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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
17章 わたしに何ができたかな?

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第837話 潜入①魔石のありか

「泣いちゃ嫌でち」


『捨てないぞ。ずっと一緒にいるぞ』


 アオがわたしに向き直り、レオもアオの隣から身を乗り出して言う。

 肩に乗っているアリとクイもわたしの顔を覗き込み、ベアはわたしに体を寄せる。

 ちっちゃなもふもふたちが、慰めてくれてる。


「……トスカ」


 フランツがわたしの頬に手を添え、親指で涙を拭き取る。


「置いていくわけじゃないよ。君のことが大事だから、安全なところにいて欲しいだけだ」


「トスカ、君が捨てられたというのは、組織の奴らが作り出した嘘だ。君は捨てられてなんかいない、拐われたんだ」


 そう言われて気づく。わたしの怖かったことはそれだ。

 わたしはまた捨てられることが怖かったんだ。

 フランツがわたしを引き寄せ、おでこに唇を寄せた。

 え?


「心の傷になっちゃったんだね。……その代償は必ず奴らに払わせるから」


 フランツの声が暗く沈む。

 手で口を塞がれた。

 施設のドアがキーッという音とともに開く。


「ほら、なんにもいねーじゃんか」


「けどよ、音がしたんだ」


「この扉は音を通さねーぞ、音がしたなら、中からだったんじゃねーか?」


「搬入の時に獣でも入ったか?」


 ドアが閉まり、わたしの口を塞いだ手も離れた。


「ここに残すと、なにかあったらと不安が残る。一緒に連れて行った方がいい」


 イザークが声をひそめる。

 フランツはため息をついた。


「そうだな。このまま遅れると、あちらの班に迷惑をかけるし。

 トスカ、本当にもふもふと、もふもふ軍団と一緒にいるんだぞ。

 ガーシ、シモーネ、いいな?」


 チロリとガーシとシモーネに視線を送っている。

 わたしは何度も頷いた。


「みんな、リ……トスカを頼む。守ってくれ、お願いだ」


 フランツたちは、もふもふぬいたちのことも知ってたんだ。

 アダムは自分の犬じゃないって言ったけど、知り合いだったんじゃないか。


『当たり前!』


『ひとつも傷をつけさせない』


『そのためにいるんだ』


『心配ありませんよ』


「みんな任せろって言ってるでち」


 アオが通訳みたいな言い方をした。


「じゃあ、こっちから行くよ」


 イザークが歩き出す。

 もふもふは幾分か細身になり、でもわたしたちをのせたままだ。


『みんな我に乗ったままいろ』


 わたしは頷く。

 イザークの後をもふもふは追った。






 割と大きく壁が破壊されていて、そこを出入り口にしたっぽい。

 食料品の搬入員に化けて無事に中に入り、制圧班と魔石探し班に別れて行動。

 イザークがお遣いさまとわたしの魔力のオーラを感じると告げ、フランツとふたりで中から出てきたようだ。

 いくつかのドアがあり、部屋が立ち並んでいる。


 そのひとつにそっと入る。

 中は箱に埋め尽くされていて。それには全部魔石が入っている。


「魔石!」


 わたしが小さい声で驚くと、イザークは首を横に振る。


「これは普通の魔石だ」


 おお、イザーク便利!


「そっか。でも当たりだね。組織に必要なのは〝玉〟にできる魔石。にもかかわらず、普通の魔石がこれだけここにあるってことは、これをここで加工してるってことだ」


 フランツとイザークが頷く。


『変な匂いがするな』


 もふもふが眉を寄せている。

 もふもふぬいたちが、お腹を壊したような顔をしている。


「どうしたの?」


『ここに入ったらなんか変な感じがする』


『ざわざわする』


『ゾワゾワする』


『不快な気がまとわりつくようです』


「おいらもここの空気なんか嫌でち」


「アオ、みんなはなんと言ってるんだ?」


 ん?

 フランツはみんなの言っていることを教えてと、アオに頼んだ。

 アオはもふもふ、レオ、クイ、アリ、ベアの言ったことをフランツに教える。


「フランツはアオ以外の言葉が聞こえないの?」


 フランツとイザークは顔を見合わせている。


「その件は後で話そう。私たちはアオ以外の言葉は聞こえない」


 ………………。

 わたしが聞こえていることを〝おかしい〟と思っていない?

 知っていたみたいだ。なんで知っているの?


 フランツはキッパリそう言ってから、イザークと何かあるのは間違いないなと話し出した。

 ミミが話していた見張りがいたところ。そちらが怪しいのでそこに向かうことにした。一階の搬入口とは反対の方向と言っていた。


 ロサとアダムの班は最初に上にあがり、上から下へと制圧してくるそうだ。

 わたしとシモーネともふもふぬいは、もふもふに乗ったまま。ガーシはもふもふから降りた。廊下を歩いていく。


 フランツが腕を出して後続のわたしたちを止める。

 そして口の前に指をたて、「しーっ」のポーズ。

 イザークとガーシに向かって親指と人差し指、中指をパーにして残りを折って見せる。

 イザークとガーシは頷く。

 フランツはその手を振って合図をし、3秒後、いきなり走り出した。

 ゴス、シュッ、トシンと微かな音がした。


 中腰のフランツが手招きをする。

 フランツが抱きかかえていたのは大男だ。看守のような格好をしていた。ポケットの多い深緑のベストのようなものを着ている。

 見張りを、フランツがのしたようだ。


 フランツは男を壁にもたせかける。次の曲がり角から男が歩いてきて、わたしたちを視界に認め声をあげようとした。イザークが男の口を塞ぎ、首に腕をかけて力を入れ、男はダランとなる。


 もふもふの毛を強く掴んでしまったみたいだ。


「気を失わせただけだよ」


 後ろのシモーネが教えてくれる。

 そ、そうなんだ。


 イザークは魔法士というから、体術はからっきしかと思いきや、できる人やん。


 その奥でよほど見つかりたくないことをやっているのか、警備の見回りがひっきりなしだ。次から次へと来たが、ふたりは静かに気を失わせていく。


 この廊下の左右にもいくつもの部屋があったけど、そこは個人の部屋のようだった。

 その先には下へと続く階段がある。ずいぶん長細い施設だな。

 一列になり、階段を降りた。


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― 新着の感想 ―
イザーク、できる人やん。前世知識定番の肉弾戦苦手枠はルシオの方なのかな?この元ゲームの攻略対象みんな基礎スペック高そうにも見えるけど… フランツたちはトスカがもふもふ軍団の声が聞こえることに気付いて…
順調に進んでいますがこの先には一体何があるのか。 感じ的に瘴気と何かを組み合わせて使っているんでしょうか?
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