第922話 Get up⑬味方の決めごと
次々に魔物に囲まれ、それを倒していった。
ドロップ品がお肉、各部位、それからミルク、チーズ、バターなど食べ物。だからぬいたちのテンション爆あがり!
わたしも風を使って貢献したよ!
でもあまりにも次々と湧いてでて、疲れてきて足がもつれてしまった。
すると、もふもふとぬいたちが本気出して、あっという間に蹴散らかす。
ドロップ品をかき集め、セーフティースペースへ。
遅めのランチをとることにした。
炭水化物飯。
おにぎりに、サンドイッチ。
あったかスープと、唐揚げもどきだ。ポテトフライと野菜のスティック。各種ディップを揃えてある。
シートを敷いてお重を広げる。
ダンジョン用お弁当まで作り置きがあるんだから、リディアは大した子だ。
もふもふとぬいたちには、それにプラスしてお肉の丸焼きを。みんな夢中になって食べている。
それに押されたように、みんなもガッついて食べてくれた。
変わらずおいしいと言ってもらえて、嬉しくなる。
食後のお茶を配った。
「君は鑑定までできるんだね」
熱めのお茶を飲みながらアダムが言った。
「前からそんな気はしてたけど」
ロサが言うには、前からなぜそれがわかるのだろう?と思える言動があったそうだ。極めつけはまだ口にしてない飲み物に、ロサでさえも気づかない少量のお酒が入っていると言ったそうだ。
それで鑑定かそれと似たスキルも持っているんだろうと思っていたみたい。切羽詰まった状況だったし、そうだとしても秘匿したいんだろうなと思って聞かなかったそう。大人だ。
「また価値があがったな」
軽い調子で行ったのはブライ。
そういう言い方、しないで欲しい。
「人も鑑定できる?」
「名前と年ぐらいならわかる」
あとは出身地ぐらいだね。
ダニエルが教えてくれたんだけど、人の鑑定って難しいんだって。
「でも、ここでわかってよかった。
お遣いさま、周りに僕たち以外誰もいませんね?」
アダムが今更だけどと確かめる。
『ああ、いないぞ』
もふもふではなくレオが答えた。
アオの通訳にアダムは頷く。
「リディア嬢の能力は秘匿したほうがいい。光魔法も聖力も。探索、鑑定。テンジモノであること。話してくれて嬉しかったけど、敵がいるだけに危険だ」
みんな頷く。
「学園には聖樹さまの守りがある。リディア嬢は外出先では守りが固い。お遣いさまも一緒にいるし。
僕が情報を得たいと思ったら、リディア嬢が外に出た時に親しい誰かに成り代わって近づくか、親しい誰かに近づく」
みんな不安そうにお互いを見る。
「他のことはともかく、リディア嬢の能力については決して他では話してはいけない。王宮の地下。それかお遣いさまかレオたちの判断を仰いでからでしか、その会話はナシだ。もしその他の場所で尋ねてくる奴がいたら、化けてると思った方がいい」
誰かに化けるなんてと思ってから思い出す。
化けていたとは違うけど、ミミの意識をのっとっていた人がいたじゃない。
世界は広い。どんな秘術があるかわからない。
「幸い本物かどうかわかる手立てがあるんだ、恵まれていると思わないと」
それでわたしたちは約束をした。重要なこと、それからわたしの能力のことを話すときは、地下の基地、もしくはもふもふかぬいに本物かどうかを確かめてからにすること。他では絶対に口にしないこと。話題にもしないこと。
それから、わたしは人と話すときは絶えず、誰かぐらいは鑑定でチェックすること、と。
探索では、あれこれ性能を上げるべく話し合いがもたれる。
ただ複雑にしようとすると魔力が取られた失敗談があるようだ。お兄さまがそれを教えてくれたので、魔力の使用量を鑑み、少しずつ改良していくことにした。
ダンジョンの中だったけど、他に人はなくちょうどよかったので、これからわたしたちがしていくことを、もう一度確認しあった。
バッカスはツワイシプとエレイブ大陸では潰しまくったとのことだ。残党もかなり追い込んだ。なんか、地元民というか住んでいる人たちがどこも協力してくれることが多かったとか。エリンちゃんたちが大活躍で、今日用事があると言っていたのも、バッカス残党潰しだったみたいだ。
明日は学園だから、今日はこのあとボス部屋に挑んで終了しようということになった。余談だけど、ケラたちはボス部屋には挑まなかったそうだ。
気を引き締めて突撃!
中央の大きな木の枝が捻れて支えあってドームみたいになっているのが、ボス部屋だと思う。ここは草原フィールドなので、初めから遠くのそれは目立っていた。
セーフティースペースからはほぼ真正面。
ここで整えてから挑めってことだね。
ダンジョンって不思議。ゲームみたい。
攻略する人のためって気がする考慮が所々ある。ボス部屋然り。
その階で一番強いのを倒すと次の階への入り口が現れるのはわかるけど、ドロップ品が湧き出るってところが、ダンジョン来て〜って餌を撒いているよね。
普通はねボス部屋以外で魔物を倒しても、魔石は手に入ってもドロップ品が出るのことはない。稀なことだそうだ。わたしやアオがいるとドロップ率が高くなるという。
だからわたしとダンジョンに来ると楽しいらしい。
クラスの子のお土産ゲットのためダンジョンへ。ロサたちともこれから起こる何かに備えて身を鍛えるためにダンジョンへ。領地の人たちと山に入って魔物と戦ったり。わたしはかなり魔物とも戦っているようだ。
「「「「リディア!!!!!」」」」
すっごい呼ばれた。
探索をかけているので赤い点がマップに出ている。
魔物が近づいてきたのはわかっていたから大丈夫。
わたしは慌てず、風の刃を走らせた。土魔法でホルスタの足をしっかり留めさせたままで。
ボス部屋と名はつくけど、ボスは1体というわけでもないらしい。
突進してきたホルスタは、わたしが倒した。
みんな目を大きくしてる。
ちょっと、失礼じゃない?




