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プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
3章 弱さと強さと冬ごもり
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第93話 ファーストコンタクト④コンセプト

 もふさまが先頭でわたしは兄さまと手を繋いで歩く。

 森も枯れ草色になり、収穫物はほとんどない。

 時々、根野菜をみつけ収穫していく。


 ダンジョンで鑑定しまくったからか、レベルがひとつあがった。タボさんのレベルはグイグイ上がっている。そのおかげで何ができるようになったかというと、探索と鑑定をコラボできるようになった。食べられるもの、高価な物があったらマップに表示するようにしている。


「リディア嬢は、畑の世話もしているというし、野菜に詳しいんだね」


 そんなことないと謙遜するのと、すごいでしょうと胸を張るの、どっちが心象が悪いだろう?


「わたし、スゴイの。父さまも、兄さまたちも、みんなスゴイし、かわいいっていう」


 甘やかされてわがまま放題のコンセプトでいこう。わたしは決めた。

 ロビ兄ともふさまが笑いを堪え……きれてない。

 うん、このコンセプトは確実にわたしにもダメージを与えるね。


「へーー、例えば魔法がスゴイとか?」


 わたしは間髪入れずに首を横に振る。


「魔力少ない。兄さまたちみたい、魔法、うまくない。でも、いるだけでスゴイ、かわいい言う」


「そうだよ。魔法がうまくなくても、リーはいるだけでかわいいからいいんだ」


 ロビ兄の手が頭の上に乗る。

 本当にそう思っていそうだ。


「君たち、本当に仲がいいんだね」


 王子は若干引いている。




 川についた。騎士たちが剣の鍔に手をかけた。

 もふさまが向こう岸に渡って、駆けていった。

 騎士たちが手を下ろす。


「何事だ?」


 わたしたちに話しかけるのとは違う、冷たい厳しい声で王子は騎士たちに尋ねる。


「獣でしょうか、何かの気配がしました」


「獣? もふさまも行っちゃったけど、大丈夫?」


 王子さまが心配顔で尋ねてきた。


「もふさま、この辺り詳しい。平気」


 一番強いしね。

 川に入るには、水がもう冷たい。

 燻小屋が大きく立派になっていた。


「兄さま、ベアシャケ!」


 久々に見る、川を素早く登ってくる雄姿を見て声をあげる。

 兄さまは風魔法でベアシャケを岸にあげた。

 ロビ兄が大きなベアシャケを片手でもち、少し離れたところに移動して、血抜きの作業をはじめる。わたしも収穫した根野菜を川の水で洗う。


「もしかして、さっきからとっていたのは食材だったのか?」


 何言ってんだと思ったが、そうか、王子さまは食事は出てくるものだもんね。


「今日、人多い。いっぱい材料いる」


「そうだったのか。私も手伝いたい。フランツ、さっきのは魔法か? 何をして魚を打ち上げたんだ?」


「風魔法です」


 兄さまが風魔法の説明をしているときに、もふさまが帰ってきた。


「おかえり」


『ベアだった。ブンブンの巣をくれるそうだ』


「そっか、嬉しい。ありがと!」


「何が嬉しいんだ」


 げ。びっくりした。


「もふさま、わたし、好きって。わたしも、大好き!」


 もふさまを抱きあげて、顔を埋める。もふさまは体を振るわせて逃げようとする。


「リディア嬢はもふさまと話せるの?」


「うん、もふさまのこと、わかる!」


 得意そうに言っておく。

 もふさまはわたしに抱っこされて体が痒くなったんだとでもいうように、後ろ足で首を掻いている。


「あ、ベアシャケ!」


 指を差すと、王子さまが言った。


「私にやらせてくれないか?」


「どうぞ」


 兄さまが頷くと、ベアシャケが水の渦に巻き込まれ、その渦ごと地上に出てきた。そして、岸にザバーっと水とともに落ちる。


「水魔法、ですか?」


「ああ、魚だけ落として水を戻せないとだな。難しいな。魔法をこんな使い方、したことがなかった」


 それからも王子は川で水魔法をためし続け……。




「リー、起きて。そろそろ帰るよ」


 目を擦る。すぐ横にもふさまが寝そべっていた。同時に体を起こす。


「体は痛くないのか?」


 石がゴロゴロしているところで寝ているからね。


「なんとも、ない」


 ふわーとあくびをして起き上がる。


「伯爵令嬢が、これは良くないのではないか?」


「私たちがついていますから」


「君たちはちょっと妹に甘いのではないか?」


「そうですか? 普通だと思いますけど」


 血抜きしたベアシャケは何故か騎士さんが背負っていた。

 根菜は双子が持ってくれて、わたしは兄さまと手を繋いで歩く。

 家につけばただいまと言って、炊事場に直行する。


「ピドリナ、森と川でとってきたんだ。よかったら足しにして」


「まぁまぁ、ありがとうございます。これで一品増やしますね」


 ピドリナさんはアラ兄から野菜を、ロビ兄から魚を受け取って、嬉しそうにした。


「手伝う?」


 尋ねると、こちらは大丈夫ですよと微笑んだ。




 王子さまからお風呂に入っていただくことになった。そこそこの町の宿のものよりは立派なようで、みんな喜んでいる。王子さまは兄さまと双子と入るようだ。

 そうして順番に入っていった。石鹸はハーブ入りを置いておいたが、リンスは身内女性だけは使ったけど、出さなかった。売り出し前だからね。



 そうしてピドリナさんが頑張ってくれた夕飯だ。庭にテーブルを出し、父さまが屋根と壁で囲った。灯をともし、夕飯をいただく。

 鉄板を使ったお肉のステーキと野菜たち。甘辛く野菜を煮込んだもの。牛乳をたっぷり使ったシチュー。それからベアシャケのお腹にハーブと野菜を詰め込んで焼いたオーブン焼き。そしてパン。

 どれも好評だ。うちにいい感情を持っていないトロットマン伯さえ、ベタ褒めだった。

 無理もない。どれもとってもおいしいんだもの!

 ステーキもずっと食べたかった。この熱い鉄板だからこその焦げ目といい、肉汁の閉じ込め加減といい、鉄板でしかできない技だよね。この鉄板でおいしさが引き出されたステーキが食べたかったのだ! それに、さすがピドリナさん! 脂身を鉄板に押しつけて焼いてある。脂身はこうして焼いてこそ甘味が出ておいしいんだ。鍋とかだとここまで焼き付けられないからね。甘辛野菜の煮込みは、ほっこりする。シチューはおいしくないわけがない! ベアシャケは王子も魔法で獲ったんだと話すと、ありがたみもましたようだ。魔法の使い方に宰相さんが食いついていた。


 おいしくいただき、お茶タイムになる。

 王子が川でも楽しかったが、伯爵令嬢が川で眠るのはいかがなものだろうとバラされた。


「リディア、川で眠ったのかい?」


 父さまが笑顔で怒っている。


「もふさま、一緒」


「もふさまが一緒なのは当たり前だが、午後は昼寝をしてから出かけなさい」


 恨みがましく王子を見ると、彼は目をそらした。


「リディア、悪いのは昼寝をしてから出かけなかった自分だ。人に当たるんじゃない」


 ロビ兄にほっぺをつんとされる。

 膨れていたようだ。


「リディア、あとで父さまの仕事部屋に来なさい」


 マズい。これ、ちゃんと怒られるやつだ。

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