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プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
3章 弱さと強さと冬ごもり
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第84話 兄妹喧嘩と女子会④リンスと石鹸

「リディア、こっち来て。髪、梳いてあげる」


 ミニーがわたしの髪に櫛を入れる。人にやってもらうと気持ちいい。


「リディアの髪、ゆるふわだよね」


 チェリがほっぺにクッキーを入れて、リスみたいに膨らませながら言った。


「うん、きれいでいいなー」


 カトレアがわたしの髪に手を伸ばす。そして呻く。


「手触り、すっごくいい!」


 左右から手が伸びてくる。


「ほんとだー」


「気持ちいい!」


「羨ましい。あたしのごわごわだから、きつく編むしかできなくて」


「わたしも」


 マールが言うと、ヨムも自分のふわふわしたオレンジ色の髪を残念そうに触る。

 ふわふわに見えるので、ヨムの髪を触らせてもらうと、本当だ。カールしてるからふわふわに見えるけれど。ギシギシしている。マールのも触らせてもらうと、確かにゴワゴワだ。


 必要なものはタボさんの収納ポケットに全て入っている。いや、荷物のほとんどを入れているし、食糧なんかもどんどん入れている。


「わたし、リンスしてる。んー。簡単なるけど、やってみる?」


 見渡すと、みんな顔を輝かせた。


「ミニー、桶借りれる? 手拭い浸したい」


「わかった」


 ミニーは部屋からでて、驚くべきスピードで手に桶を持って戻ってきた。

 わたしは桶を受け取り、水魔法で水を注いだ。


「本当は、髪洗った後、これつけて、洗い流す。今、試し。リンス入れて、薄めた水に、手拭い入れる」


 わたしはバッグから出すフリをしてリンスと手拭いを取り出す。

 お水にリンスを少し入れて溶かし、手拭いを入れて浸して絞る。洗い流さないけど、毎日なわけじゃないし、少量馴染ませるぐらいなら変なことにならないだろう。


「ちょっと寒いかも。誰、やる?」


 ヨムが手をあげた。


「わたし、やってみたい」


 軽く絞った手拭いでヨムの髪を挟みリンス液をつける。


「寒くない?」


「大丈夫だよ」


 全体に馴染ませたつもりだけど。


「どう?」


 ヨムが自分の髪を触る。


「ギシギシしてない」


「ちょっと、ヨム、すっごい髪キレーだよ」


「うん、輝いてる」


 マールとカトレアが絶賛だ。


「なにこれ、すっごい!」


 チェリも目をますます大きくした。


「寒いかも、けど、濡れてるよくない。風で乾かす」


 ブオーっと一瞬風を出す。


「いや、天使!」


「ヨム、すっごいかわいい!」


「え?」


 大丈夫と言ったけれど、ちょっと寒かったのだろう。頬に赤みが差した。でもだから余計に色白に見え、ふわふわのオレンジの髪したヨムは最高にかわいかった。


「いいなー、リディア、あたしもやりたい」


「うん、いいよ」


 受け合うと、カトレアから待ったがかかった。


「リディア、このリンス高い物じゃないの? 大丈夫?」


「材料費かかる、けど、作った。また作ればいい。だから平気」


 保護剤の代わりになるものが、みつけられてないんだけどね。蜂の巣があるといいんだよな。蜜をとった後の巣を水につけおきした水が、ベストだった。

 その心配は心におさめ、みんなで交代しながら、髪を艶々にしていく。みんな上手に水分を含ませたぐらいに手拭いを絞り、髪にとんとんと馴染ませた。風魔法で乾かして、ミニーの櫛で髪を梳く。

 みんな手触りに満足したし、褒め称えあった。


「作るって言ったよね? 高い? あたし、お小遣い貯めて買いたい!」


 子供も欲しがるぐらいだ。これは売れるかも。


「家族、相談してから。で、いい?」


「そっか、そうだよね。うん、十分」


「わたしも買う」


「あたしも」


「わたしも」


『大人気だな』


 もふさまもリンスしてくれって言うもんね。やらなくてもフルって体を震わせればいつでもきれいなもふもふの姿になるのに。兄さまたちも使っているから、男女問わず欲しいものになるかもしれない。


「それにさ、リディア、いい匂いする」


 匂い?

 もふさまがわたしの匂いを嗅ぐ。そして首を傾げる。


「あたしも思った」


「爽やかな香り」


 爽やか?


「あ、多分、石鹸」


「石鹸? 香りのついた高いの使ってるの?」


 これは情報を流してもいいか。いちから石鹸作ってるわけでもないしね。


「使っているの、ミニーん家の。溶かして、いい香りのハーブ煮出して合わせて、固め直す、した」


 みんな目を見開く。


「なにそれ、すっごい」


「嘘、わたしも欲しい! ね、一緒に作らせて」


 チェリに手を取られたが、他のみんなも欲しそうだ。


「じゃ、今度川原でする? みんなで一個石鹸買って。固め直して、切って分ける」


「あ、それいい!」


 みんなで今度石鹸を固め直すことになった。


「リディアはいろんなこと知ってるのね、すごいわ」


「やっぱり、貴族だね!」


 チェリがふんふん頷いている。


「でも、貴族なら最初から高い石鹸買いそうだけど」


 ヨムが言って〝しまった〟という顔をしている。


「貴族、よく知らないけど、多分そう。うち、貧乏」


 なぜか静けさが舞い降りた。


「あ、そうだよね。領地が貧乏なんだもん。それを治める領主さまも貧乏だよね」


 みんな暗くなってしまった。


「違う。元から貧乏、ウチ」


 そう言うと、みんな吹き出した。


「そういえば、メイドさんとかいないね」


「うん。けど、執事とお料理する人、来てくれた」


「そうなんだ、よかったね!」


 うん、と頷く。


「領主さまたちには、町も村も本当に感謝しているのよ」


「感謝? ああ、レアワーム」


「それもだけど」


 カトレアが空色の夜着の上から胸に手をあてる。


「お肉をくれたり、保存食を教えてくれたり。海のもの、食べることができるなんて思ってなかったわ。それから今度の領主さまは話を聞いてくれるって大人が言ってた」


「大人が優しくなった。その時は気づいてなかったけど、余裕がなくなってたんだね、みんな」


 マールがしんみりと言った。


「リディアたち来てから、いいこといっぱい!」


 ミニーが抱きついてきた。


「大きくなったらいっぱい働くから!」


 マールが言う。


「うん、いっぱい働いて儲けるのよ」


 チェリが拳を握る。


「いっぱい働いて領地を豊かにするの。そしたら、リディアの家も貧乏じゃなくなるでしょ?」


 カトレアが言ってくれる。


「わたしも、領地豊か、したい!」


 同じ気持ちだったので嬉しくなった。

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