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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
17章 わたしに何ができたかな?

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第855話 逃走劇⑦狙われた馬車

 馬の嘶き。

 馬車が急に止まる。

 わたしはアダムに抱えられて、無事だった。

 商人のおじさんは床に転がり、お付きの人に起こしてもらっている。

 御者さんが飛び降りると馬車ががくんと揺れた。

 冒険者風の人たちが飛び出していく。


「僕が」


「いや、アダムは弟をよろしく」


 そう言って、フランツが出て行った。


『我が出るか?』


 抱え込んでいたリュックの中から問われる。

 わたしは底を2回軽く叩く。〝NO〟の合図だ。

 アダムとフランツと相談して、もふもふたちの援護は最終手段ということになっている。

 わたしはリュックを背負った。


 みんな不安げに何があったのかと見極めようとしている。幌の穴を開けた窓部分から矢が飛び込んできて、みんな伸ばした首を慌てて縮めた。


「こ、これは襲撃されているということですかな?」


 商人さんが恐る恐る言った。


「そのようですね」


 アダムが相槌を打つ。この状況、それしか予想できないもんね。乗客たちの顔色が一瞬にして悪くなった。


 剣を激しく合わせる音が聞こえてくる。

 確か〝集団〟と言っていた。こちらは御者さん、冒険者のふたり、それからフランツの4人だ。フランツも強いけど大丈夫かな? 魔法を使えば一発ってことでもないのかな? だから魔法を使ってないのかな?


 馬車が揺れる。巨体男が馬車に乗り込んできた。

 誰かが悲鳴をあげるとそいつはニタァと笑う。


「お前ら、金目の物を出しやがれ。そしたら命は取らないでやってもいいぞ」


 嘘だ。助けるつもりなんかないくせにってわたしは思ったけど、アダムはなぜかほっとしたように息を吐いた。

 え、なんで安心するの?

 アダムと目が合う。アダムは苦笑いを浮かべた。

 乗客たちは、震えてワタワタしながらも、身につけていた袋から硬貨を出そうとしている。男はその袋ごと奪う。


「そうそう、素直に従ってれば痛い思いをしなくて済むぜ」


 ズダ袋にみんなから奪ったものを放り込んでいく。

 商人さんの荷物は丸ごとだ。

 巨体男はわたしたちを見た。


「べっぴんなにーちゃんよー、早く出せや。こっちの坊主を痛めつけてやろうか?」


 アダムはわたしを引き寄せた。


「んぁ? よく見れば、坊主じゃなくて嬢ちゃんか。これも金になりそうだな」


 と、わたしの手をつかもうとした。

 女とバレたのなら、声を出してもいいよね?


「嘘つき!」


 手を払って大声で言ってやったので、巨体男は少し驚いたようだ。


「あー? 何が嘘なんだよ?」


「最初から助けるつもりないでしょ?」


 男はニマーっと笑う。


「なんでそう思う?」


「ここは一本道。逃げ場がないから盗賊が現れない道だった。でもあなたたちは襲ってきた。逃げられる算段があるからよ。生き残った乗客になり変わる気でしょ?」


 被害者ヅラして街に駆け込めばいい。盗賊に襲われた、助けてくれって言って。御者に行けと言われ、自分たちだけ馬車を動かして逃げてきたんだと。

 何人かは先に殺されたとか言ってね。

 屠った乗客の何人かに自分たちの着ていた服を着せて、調べにきている間にとんずらするつもりだろう。


「ほー、賢いじゃねーか。でも頭はあっても口に出すのがガキなんだよ。これから売られた先では、それを覚えておくこったな」


 腕をつかまれたと思った瞬間!

 アダムに抱え込まれた。


「ぎゃーーーーーー!」


 何がどうなったのかわからないけど。ひぇーーーーー、盗賊の、う、腕から下が床に落ちてる。血が飛び散っていて。


「汚い手で触るなって、あ、警告には遅かったか」


 アダムはポーカーフェイスだ。


「怖かったら、いい子だから目を瞑っていて」


 わたしには微笑む。

 アダムが動いたと思った時には、悲鳴をあげている男の後ろに回りこみ、首に回した手に一瞬力を入れて、男は倒れた。

 ふたりの男が馬車に乗ってきた。一瞬で状況を把握したようだ。


「こ、この野郎!」


 男のひとりが狭い通路を走ってくる。

 もうひとりの男は、前方にいた赤い服の女性を、馬車から降ろそうとしていた。

 そこにフランツがやってきて、男の方を馬車から下ろそうとする。男は後ろにひっくり返っるように倒れて落ちて……。

 通路を走ってきた男も、アダムが気を失わせていた。

 再びあがってきたフランツとアダムは目で合図をしている。


 外の人たちは制圧できたみたいだ。

 みんなで協力して、馬車の中で気を失ったふたりの男を外へ出す。


 少しすると組合の人たちと、彼らが連れてきた衛兵たちがやってきた。

 衛兵たちが盗賊たちを縛りあげていく。彼らが街に連れて行くそうだ。

 わたしたちは元々の馬車で街へ。街で事情を聞くから所在を確かにしてくれと言われる。宿をとるつもりだからまだわからないと言えば、指定の宿に行くように言われた。宿をとる人たちはみんなそこになりそうだ。


 街についた。

 馬車を降りると、赤い服の女性がフランツに頭を下げる。


「助けていただき、ありがとうございました」


「あなたを助けたわけではないので」


 うわー。フランツって無闇に敵を作るタイプ?

 〝無事でよかったです。お気になさらず〟ぐらいに言っておけばいいのに。

 でも派手な女性はメンタルが強かった。


「それでも助かりましたから。お礼をさせてください」


 とフランツに食事を誘っている。

 フランツは剣もほろろに断っていたけど。


 宿では3つのベッドのある部屋を取ることができた。内風呂もあるって。わーい!

 フランツは買い物に行ってくるといい、わたしは先にお風呂に入らせてもらうことにした。

 レオとベアとアリとアオが眠っていたので、起きていたもふもふとクイと一緒にお風呂に入る。

 服をきれいなものに着替えて、ベッドにダイブ。

 フランツはまだ帰ってきてなかった。


 アダムにお風呂に入ればと勧めた。もふもふが〝我がいるから大丈夫だ〟の言葉に後押しされてお風呂場へ。ベアとアリとアオが起きてきて、アダムとお風呂に入ると走っていった。レオは近くで火をだすとすぐ起きるらしい。預かっていた火の魔具で一瞬だけ火をつければ飛び起きた。そして自分もお風呂に入ると、慌てて駆けて行く。

 可愛い。


 ベッドのところに戻ろうとして、ビクッとなる。

 びっくりした!

 椅子にアダムの上着がかけてあったのか。こちらから見ると、アダムがいるように見える。ドアから入ってきたら、アダムが腰掛けていると思うかもね。それで話しかけたりして。

 わたしはフランツがそんな勘違いをして、上着に話しかけたら面白いなと思った。そんなことを考えながら、もふもふとクイと一緒に、衝立の向こうのベッドのひとつに飛び込んだ。


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― 新着の感想 ―
ただの盗賊か。腕を掴まれるまで何もしないの、のんびりしてるなと思ったけどフランツが魔法使用を避けてることといい外国人問題で先手は危ないから? 派手女性は一般人なのか何かある人なのか アダムは高位魔…
バッカスではなくふつうの盗賊であることに喜ぶのも何か変な感じですね。 派手な女の人は部屋に押し入ってきてひと悶着ありそうな気が。
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