下には絨毯が敷き詰められ、わたしが転んだりしても痛くないように、低い箇所には布のようなもので覆いがされている。そこまで赤ちゃんじゃないけど。本棚は同じだったが、どこからか踏み台が現れ、高い所にある本も取れるよう配慮され、机はわたしが座るのにちょうどいいサイズのものになっていた。
『マスター・リディア、気に入りましたか?』
さっきと違う女性のような声だ。
「さっきと声違う」
『マスター・リディアが小さなお嬢さまでしたので、こちらの声にしてみました。先ほどの方がよろしいようでしたら』
「そのままで、いいです」
『承知いたしました』
「質問、いいですか?」
『はい、なんなりと』
「この部屋はなんなのですか?」
『ここはハウスのメインルームです。前マスターは、ここで私と話したり、魔道具を作っていました』
「前マスターさん、どうした、ですか?」
『1年来なかったら、寿命が尽きたと思え。マスターに相応しい新たな者が来たら、新マスターに従うように言われております』
亡くなったのか。
「わたし、マスター、いいんですか?」
『この部屋に入れるのは魔力が5000以上の者のみです。魔力量もたっぷりですね。魔力を付与していただき、気づきました。この地に〝魔〟を吹き込んでくれたのは、マスター・リディアだったのですね』
『魔を吹き込んだとは?』
『マスター・リディアの記憶より、聖獣・もふさまとお呼びしていいのでしょうか?』
「記憶?」
『はい、マスター。私は浅い記憶を読み取ることができます』
ええっ。なんかそれ、どきどきするんですけど。
『もふさまでいいぞ』
もふさまが許した。
『ありがとうございます。吹き込んだとは、言葉通りの意味でございます。前マスターが訪れなくなってから200年経った頃でしょうか。魔力を消費しないように過ごしておりましたが、それも限界値をこえ、私は眠りにつきました。それがある日、この地に淀みのひとつもない上質な魔力が〝祝印〟されたのでございます。その日から、少しずつ魔力が流れてくるようになりました』
もふさまがわたしをじっと見る。
「なに?」
『祝印したのか?』
「祝印、なに?」
『大地に口移しで魔力を与えたのか?』
は?
「そんなこと……」
ん? 口移しというか……。
「顔から、転んだ、ある」
引っ越してきた当日で、前世を思い出してすぐだった気がする。いきなり転んで……。
「でも、もふさまと会う前。まだ魔力通ってない。わたし、違う」
『いいえ、マスター・リディアの魔力です。間違いなく。マスター・リディアから漏れてくる魔力で少しずつ機能が回復してきました。でもコンタクトを取れるほどではなかった。繋いでくださった〝仮想補佐〟さまにも感謝申し上げます』
『いえ、私はマスターのほんの、お・〝手伝い〟をしているだけで。私のことはタボとお呼びください』
『それでは、タボ、私のことはハウスとお呼びください』
『ハウス、それでは、マザーチップを〝交換〟しませんか?』
『私からお願いをしようと思っていました』
友情!? なに、なんか芽生えてる?
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ
『マスター、これで私たちは離れていても連結が取れるようになりました』
LINE交換みたいな感じ?
嬉しそうなタボさんの弾んだ声だ、初めて聞いた。
「この部屋、来たい時、出たい時、どうすればいい?」
『タボに言うのでも、私に言っていただくのでも。家の中でしたら、末端・壁を触りメインルームと思っていただければ大丈夫です。部屋に帰りたい時は、そうおっしゃってください』
「ってことは、家以外からでも?」
『そこまで離れていなければ、可能です』
それ凄くない? マズいことあったらここに転移できるってことだよね? 逃げ込めるってことだよね?
「わたしだけ?」
『本来ならマスターのみに許すことですが……上質な魔力をいただいているので、可能なこともあると思います。もふさまは魔力が並外れておりますので問題ありません。他はどのような方を?』
「家族」
『家族、ですか?』
『データ、共有』
ハウスさんとタボさんが同時に言った。
『ああ、なるほど。んー、まあ、なんとかしましょう。3日ください』
人っぽいやりとりだ。
「ありがと」
『マスターが私なんぞに礼を!』
ええ?
机の上が花でいっぱいになった。
『マスター・リディア。いつでもいらしてくださいね』
「あ、さっきの、モニター、なに?」
『モニター?』
「映像、流れた」
『映像……ああ、マスターが〝王子いうことわかれば〟とおっしゃっていたので、端末が記憶していた信号を映像化してみました。王子とやらは違っていましたか?』
「あ、ううん。王子、合ってる」
そうか、はからず覗き見しちゃったみたいだけど、あれは実際に話していたことか。
『マスター、母君が部屋をノックしています』
わたしは部屋に戻してとお願いした。
+++++++++++++++
名前:リディア・シュタイン(5) 人族
性別:女
レベル:1
職業:???
HP:55/57
MP:5003/5137
力:13
敏捷性:15
知力:75
精神:77
攻撃:15
防御:15
回避:90
幸運:82
スキル:生活魔法(火A・水A・土A・風A・光S・無SS)
自動地図作成(レベル5)
探索(レベル3)
仮想補佐(タボ・レベル13)
隠蔽(レベル1)
付与(レベル1)
鑑定(レベル2)
翻訳(レベル1)
仮想補佐網・創造(ハウス・レベル53)
ギフト:+
UP
MP +130
自動地図作成 レベルアップ
探索 レベルアップ
仮想補佐 レベルアップ
鑑定 レベルアップ
スキル追加:翻訳
仮想補佐網・創造
+++++++++++++++