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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
17章 わたしに何ができたかな?

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第844話 潜入⑧再生

「君なら、ドラゴンを助けられる」


 ゆっくりとフランツを見上げる。


「イザーク、トスカの魔力は戻っているね?」


 フランツはイザークに確かめた。


「……ああ。8分目ってところだけど」


 フランツがわたしに向き直る。


「君は光魔法の使い手だ」


「光魔法? わたしが? ……っていうか、なんでフランツがそんなこと知ってるの?」


「そのことはここを出てから話そう。君の光魔法でドラゴンを助けられる」


『手伝うから、マルシェドラゴンを助けて!』


 レオがわたしの肩に乗ってきた。

 あ。わたし、さっきいろいろ口走っていた。

 レオはドラゴン、魔物なのに。


「レオ、さっきはごめん。わたし酷いこと言って」


『驚いたこともあったけど、長老たちは知っていることかもな。まだ知らされていないだけで。リ……トスカは悪くないよ。それより、きっとそのことを知って、君は傷ついていっぱい悩んでいたんだね。記憶を失うぐらい……』


 それはわからないけど。

 レオの優しい気持ちが伝わってくる。優しい。魔物も、優しい。

 わたしはその想いにも応えたいと思った。

 フランツに尋ねる。


「光魔法ってどうやったら使えるの?」


「……光魔法の使い方は知らないけれど、魔法は、身体の中に流れる魔力を感じながら願うんだ」


 わたしは軽く頷く。


「レオ、マルシェドラゴンに翼はある?」


『ああ、ある』


 魔力の流れを感じるってのがいまいちわからないけど、やってみないと始まらない。

 欺瞞、傲慢、その通りだ。

 もし元気にすることができたとして、攻撃されたら全力で闘うだろう。矛盾してる。わかってる。

 でも、フランツが聞いてくれた。最初の気持ちはなんだって。

 人族の醜悪さも、神さまのルールも、種族の違いもどうだっていい。

 わたしは今、目の前のマルシェドラゴンに元気になってもらいたい。

 空に羽ばたいて欲しい。

 だから祈る。

 神さまには祈らない。

 自分の中の力に願う。

 わたしの中に流れる魔力に願う。

 お願い。マルシェドラゴンを助けて!

 赤いドラゴン。

 レオを大きくしたような、飛行恐竜型ドラゴンだろう。

 翼を広げたら、きっと空に映える。

 空を悠然と旋回するドラゴンを思い浮かべる。

 100年もの間、痛い思いをしてきた。

 誇り高きドラゴンが死を願うほどに。

 もう一度、空を飛んで欲しい。

 魔法を、それも光魔法を使えるのかわからないと思いながら、うまくいくんじゃないかという気がしていた。その根拠は謎だけど。

 赤いドラゴンのことだけを思っていると、わたしとドラゴンに細い何かが繋がっているのが見えた。

 ドラゴンは記憶をなくす前のわたしに〝加護〟を授けたと言った。

 これが、その加護?

 細いけど、赤いしなやかな繋がり。

 いける。

 確信に近くそう思う。

 手を組んで祈る。


 メキメキと形容し難い音が聞こえた。金属が地面に落ちたような音も。

 目を開けると、赤いドラゴンの胸に突き刺さっていた剣が軒並み落ちていた。

 傷の血が止まり、傷口が盛り上がり塞がっていく。

 口の短剣も吹っ飛んでいく。目を突いていた短剣も。

 でも、それだけじゃまだ足りない。

 四肢の再生。

 その時は、そんなことができるのかとか一切考えなかった。

 ただ、ドラゴンに元の姿で空を満喫して欲しかった。


「再生した……」


 ロサの茫然とした声。

 ホント? 本当に再生できた?


『そこまでにしろ。顔が真っ青だ。魔力の枯渇だろう』


 もふもふに止められたけど、首を左右に振る。

 ここで時間を置いたら、そこまでになる気がする。


『私の魔力を使ってくれ』


 レオの声。

 レオのぬいぐるみばりの柔らかい手がわたしの頬に当てられる。

 魔物だとか、そんなのはなんだっていい。

 わたしは目の前のドラゴンが元の姿に戻って欲しいだけ。

 わたしの中に何かが入ってくる。力強いレオの魔力なんだろう。

 レオも祈っているから。

 マルシェドラゴン頑張って。

 レオの力で少しだけ、息がしやすくなった。


「足は再生したぞ」


 アダムが教えてくれる。

 レオが魔力をくれたのに、まだ足りない。

 目が霞んでくる。

 マルシェドラゴンが目を開いていた。

 真っ黒の大きな目でわたしを見ているのを感じた。


『倒れるぞ、生命力を持っていかれる』


 もふもふが叫ぶように言った。


「まだ終わってない」


「オイラの魔力を使うでち」


 アオの柔らかいスポンジみたいな手も、わたしの頬を触る。

 優しい気がわたしの中に入り込んでくる。


「右手、再生」


 ロサの声。


『使っていいよ』

『使って』

『微力ながら』


 アリとクイとベアの声。

 元気のいい2つの気と、繊細な気。


「左手、再生」


 あとは翼。

 ぐらっとしたところを支えてくれたのは、多分フランツ。


「やり切って。支えるから」


 うん、と頷く。


「イザーク、魔力を人に送ったことがあるか?」


 早口のロサの問いかけに、イザークが答える。


「ない。それに人同士は危険かもしれない。特に君たちは〝神気〟を持つから、リ、トスカにはキツイはずだ。魔物とは大丈夫みたいだけど……」


『弱きものよ、もう良い。お前の方が倒れそうだ』


 ぶちぶちと杭が吹っ飛んでいる。

 滑らかに話せるようになってた。

 でも、翼がないと飛べない。

 帰る場所に行き着けない……。

 だからもうちょっと。


『友よ、我の力を貸そう』


 もふもふが、わたしのおでこに口を寄せる。

 凄まじい気が入ってきた。でも眩い光のような気だけど痛くもなんともない。わたしにスッと馴染み、そして力が漲ってくる。

 翼を。元の場所に帰り着き、そしてどこにでも自由にいける翼を!


 メリメリとすごい音がした。

 全ての杭が落ち、ドラゴンが一歩前に出た。

 ドラゴンが咆哮をあげる。

 壁の一部がボロボロと崩れ落ちる。


 お願い!

 翼を。ドラゴンが帰ることのできる翼を!

 全ての魔力を持っていかれた。

 もふもふからも、あんなにもらったのに。

 急に力が抜け。後ろのフランツが抱きかかえてくれる。


「……翼、再生」


 ロサが言い終わらないうちに、ドラゴンは大きな翼を広げた。

 わたしを支えてくれてるフランツ。その横にはもふもふと、もふもふぬいたち。

 その前にイザーク、そしてロサとアダム。最前線には、ガーシとシモーネ。

 ドラゴンから攻撃があったら守ろうとしてくれている。




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― 新着の感想 ―
レオ度量が大きい。高位の魔物でも初耳なのか。 フランツは何故助けられると断言出来たんだろ?ロサの反応的にも光魔法じゃ欠損は無理が常識っぽいのに。 リディアがこれまでにも光魔法を超えて再生させてたこと…
もふもふ軍団みんなの力も借りてマルシェドラゴンの再生も無事に成功。 フランツたちは警戒していますが治療中のセリフ的にも攻撃は無さそうですね。 マルシェドラゴンはもふさまたちのようについてくるようなら…
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