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プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
3章 弱さと強さと冬ごもり
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第85話 兄妹喧嘩と女子会⑤女子はパワフル

「リディア一家が来てから、町が明るくなったよね」


「リディアのお母さん見た時、本当驚いたもん。女神さまが地上に降りてきたのかと思った!」


「お父さんもだよ。かっこよすぎ!」


「あ、リディアもかわいいよ」


「うん、かわいい」


 家族を褒められてわたしは嬉しかったが、みんなに気を使わせ申し訳なかった。


 客観的に見て、ウチの家族見目がいいんだもの。

 父さま。明るい茶色の髪に翠の瞳。背は高く、顔が小さく体のバランスがいいからそうは見えないけど、体はしっかり筋肉がついている。端正な顔立ちをしていて鼻が高い。整っているため冷たい人のように見えたりするのだが、ふと目を和ませたり、口元に笑みを携えるとすっごく温かい。またそのギャップもいいと思う。

 母さま。プラチナブロンドの髪は長く、美しく結いあげている。涼やかな青い目は大きく、引き込まれそう。肌は白く、微かに色づいた頬と小さな唇が彩りを添えている。プロポーションも抜群で出ているところは出ているのに、ウエストは細い。普通にしていると〝美女〟だが、微笑むととてもかわいらしく見える。

 兄さま。母さまの遺伝子を受け継いだとしか思えない容姿。プラチナブロンドに青い目。髪がサラサラで真っ直ぐなので、そこが少し違うかも。母さまと双子、そしてわたしの髪は少し波うっている。少年ながら人を惹きつける何かを持っている。動作もどこかきれいで、王子さま役が似合いそうな印象。

 アラ兄。ミルキーブロンドの髪に薄い青い瞳。髪の分け目が右側。

 ロビ兄。キャラメルブロンドの髪に、やっぱり薄い青い瞳。髪の分け目が左側。ふたりはかわいらしさ満載の少年だ。ロビ兄の方がちょっとやんちゃ。

 みんな、キラキラしていて、輝いている。

 わたしは自分を見たことがない。だからわかるのは髪の色だけで、母さまよりもう少し金が強いプラチナブロンドだ。肩ぐらいまでの長さがある。フニフニと波うっている。瞳は父さまと同じ翠で、……家族とは似ていないらしい。いいけどねっ。


「無理しなくていい。わたし、自分、見たことない」


「え? 鏡見たことないの?」


「鏡、ない」


「鏡、見てみる?」


 ミニーに覗き込まれた。


「鏡、あるの?」


 ミニーは頷いて、部屋を出ていった。戻ってきたときには、手鏡を持っていた。

 手鏡を渡してくれる。


 ごくんと喉が鳴った。

 覚悟を決めてくるっと回転させて覗き込む。


 プラチナブロンドの髪を肩まで伸ばした幼い女の子がわたしをみつめ返す。

 父さまと同じ翠色の瞳は大きく、鼻は高くないが筋は通っている。小さい口もぷくんとしていて、頬もほんのり色づいていて。

 なんだ、普通にかわいいじゃん。

 そりゃ、ウチの家族みたいな、好みでないにしても誰もが認めざるを得ない美しさだったりかわいさ、かっこよさには絶対に届かないが、前世から比べたら、月とスッポンなんですけど。

 なんだよ、こまっしゃくれたとか、似てないとか言われたから、相当まずいのかと思っていたよ。


「お兄さんたちまではいかなくても、リディアもかわいいって」


「うんうん、かわいいよ」


 黙り込んだからがっかりしたと思ったのか、励ましてくれる。それはそれで微妙だ。


「兄さまたち、かわいい?」


 ありがとうと手鏡を返してから、水を向けると大喜びで話し始めた。


「すっごい、かっこいいよね!」

「王子さまみたいだよ」

「足が長くて顔がちっちゃい」

「正面はもちろん、横顔も斜めからも、どこから見てもかっこいいってなんなの?」

「双子も天使みたい」

「やんちゃ天使ね」

「笑った顔、かわいい」

「みんな優しいし」

「領主さまがかっこいいからだね」

「うん、すっごく、かっこいい」

「お母さんも、かわいいもん」

「うん、とってもきれいでかわいい」

「どっちに似ても絶対かっこよくてかわいいよね」


 褒める褒める。


「あ、リディアも、かわいいよ」

「うん、面白いし」


 だから無理して褒めなくてもいいよ。ん? 面白い?って何?

 もふさまが大きなあくびをしたので、背中を撫でた。


「フランツさま、マジでかっこ良すぎてヤバイよ」


 薄いピンクの夜着のチェリはふんふん頷きながら言う。


「なんで〝さま〟づけ?」


 疑問を口にすると、みんなで顔を合わせる。


「本当はリディアにも〝さま〟づけするよう言われてるの。ただ、本人が嫌がったらつけなくてもいいって。〝リディアさま〟がいい?」


 わたしは首を横に振った。


「じゃあ、今は、リディアって呼ぶからね。フランツさまたちは本人から言われたら、その呼び方にするから」


「わかった」


「なんにせよ、町で一番かっこ良かったのはヴァレリーだったから、リディア一家を見て、目から鱗よ」


「ヴァレリー、誰?」


「家が市場寄りだから、なかなか見ないかもね」


「17歳。ヴァレリーはマリーナに夢中よ」


 チェリが人差し指を立てた。


「マリーナ、誰?」


「牧場行ったことない? 奥だからね、モーモ飼ってるのよ。メーメとメーも」


 牛と羊と山羊か?


「行ったことない」


「チーズもおいしいよ。マリーナ姉は牧場の一人娘なの。17歳」


「マリーナ姉は器量もいいし、優しいから大人気で、ジルと、エドガーとヴァレリーが取り合っているの」


 チェリが憧れるように胸の前で手を組んだ。


「わたしが見たとこ、ジルに気持ちが傾いているかな?」


「嘘、あたしマリーナ姉にはエドガーが一番合っていると思う!」


 カトレアの見立てにマールが意見する。


「ヴァレリーは顔はいいけど、押しが弱いから」


 ヨムがそんなこと言うなんてと驚いて見てしまう。


「ジルは牧場やっていく柄じゃないよね?」


「でしょ。だからエドガーがいいと思うのよ」


 本人たちの意思関係なく外野で盛り上がる。しかも平均年齢、当人たちの半分以下だ。


「確かにエドガーなら動物の扱い慣れているしね。牧場で馬を増やすのもありかもね」


 カトレアがまとめた。


「あ、エドガー、馬屋の?」


「そう、アンダーさん家の長男よ」


 大きい村や小さい村に海のご馳走を届けてくれたのがアンダーさんのところの兄弟だ。頼もしく性格も良さそうだった。


「で、ヨムはヤスとどうなのよ?」


 チェリに急に話を振られて、ヨムの顔がカーッと赤くなった。


「どうもこうも……ただの幼馴染みよ」


「幼馴染みっていったら、この町の子みんな幼馴染みでしょ?」


 チェリは遠慮がない。


「もし、好きなら、早いとこ伝えておいた方がいいよ」


 そう言ったカトレアをみんなが見る。


「ヤスは大工の棟梁を目指すんじゃない? そのために10歳になったら見習いに入るでしょ。他の仕事と違って、大工は呼ばれたらその地に赴くわ。ヤスは人当たりがいいから、いいなって思う女の子は出てくると思うよ? すぐ告白する積極的な子もいるよ、絶対!」


 おーーー、なんか恋バナになってきた。


「うん、わたし大きい村に行った時、女の子がビリーとヤスに話しかけているの、見たよ」


「ビリーも男気があるからねー」


 とカトレアはマールの肩を叩く。


「な、何よ」


「マールのはバレバレだから」


 今度はマールが顔を赤くした。


「あたしの場合はっ。ビリーは好きな子がいるからさ」


 え? ビリーはマールとじゃないの? わたしがマールを見たのに気づいたようだ。


「リディアはおませね。うん、あたしは好きだよ。ビリーが。でもビリーは好きな子がいるの」


「ビリーだけじゃないよ。町のほとんどの男の子が好きだったよね、ペリーのこと」


「ペリー?」


「家が……税を払えなくて町から出て行ったんだ。すっごくかわいい子だった」


「性格もいいしね。大人しいけど、意思は強くて」


「ビリーが最初にリディアたちに突っかかったのは、ペリーのことが悔しくて、いないのが淋しくてまだ心の整理ができてなくて、あたるようなことを言ったんだと思う」


 そう言ったマールはとても大人っぽく見えた。


「チェリはどうなの? 好きな人いるの?」


 ヨムの逆襲だ。


「わたしはテンダーが好き。ついて回っているのに、馬が好きなんだなってぬかすのよ。鈍感すぎるわ」


 逆襲にならなかった。チェリはオープンな性格らしい。


「テンダーはエドガーの弟。13歳」


 ミニーが教えてくれた。そして続ける。


「あたしはカールが好き」


「「「「え?」」」」


 ミニーの告白にみんな驚く。わたしも驚いた。


「ミニー、もう好きな人いるの? え? カールのどこが好きなの?」


「優しい。のんびりしてそう。でも意思強い」


 ミニーは頬に手をやって、頬を赤らめた。

 ミニーのおませさんめ。


「カールね。うん、優しいね。行動力もあるしね」


 うんうん、チェリが頷く。


「で、カトレアは?」


 マールが聞いた。


「……教会に週一でくる見習さんがいるでしょ? ダドリーさん」


「! 30歳ぐらいだよね?」


「27よ!」


 間髪入れずに言った。歳を把握済み、本気だ。


「27なら結婚してるんじゃない?」


「それが結婚してないのよ」


「おじさんじゃん」


「おじさんじゃなくて、あれはシブいというの」


 シブ専だったか。


「リディアはまだ好きな人いないよね?」


 カトレアが明るい声を出す。


「ミニーはおしゃまなのよ。早く恋した方がいいってことでもないし」


「婚約者、いる」


「「「「「えーーーーーーーーーーー」」」」」


 大声だったので、みんな慌てて口を押さえる。


「あ、貴族だもんね。そっか」


「ああ、びっくりした!」


「相手は? 会ったことあるの?」


「うん」


「かっこいい?」


「うん、すっごく」


 みんながそう認めてたもんね。


「性格は?」


「優しい。賢い。強くて、なんでもできる」


「えー。じゃぁ、リディアはお嫁に行っちゃうの? 領地から出るの?」


「領地か、辺境か、どっちか思う」


「? ふーーん」


「でも、リディアに婚約者がいたのが、1番の今日の驚きだね」


「うん!」


 まぶたがくっつくまで話し倒して、夜は更けた。

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