第877話 アクション⑭終焉を止める3つのポイント
「終焉の時は、地形の魔法陣を壊されるんだと思う。ユオブリアに攻め込まれる。主要戦力も各地の戦いでとられる。魔法陣を壊されているから、封印を留めておくのに膨大な魔力量がいる。陛下がその役目を担っていたのに、攻め込まれ、お隠れあそばせし封印が解ける。瘴気が世界中にばら撒かれる。という流れになると思っている」
なんとなく聞いて理解したものと、概ねはずれてない、大丈夫だ。
「じゃあやっぱり、今できることは瘴気をどうにかすることじゃん」
「え? どうしてそうなる?」
「だって、いっぺんに攻撃されて地形の魔法陣が壊され、国を守る人たちもいっぱい攻撃されて手薄になり、王都まで攻落されて陛下がお隠れ遊ばせられる。
瘴気の封印の最後の砦である陛下がいなくなるから、封印が溶けて、世界がジ・エンド、なんでしょ?」
「ジ・エンドとは?」
「えっと終わりってこと」
「うん、そうだね。その通りだ」
「世界の終焉を止めるポイントは3つ」
わたしは親指と小指を折って、3本の指を立てる。
「ひとつは地形の魔法陣を壊されないようにすること。
もうひとつは陛下、王都を守ること。
そして封印が解けてもなんとかなるぐらいの瘴気にしておくこと」
フランツは形のいい口を開けっ放しだ。
「ひとつめと2つ目は、同時進行中よね。敵を見定めようとしているし、それを取り除こうとしている。
敵のひとつはバッカスで、今のところ、それ以上にわかることはない。そうだとしたら、あと進められるのは瘴気をどうにかすること、でしょ?」
と最初の会話に戻る。
「瘴気をどうにかって……。できたら素晴らしいけれど、瘴気はどうにもできないよ。あ、呪術師やグレナンに頼るとか、そういうこと?」
「違うよ。瘴気って巨大なのをひと所にまとめて、ひとりでしかどうにもできにようにしておくのが悪いんだよ」
「え」
「バラけさせればいいの!」
「どうやって?」
わたしは不敵に笑って見せる。
話すとフランツが固まる。
頭の中で計算しているみたいだ。現実可能なことかどうか。
最初に聞いた時不思議だった。
陛下がお隠れあそばされると、封印が解けてしまうって。
だって、陛下が生まれる前と、生きている限りいつかは亡くなるわけなのに、どうして?と。
蓋を開ければ、陛下以外の封印している力があって、それを壊され、頼みの綱が陛下だけになって、そこで陛下の力が途絶えて莫大な瘴気が世界にバラまかれるわけだ。
だとしたら、頼みの綱になる陛下ひとりで受け持っていた力を、分散させておくこと。
封印が解けても、なんとかなるぐらいの瘴気にまでしておくこと、それがベターなんじゃないかと思う。
もちろん、ユオブリアが攻撃を受けないよう、前もって用心しておくことも大切だけどね。
それから腹ごなしに歩いて移動をし、教会の塔に登った。
夕日が沈むのをフランツと見る。
美しく連ねる屋根を見渡す。その屋根の下にいっぱいの人がいる。そこに生活している人たちがいる。人の数だけ、ドラマ、物語がある。笑って泣いて、誰かに迷惑かけたりかけられたりもしながら、明日が続くのは普通のことだと思っている。その明日はいつどうなるか不確かなもの。
でもそれが誰かの手により故意に壊されようとしているなら、防ごうと足掻かなくちゃね。
わたしが今までを忘れても、わたしを受け入れ愛してくれる人たち。わたしが出会った大切な人たちだ。魔物もだ。聖獣も。守るよ、絶対。
沈んでいく夕日を見ながら、わたしはそう決意した。
夜は魔力本を読んでいる。もふもふから教えてもらった魔石の作り方の本。何かわかるかなと思いながらページをめくる。レシピが多い。材料はドワーフそれ用意できるの? すげーという感想しか出ない。
それに熟成させる〝時〟が必要なので、薬草学のおばあちゃん先生が言ってたように人族には適してないのがわかる。
それからも慌ただしく過ごした。バッカスのことに進展がないまま、学園祭前日となる。
一度銀髪と遭遇した。わたしはお礼を言おうと思ったんだけど、向こうが威嚇してきた。思わずムッとすると、通り過ぎるときに小声で言う。
「学園祭にじじーが来るから気をつけろ」
それは紛れもない警告で。銀髪はわたしとコンタクトを取ってはいけない制約があるのだろうと思えた。誰かに見張られているのかもしれない。
すぐにアダムに伝えれば、銀髪のことを教えてくれた。
銀髪はエレイブ大陸にあるガゴチという国の将軍の息子。前将軍が未だはばを利かせている国。非道なことを過去にしてきてその印象が強い。圧倒的な武力を誇る。
ガイン・キャンベル・ガゴチ。彼は自分の代ではガゴチを誇れる国としたいと奮闘中で、情報を取ってくるのがうまい、とのことだった。
学園に留学する前からわたしとは何回か会ったことがあり、わたしのことを気に入っているとのこと。何度か嫁に話も出ていたようだ。
「わたしの婚約者ってこと?」
驚いて尋ねれば、アダムはそれは違うよと首を振った。少しほっとする。
学園祭でも護衛がいるなと言われる。学園祭中は一般人も入れるので、ガーシやシモーネとも常に離れないことと言われてしまった。




