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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
17章 わたしに何ができたかな?

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第880話 忍び寄る悪意③お祭り屋台

 下級生たちの教室の階をまわり、特別教室の並ぶ棟にも行った。

 ただ練り歩いただけなのに、鼻緒が当たっているところが痛い。

 他3人はなんともないみたいだ。ううっ。

 4年生の教室が並ぶ階では、アダムがある方向からわたしを隠すようにしていた。アダムのやることだから、何か意味があるんだろうなーと思っていたけど。4年B組の前で、わたしたちは行く手を阻まれた。


「D組ってことは平民クラスか」


「にしては可愛いじゃないか」


 とウォレスの手を取ろうとした。その手を払ったのはアダムだ。


「先輩、人としての礼儀は守りましょうか。仮にも学園の生徒なら」


 アダムが凄む。


「な、なんだ、平民が偉そうな口叩きやがって」


 と一人が進み出た。


「ん? 後ろにいるのはシュタインの妹か?」


「ああ、傷モノの?」


 ヲイ。


「チビガリだし、髪も短いけど、顔立ちは悪くねーな。行くとこねーなら俺がもらってやっても……」


 と言っている時に、後ろから飛び蹴りが入った。

 カエルみたいに前のめりに伏せった。


「ウチの妹はなー、引く手数多だ。オメーにだけは絶対やらねー」


 ロビンお兄さまだ。打って変わった声で


「嫌な思いさせてごめんな。こっちは締めとくから。宣伝、がんばれ」


 そう励ましてもらう。


「行こう」


 お兄さまにペコっと頭を下げたアダムに促される。眉が微妙に寄っている。


「学園では珍しく、たちの悪い素行の良くない者たちだ。絡まれたらとにかく逃げた方がいい」


 アダムが教えてくれる。


「久々に平民だとか言われたね」


 ラエリンが驚いたように言う。


「素行が悪いって?」


 ウォレスが尋ねる。


「ご両親は真面目な金貸し業をされてるんだけどね。子供は何か勘違いをしてしまったようで……」


 相変わらずの情報通っぷりを披露してくれた。



 一通り校舎を練り歩き教室に戻れば、満員御礼だ。

 たこ焼きも焼きそばも飛ぶように売れている。

 あれは焼くところに目を奪われてという面もあるので、作り置きでは良さが半減してしまうなーと思った。

 作り方は有志によってすぐに覚えられ、寮の厨房を手続きをして借りて作りまくったんだけど、その様子を映像の魔具で収めておいた。今、それを後ろの壁を利用して、そこに映し出し流している。みんな立ち止まって見上げている。

 独特の丸い穴を開けたような鉄板の上でくるり、くるりと返していく様子はなんとも楽しいもんね。そうして出来上がったのがこちら!と、ソースたっぷりに鰹節もどきと海苔を散らし、そしてマヨソースも。

 買ってすぐに食べ始める人が多く、それもまた効果的に働いているようだ。


 アダムはちょっと外に出てくるとかで、わたしには絶対教室から出ないよう言われ行ってしまった。当番だから出ないよ。

 綿菓子を作っているのはイシュメルで、その補佐をしながら会計をしているのはジニーだ。

 焼きそばの麺は、始まりの村のダンジョン産のもの。

 お手製パチンコのゴム部は数年前に開発されたという、植物の樹液とスライムの粉を混ぜたもので、わたしが思っていたゴムより伸び縮みはしないけど、なんとか用途を果たしている。

 わたしは特にどのイベントを担当するわけでなく、フォロー要員だ。何か困った事案が発生したら助っ人することになっている。


「姉さま!」


 エリンちゃん。後ろにはノエルくん、お父さま、お母さまもいた。


「うわー。おいしそう、楽しそう。姉さま、あれやりたい!」


 エリンちゃんが指さしたのは射撃だ。パチンコ当てが正しいけどね。

 射撃エリアにご案内。

 アマディスがニコッと笑った。


「いらっしゃい! 1回5玉で300ギルだ」


 300ギルもらって、パチンコと玉を5つ渡す。

 的は木の板を動物の形に模したモノだ。

 エリンちゃんは足を肩幅に開いて、堂々とパチンコを構える。片目をつぶって狙いを定め。当たった球は木の板を倒した。


『やられた〜』


 倒れた動物から声が聞こえる。

 エリンちゃんがオオウケした。

 これね、賛否両論あったんだけど、最終的にゴーサインがでた。

 的に当たると『やられた』と声が上がるのだ。

 1発目から当てるとは!

 お見事とみんなで盛り上がる。2発目、3発目……5発全て木の板を倒した。

 エリンちゃんはぴょんぴょんその場で飛び跳ねて嬉しさを現した。

 一瞬あまりの命中率に言葉をなくしたホスト側だけど、慌てて賑やかしをして場を盛り上げる。


「5発命中! おめでとうございます! 最高得点ですので景品はチョコ菓子です」


「やったー」


 可愛く大喜びだ。


「次は僕だねー。姉さま、見ててね」


 ノエルくんも300ギルを払って、パチンコと5つの玉をもらう。

 ノエルくんも可愛いから、女の子たちから黄色い声が上がる。応援だ。

 ノエルくんは早技で5つの板を倒した。


『やられた〜』『やられた〜』『やられた〜』『やられた〜』『やられた〜』

 やられた声も壊れたおもちゃのように繰り返す。

 一瞬、呆然としたけれど、慌てて拍手をしたり、当たった時用の小さな太鼓を使って音をかき鳴らす。

 み、みんなでやってみて、中くらいの難しさにしたつもりなのに。

 なんでふたりともパーフェクトにできちゃうのかしら。


「姉さま、見てた? 凄い?」


「うん、スゴイ!」


 ノエルくんは景品のチョコ菓子をわたしにくれた。


「えっ。これはノエルくんのだよ」


「だから姉さまにあげる!」


「ずるーい、ノエル。あたしも姉さまにあげる! 一個食べちゃったけど」


 あはははは。


「ありがとう。気持ちはもらうけど、できたら、ノエルくん、エリンちゃんに食べて欲しいな」


 作った時に、いっぱい味見と称して食べていたから。

 ノエルくんはにっこりと笑う。


「じゃあ、僕がいただくね」


 そういって袋を開けて、ひとつ口にして。頬張ったまま、袋からまたひとつ出したチョコを、わたしの口元に寄せた。

 クラスメイトの前で弟からあーんとチョコをもらうのはすこぶる恥ずかしい。が、ノエルくんの好意だからなーと口を開ければ、チョコが放り込まれる。

 ノエルくんがそんなことをすれば、エリンちゃんがやりたがるのは、シュタイン家にいた時に学んだことだ。

 エリンちゃんからもあーんと声つきでチョコを食べさせてもらうことになった。


「では母さまは〝輪投げ〟というのをやってみようかしら」


 お母さまが華やいだ声をあげた。

 

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― 新着の感想 ―
学園では珍しく…?珍しく。そうかな…?リディア視点だと頻度が多い気がする(笑) たこ焼きと焼きそばはソースの香りも客寄せに大事な要素だけどこの世界では珍しい食べ物だから映像だけでも効果あったのかな。…
絡んてきた先輩たち、金貸し業の親はなんてことしてくれたんだ!とか思っていそうですね。 今後シュタイン領で商いをしづらくなってしまいますし。 ライブクッキングは食べる気が無くても買ってしまう不思議な引…
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