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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
17章 わたしに何ができたかな?

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第839話 潜入③失った記憶<前編>

 それに魔石と世界樹の葉ってところで……何か引っかかる。

 あ、読んだんだ! 聖霊石の作り方、そんな方法じゃなかった?

 ええと、500年以上生きたドラゴンの魔石を……。

 待って、今そんなこと思い出している場合じゃない。

 ここから一刻も早く脱出しなくちゃ。助けを求めなくちゃ。ここにいるって言わなくちゃ。


 あの弁護士が話していたのはユオブリア語だったけど、今騒がしくなり、わたしを探せと言い合っている声はフォルガード語だ。ここはツワイシプ大陸じゃなくて、エレイブ大陸なのかもしれない。ってことはもう1週間以上経ってるの? 大陸移動はそれくらい時間がかかるはずだ。そんなに眠らされていたの?

 でも爪がそこまで伸びてない。体も汚れていない気がするし、臭くもない。

 いや、臭いのは臭い。ってか、それはここの匂い?

 なんだろう、まとわりついてくるような嫌な匂い。

 もっと奥からしてくる。


 おお、プール? 広ーい。

 濁った水だ。だからどんなに暑くても、ここに入りたいとは思わないけど。

 ん? 下に沈んでいるのは魔石? 魔石でいっぱい。

 樽だけじゃ足りなくてプールに? 

 反対か。プールに入り切らなくて、樽でも漬けてる?

 でもこっちは葉っぱは入ってない。

 それにしても、組織はどれだけ魔石を持ってるわけ?

 これが玉にできる魔石なのかな? 他では流通していないから、きっとそうよね

 あ。世界樹の葉に漬け込んだり、これ、ひょっとして魔石に魔法を入れても壊れない玉にするために、耐久性アップしてるんじゃない?

 聖霊石も高位魔物の魔石に、手を加えて作れるんだもんね。

 そうだ、きっとそうだ!

 濁った水は排出されていて、あっちから流れてくるね。

 わたしは水が流れてくる方に歩いていく。

 その時、後ろの方から声がした。


「こんなところで隠れんぼか? ここに入り込んだのはわかっているんだ」

 

 弁護士の野郎っ。

 こっちに来たってバレたか。


 入り込んだのことはわかってしまったけど、まだ見つかったわけじゃない。

 だからあんな声がけをしているのだ……。

 わたしはさらに、水の流れてくる先である奥の小部屋に入り込む。

 血の匂い?

 むせ返りそうだ。匂いだけでなく、不快な気がまとわりついてくる。


 ふと視線をあげ、目の前に広がる光景を見た瞬間、自分の口を押さえた。

 壁一面……そこにはいろんな方向から剣を刺された、大きな赤い肉の塊がはりつけのようにされていた……。

 いや……肉の塊じゃない、これは……四肢を切り落とされた赤いドラゴンだ。

 壁に杭で打ち込まれている。杭の周りは赤黒い何かで覆われていた。

 そのおぞましい光景に動けない。


 そんな姿になっても、ドラゴンはかろうじて生きていた。

 時折する呼吸がゴーっという低い地鳴りのような音を立てる。

 両目にはナイフが突き刺さり、口も開かないよういくつもの剣で、上下(たが)ちがいに刺されている。

 そこから流れた血は赤黒く固まっていた。最近血を流したわけではないのが窺える。


 何箇所も何箇所も胸にも杭や剣が刺され、そこからわずかな血が流れていた。

 固まらせないためか壁の上から水を流していて、その血をわざわざプールへと流れ込ませている。

 首につけられている銀色の輪は、魔力封じや動けなくするための魔具か、それに準ずる何かだろう。

 生き血をこうして流させるために、このドラゴンは残酷に虫の息で生かされている。

 そう認識すれば、今度はあまりの非道さに、ガクガクと体が震えた。


『……何者だ? ……いつもと……違う気配……。迷い……込んだか。……お前……は人……か?』


 頭に声が響く。尋ねてきたのは目の前の、この赤い……ドラゴンだ。


「ひ、人族です」


 声がうわずった。


『頼み……が……あ……る』


「……頼み?」


『……我……をほふって……ほしい』


「! ……ま、魔力が戻ったら、あなたを開放します。そして傷を治します。だから……」


『我……は、こ……んな……姿に……なって……から……長……い……年月が……すぎた。……我は……疲れ……た。

 ……もし、……我が……力を再び……持て……た……ら、……我は……人族の……住処を……潰して……まわる……だろう……。

 ……今、……こうして……疲れ……ている……このまま……屠って……ほし……い』


 !


 心からの願いだと感じる。

 な、なんで、こんなひどいことができるの?

 確かにわたしも魔物を倒すけど、こんな残酷なことはしない。

 弱らせ、傷を追わせ、その血を流させたまま、生かしておくなんて。

 手がブルブルと震えた。


「ここにいましたか、リディア嬢」


 !


「はぁ、見ましたね。我ら組織の秘密を」


 憤る相手がいることで、わたしは動けたみたいだ。

 弁護人に向き直る。


「な、なんでこんなひどいことを?」


「ひどい? それは魔物ですよ? 瘴気を宿す魔物だ。瘴気を失くすために生まれた存在。せいぜい役にたってもらおうじゃないですか」


 !


「瘴気を失くすためっ?」


 小さく叫ぶような言い方になってしまった。


「これは失言でしたね。神の領域の話です。あなたみたいな小娘が知ることではありません」


 組織はなんで知ってるの?

 神の領域の話を。

 魔物が瘴気を減らすために生まれた存在だと。


「魔物と人族は相いれない存在ということはわかってるわ。でもだからって、こんな残酷な生かし方をするなんて、酷すぎる!」


「魔物が目の前にやってきたら屠るでしょう? それと同じじゃないですか」


「同じじゃないわ。こんな苦しめるためだけに生かしているなんて酷い」


「仕方ないじゃないですか。ドラゴンはなかなか人族が捕らえることはできません。

 でもドラゴンの生き血を魔石に吸わせないと、耐久性がよくならないのです」


 身体からだがまた勝手に震える。

 なんておぞましい。酷く残酷で勝手だ。


「ど、どこまで心が腐っているの? 球にできる魔石にするためにこんなことを?」


「瘴気を減らすために生まれた存在。死ぬのは同じことです。その前に少しだけ役にたってもらっているだけですよ」


「こんな犠牲の上でなりたつ石なんか、作らなければいい」


「これだから世の中を知らないお嬢ちゃんは」


 弁護士は呆れた笑みを浮かべる。


「このドラゴンはある王族が騎士に獲らせてきたものです。

 高位の魔物の生き血がないとできないんだと言ったらね」


 ……そんな。


「魔物を屠る者であるなら、同罪ですよ。命を奪うことには変わりないのだから。

 同じなのに他者を貶めて優位に立とうとしているだけ。自分の原罪を認めたくないだけ」


 それはどこか胸を打った。

 認めたくない胸を打った。

 確かに命を奪う括りでは、同じことなのだ。

 糾弾するには立場は五十歩百歩。


 弁護士はニヤッと笑う。


「心当たりがあるようですね?」



 

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― 新着の感想 ―
うわぁ……うわぁ……… 杭の周りの赤黒いものは何だろう? 魔石本の著者はドワーフだったけどあの知識はドワーフなら知ってるようなものだったのか、著者が魔石第一人者であれが唯一の本だったのかどっちだろう…
玉になる魔石の作り方は聖霊石と同じなんでしょうか。 そもそもあの本は魔使いが残した本だったはずなんですが彼らも同じ本を持っていたということなんですかね?
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