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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
17章 わたしに何ができたかな?

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第888話 忍び寄る悪意⑪なんとかしてくれる

 4年生の声は小さかった。彼もまた進行方向を見ているんだと思う。


「昨日のことは本当に悪いと思っている。生徒会からも親からも注意がきたし、お前んとこに何かをする気はなかった。けど、昨日のを見たんだろう。やばいのに目をつけられた。

 遊びにきてた弟が捕まってる。返して欲しければ、アランを餌にしてお前を連れてくるようにと。あんたには悪いけど弟が大事だ」


 嘘をついているようには聞こえなかった。

 この4年生が企てた、よくも恥かかせてくれたなという嫌がらせだったらよかったのに。そうじゃないこれは、結構まずい状況かも。


「リディアお姉さまー!」


 前から走ってくる下級生の女生徒たち。2年生だ。名前は覚えてないけれど、A組の()たちでわたしを慕ってくれているようだった。


「お姉さま、お祭り屋台、おいしいし、楽しかったです!」


「行ってくれたのね、ありがとう」


「お姉さまは2ーAの劇、見てくれました?」


「あ、ごめんなさい。当番で予定が埋まってしまって、時間が取れなかったの」


「お姉さまはお忙しいですものね。それにしても、どこに行かれるんですか? 4年生の先輩と」


 3人娘は、打って変わっての冷たい表情で4年生を見上げる。


「昨日、お姉さまと口論した方ですよね? お姉さまになんの御用ですか?」


 なぜ昨日のイザコザを知ってるんだ?

 それもびっくりしたけど。ど、どうしよう。


「今、謝ってもらったの。それで仲直りしたのをみんなに見せるのに、一緒に歩いているの」


 ひとりの子が頬を膨らます。


「そんなことで、せっかくの学園祭にお姉さまを独り占めするなんて、よくないわ」


「あ、わたし3人にお願いがあるの。きいてくれるかしら?」


 パッと嬉しそうな顔をする3人。


「お姉さまの役に立てるなら嬉しいわ」

「任せてください」

「できることはなんでもしますわ!」


 わたしは4年生を見上げる。


「少し待ってください」


 わたしはもふもふのリュックから出すフリで、収納ポケットから紙とペンを出す。

 そして、アランお兄さまが捕らえられていること。4年生は弟を人質にされていること。お兄さまを捕らえられていると、わたしを連れ出すように指示されていることを書いた。書いた紙を折って3人娘に託す。


「わたし当番に遅れそうだからこのメモを届けて欲しいの。お祭り屋台の……」


 そこから声を潜める。


「歩き出してから、一番初めに声をかけてきた人にそれを渡して」


 わたしを守ってくれてる人は、わたしの様子がおかしいことに気づいているはず。

 だからわたしとこの娘たちが別れたら、彼女たちに話しかけるだろう。

 一番最初に話すのは、護衛のふたりか、アダムのどちらか。

 3人は驚いただろうに、気を引き締めた顔で頷く。


「お姉さまは()()()()()()?」


 その言葉に全てを含ませて心配してくれてる。


「わたしは、大丈夫」


 だから笑ってみせる。

 わたしも魔法が使える。身を守れるだろう。もふもふも強いし、守られてもいる。心配なのはアランお兄さまだ。

 それからそんな状況だということを、わたししか知らない点。

 状況を伝えられれば、なんとかしてくれる。

 いいところに3人娘が来てくれて、伝えることができそうだ。

 わたしがあとできるのは、〝なんとかしてくれる〟までの時間を稼ぐこと。


「悪いけど、頼んだよ。よろしくね」


「「「はい、お姉さま」」」


 見送ってから4年生と歩き出す。


「どういうつもりだよ? 見られてるぞ、多分」


「あの娘たちに何かする方がリスクが高いでしょ? 手のこんだことをしてわたしを連れて来いと言ったのなら、秘密裏にしておきたいみたいだし」


 大っぴらにわたしを連れ去ろうとしていない、そこが利点だ。

 やりすぎたらアウトだけど、最大限にそこを利用しなくちゃ。


 4年生は最初にわたしへあらましを告げたことからも、根っからの悪い子でもないし、頭がどこまでも悪いってこともなさそうだ。それならと尋ねてみる。


「アランお兄さまはどこにいるの?」


「別棟に連れて行ったけど、その後はわからない」


 お互い進行方向だけを見て、小さな声でボソボソ話す。


「わたしをどこに連れて来いって? どんな人?」


「何考えてんだか知らねーけど、連れていくからな。弟が捕まってるんだ」


「そのことは誰が知ってる?」


「? 誰も知らない」


「捕まったところを見たの?」


「一緒にいるときに捕まえられて、俺だけあんたを連れてくるように放されたんだ」


 敵さんも考えたね。

 よくわからないけど、学園は聖樹さまによって守られているらしい。

 生徒ひとりひとりと、聖樹さまは繋がっている。繋がっているものしか、学園には入れない。まずその強固なセキュリティーが緩くなるのが、外からの接触を許すとき。式典、それから学園祭のようなイベント。

 ただし、繋がっている生徒に害がなされたとき、聖樹さまの検知に引っかかる。大きな魔力が動いた時もだ。すると警備兵が現れて対象者を捕獲する。

 繋がっていない者が何かをしたら、すぐに検知される。けれどそれが繋がっている生徒のやったことなら、多少は目眩しになるという面も併せ持つ。そこを突かれたんだ。


「傭兵あがりみたいな奴だ。俺じゃ敵わないし。弟をどうされるかわからないと思って」


「みんなで助かるよ」


「え?」


「だからあなたも協力して」


「本当に弟も助けてくれるか?」


「あちらとしてはわたしが目的なら、弟さんに重きを置いてはないでしょう。あなたにいうことをきかせるためだけにだわ。弟さんよりあなたの方がいいように使われそうだと思う」


「ど、どういうことだ?」


「あ、シュタインちゃん! 喉乾いてない? ジュースあるよ?」


 イベントで一緒になったことのある先輩、だそうだ。わたしはよく覚えてないけど、会うとみんな声をかけてくれる。


「入りましょう」


「おい!」


 4年生はわたしの肩を持とうとしたけれど、もふもふが肩越しに威嚇した。


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― 新着の感想 ―
弟が人質か〜アランもそれで付いて行ったのかな。 記憶有りリディアは敵対者の危険性を考えて一般生徒を巻き込めなかったかもしれないけど、現リディアは記憶有りリディアとは違う意味で危機感が薄いというか当事…
弟さんは生徒ではないから聖樹さまによる守りとかがないので攫われてしまった感じですね。 そうなるとアランはあえて捕まっているのでしょうか? 最後に寄り道したように時間稼ぎして様子見してみてもいいかもし…
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