表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
17章 わたしに何ができたかな?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

885/1170

第885話 忍び寄る悪意⑧前ガゴチ将軍

 学園祭2日目だ。

 今日も今日とて忙しい。

 最初はクレープ屋で2時間。次に創作同好会の店番で、午後いちにロビンお兄さまの勇姿を見に行って、ちょっと空き時間があり、続いてクラスの当番だ。

 出席をとるホームルームが終わったら、急いで移動だ。浴衣にはクラス当番のときに着替えればいいから、そこは楽ちんだ。


 クレープ屋当番のメラン、ライラ、それからもふもふと一緒に校舎から出る。

 ホームルームで簡単に昨日の侵入者の報告があり、その仲間は捕まえたけれど、用心のため、誰かと一緒に行動するように話があった。

 昨日捕まった人はわたしに声をかけてきたので、バッカス絡みとか、わたし狙いなのかと思って、そうだったら嫌だなと思っていた。けれど、アベックス寮を狙ったということは、学園の生徒なら誰でもよかったんだろう。

 そこはちょっとほっとした。



 朝っぱらからクレープというのは重たいのではないかと思ったけど、それは杞憂で午前中なのによく売れる。

 昨日気に入った人がまた買ってくれたりもして、待つ人の列が途切れることはなかった。

 今日は裏方に回って、ひたすらクレープを包む係となる。

 サルサソースが大人気だ。

 昨日とは別の意味で足が痛くなり、当番の2時間を終えた。

 どんだけクレープを作ったろう。

 生地はできたところからだったけどさ。


 帰り際、浴衣姿の男子たちが、クレープを食べにきてくれた。

 その中にはアダムもいて、サルサ・ソーセージ×2を食べていた。

 大きく口を開けているのに、食べ方が上品だ。

 わたしが創作同好会へ向かうとついてくる。

 わたしはこっそり、護衛がいるから大丈夫だよと伝えた。

 今日も付かず離れずのところでガーシとシモーネがついていてくれる。シモーネは学園の卒業生で、3年生より上には覚えている子もいて、時々声がかかっている。

 アダムは「僕のことは気にしないで」と言ってついてきた。

 いや、気になるよ。


 なんだかんだおしゃべりをしながら歩くと、部室にはすぐについた。

 やはり顧問の先生がちゃんといる。

 エッジ先輩と交代だ。

 ほとんど売れていて、今日足したお菓子も完売。絵が1点と、木工細工の小物が5点残っているだけだ。全部売れたら、完売の札を下げて店番は終わりにしていいと引き継ぐ。


 しばらくして、ふたりのお客さまが入ってきた。

 体格がいいと思ったけど一人は年配の方だ。姿勢がいいから余計に大きく感じた。

 そういえば今日はそういう人が多かった気がする。ま、143センチのわたしはかなりチビでいつも見上げているんだけどさ。

 頭には薄くなった白髪。動作はゆっくりめに見えたけど、若いころ鍛えていたのかもしれない。もふもふが緊張した。

 お父さまぐらいの年のお付きの人も鍛えた体だ。

 物を作り出すのが好きな人が集まったこじんまりした空間。部室はそんな色を残している。そんな中で周りを見渡す目に隙がないふたり組。そしてそれを隠そうともしていない。ひどく場違いな気がした。

 おじいさんは商品を置いたテーブルを見て、


「こちらを全部いただけるかな?」


 と言った。優しい口調なのに、やっぱり目は鋭い。


「あ、はい。ありがとうございます」


 絵はえっと。額についている値段は5000ギル。木工細工は500ギル×5で2500ギルだ。金額を確認する。


「絵画は5000ギル、1つ500ギルの木工細工5点で2500ギル。合わせて7500ギルになります」


 告げると、若い方の人が金貨を差し出してきた。


「1万ギルいただきましたので、2500ギルのお返しになります」


 銀貨2枚と、銅貨を5枚。お釣りを渡してから、商品を紙で簡単に包む。

 無口な顧問のモナシ・ルーダ先生が手伝ってくれた。手を出されたので、お付きの方にお渡しする。


「今日は読み聞かせはしないのかね?」


「あ、はい。今日は時間をとっておりません」


 そう告げると、年配の方はシワを深くして笑う。


「それは残念だ。孫から君の読み聞かせの話を聞いてね、ぜひ聞きたいと思っていたのだが、昨日は都合がつかなくて」


 わたしの読み聞かせを聞きにきてくださったなんて。

 ちょっぴり感動。

 わたしがなんて返そうと思っていると、隣のアダムが言う。


「ご縁がなかったようですね」


 わたしはびっくりしてアダムを見上げた。


 年配の人は怒りだしはしなかった。

 豪快に笑う。


「ご縁がないとは確かにな。小童にしては肝が座っておる」


 この人、アダムより背が高い。だからチロリと視線を落としたって感じに見えた。


「リー」


 そこにロビンお兄さまが入ってきた。

 お客さんを認めて、まずいという顔になる。

 年配の人が目を見開いていた。ロビンお兄さまを見て。

 明らかにおかしな様子に、やりとりを見守っていた顧問の先生ものっそりと進み出た。


「き、君。君の名は?」


 年配の人は、ロビンお兄さまに名を尋ねる。


「……ロビン・シュタインです」


「シュタイン家のご子息か。ああ、なるほど、そういうことか」


「失礼ですけど、どちらさまですか?」


 ロビンお兄さまが逆に尋ねた。


「ああ、失礼。先に名乗らずに。ワシはヒダカ・キャンベル・ガゴチ」


 ガゴチってことは……銀髪の言ってた、おじいさん?


「小童、名前は?」


 ガゴチのおじいさんはアダムにも名前を聞いた。


「ゴーシュ・エンター」


「なるほど。お嬢ちゃんはワシがくることを知っておったのか?」


 え?


「他の商品のご予約がありましたか?」


 予約とか、商品受け渡しとかなかったよね?

 と伝票をあさると、おじいさんにとめられる。


「予約はしておらんよ。お嬢ちゃんは知らされてなかったってことか」


 ん? 何を言ってるの?


「何か不手際がありましたでしょうか?」


 顧問の先生が問いかける。

 チロリと先生に目をやるおじいさん。


「いいや、気が削がれた。けれど、いいものをみつけた。是が非にでも手に入れたいものだ」


 そうカッカッカと笑いながら出て行った。

 な、なんなんだろう、ガインのおじいさん。

 ロビンお兄さまの顔色が悪い。


「ロビンお兄さま、どうされました? 顔色が」


「リー、いや、なんでもない。演武見てくれるんだろ? 特等席を教えておこうと思ってきたんだ」


「すべて売れましたから、ここは閉めましょう」


 先生に言われて頷く。

 部室には完売の札をたて、特等席を教えてもらうために中庭へと繰り出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
知らされてたんだよなぁ…結びついてなかっただけで。 リディア、ガインの忠告をアダムにはすぐ伝えてたけど家族には報告してなかったんかいな。家族に学園祭止められてた理由の一つかと思ってた。リディアより会っ…
ついにガゴチの前将軍との邂逅。 一緒にいたのは現将軍、ガインの父親でしょうか? リディアを見定めに来たはずがロビンを見てしまい随分と動揺していましたがどんな行動を起こしてくるのやら。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ