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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
17章 わたしに何ができたかな?

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第854話 逃走劇⑥乗合馬車

 考えながらうとうとしていたようだ。

 気がついたら、フランツに寄りかかって寝ていた。

 日は陰り始め、馬車は止まっている。

 街に入る手続きの列に並んでいるみたい。

 重かっただろうと思って謝ると、すぐに口を塞がれた。

 黙っていろと言われたんだっけ。

 手続きが終わり、街中をゆっくり進んだ馬車は、街のターミナルに辿り着いた。

 御者さんにお礼を言いながら降りる。

 辺りは暗くなろうとしている。


「宿を急いで取らないと……」


 そう呟くアダムにフランツは頷く。わたしはなぜかフランツと手を繋いでいる。12歳ってお兄ちゃんに手を引いてもらうものか?

 ちょい裏道に入って宿屋を探した。

 アダムとフランツが入ると、宿のおばさんニッコニコだ。

 挨拶をしてから、部屋は空いてるか尋ねる。

 1部屋なら空いているそうだ。


「小さいベッドを入れてもらうことは可能ですか?」


「はい、大丈夫ですよ」


 後ろから人が入ってきた。

 派手な美女だ。


「すみません、お泊まりでしたら、もう部屋は空いてません」


 おばさんが先に告げると、女性は眉根を寄せた。

 そしてアダムとフランツに狙いを定める。


「お礼金をお支払いしますわ。部屋を譲っていただけません?」


「すみません、小さい子もいるので早く休ませたいんです」


 チロリと見られた。その目つきの鋭いこと! 怖っ。


「では、相部屋してくださらない? 部屋代は私が持つわ」


「……部屋には2つしかベッドがないそうなので」


 アダムがやんわり断る。わたしたちは3人。すでにベッド足りないでしょう?と含ませる。


「ここのベッドは広いわ。2人で眠れるでしょ。同じベッドで構わなくてよ」


 ツエー。あなたが構わなくても、こちらが構うってことがあるだろう。

 服も原色バリバリ。眉とアイメイクでやたら目を強調しているから、派手に見えるんだなーとなんとなく観察していた。


「お断りします」


 フランツがキッパリと言った。

 まったく柔らかさを見せず、おばさんに向き直り、前払いの代金を払って、鍵を受け取る。

 そしてわたしを担ぎ上げた。


 おわっ! ひとりで2階にあがれるってば。

 でも話しちゃいけないんだろうなと我慢する。

 残されたアダムは


「すみません、弟が風邪気味で気が立っていて」


 と如才なくフォローしてから、階段をあがってきた。

 部屋に入ってしばらくすると、宿の人が簡易ベッドを入れてくれた。

 元々あるベッドは広々としていて、なんなら3人でひとつのベッドでも眠れそうだった。

 ないとは思うけど襲撃に備え、広いベッド2つの真ん中に簡易ベッドを置いてもらう。

 アダムが夕飯を調達してくると部屋から出ていった。


「フランツ、寝ちゃってごめんね。重かったよね?」


 謝れば、フランツは微笑む。


「そんなことないよ。トスカはもっとご飯を食べて太った方がいい」


 明日も朝から夕方まで馬車に乗ることになるという。

 アダムが帰ってきてから、もふもふやぬいたちも一緒にご飯を食べた。

 もふもふやぬいたちが食べる食べる。

 アダムはそれを知っていたように、すごい量を買い込んできていた。

 お肉が大好きな子が多くて、それも知っていたみたいだ。

 みんなを満足させるラインナップだった。

 わたしにはお菓子も買ってきてくれてた。明日馬車の中で食べてもいいと。

 簡易ベッドもわたしには大きかったので、もふもふやぬいたちと一緒に寝ても、問題なかった。


 お風呂のない宿だったので、手足を拭いただけだ。今日の宿にはお風呂があるといいな。なんて。〝アリの巣〟にいた時は体も満足に拭けなかったのに、贅沢な子になってしまった。

 そんなことを思いながら宿の朝ご飯を食べて、ターミナルに赴く。

 もふもふも、ぬいもリュックの中だ。


 げっ。

 同じ乗合馬車を待つ列の中に、昨日の派手な女性が並んでいた。

 今日は赤い服だ。とっても目立つ。

 女性がわたしたちに気づいて、一瞬、目を細めた。

 フランツがチケットを買いに行き、馬車がきたので乗り込む。

 女性と席が離れていたので、胸を撫で下ろす。


 12人乗りの乗合馬車は満員だ。

 後方の3席。わたしはアダムとフランツに挟まれる。

 わたしたちの前は割腹のいい商人さんだった。おじいちゃんに手が届きそうな人で、隣に成人したてのお兄さんを連れていた。使用人ってところかな。

 商人のおじさんは、おしゃべりな人で、推しの商品をいろいろ教えてくれた。頼んだわけではないけれど。でもそれで退屈しなかったのは確かだ。

 休憩を一度挟み、その次の休憩場で、少し長めのお昼をとる。

 冒険者風の2人組が御者さんに呼ばれていた。


 今日の買い出し当番のフランツの選んだご飯をいただく。

 まだ冒険者と御者さんは話している。

 フランツも気になったようで、話しているところに合流した。

 戻ってきた時、険しい表情だった。


「どうした?」


 近づき、小さな声でアダムが尋ねる。


「一定の距離で追ってくる集団がいるそうだ」


 さらに声を小さくしてフランツが答えた。

 この街道は一本道なので、方向が同じなのは当たり前。気にすることもないのかもしれないけれど、最初の休憩所の時に彼らに気づいたという。

 馬車を引く馬と馬を走らせるのとでは速度が違う。追い越していけばいいのに、そうしないことが気持ち悪かったんだって。次の休憩所まで少しゆっくり走らせた。すると、その集団も速度を緩めた。

 ここは一本道、そして左右にそれたり隠れたりすることに向かない地形から、盗賊などは出たことがない。次の街で捕まってしまうからだ。それでこのルートには護衛はついていない。御者さんは昔冒険者をしていて、腕に覚えがあるそうだ。冒険者を引退してから御者の仕事を選ぶ人は多いらしい。

 もし盗賊でこの馬車を狙っているとしたら、ここが最後の休憩場所なので、街にある程度近づいたところで襲い、そのままかけ抜けようとする可能性が高いとみている。

 一応、乗合馬車組合に伝達魔法を飛ばして、応援を呼んでいるそうだ。

 ここで出来る限り時間を潰し、それでもバレたかって思われ襲われたら本末転倒なので、もう少ししたら出発だそうだ。

 御者さんの勘が外れることを祈るしかないけど、こういうのは当たるもんだよね。

 


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― 新着の感想 ―
派手な女性は何者だろう?宿のベッドの大きさを知ってるってことはよくここを利用してるのか?他の宿に向かわない理由はなんなのか? トスカたちからすると追跡者は盗賊の方がマシだが果たして… フランツの髪色…
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