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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
17章 わたしに何ができたかな?

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第836話 置いてけぼり

 コホンと喉を整える。

 しまった、脱線してしまった。


「もふもふ、隠さないで。この子たちが話せるってことは、親分であるあなたも話せるのは当然よ」


 素知らぬふりをする、もふもふ。


「お遣いさま、神の御使いなんでしょう?」


『我は神の遣いではない!』


 しゃべった!

 もふもふはハッとしている。


「それじゃあ誰の遣いなの?」


『……聖なる方だ』


「ああ、聖霊王の遣いなのね」


 もふもふと、もふもふぬいたちに見られた。


「ねー、聖霊王のお遣いさま、お願い! わたしを〝蓮の葉〟に連れてって」


『主人さま、連れてってあげれば?』


『そうだよ、行こうよ』


 小さい方のアリクイ、アリとクイが後押ししてくれる。

 あれ、アリクイだからアリとクイなのかな?


「確かに置いてけぼり、かわいそうでち」


 水色のペンギン、アオがションボリとしている。

 置いてけぼりって言葉が、心にズンときた。

 そうだ。わたしがむきになって、〝蓮の葉〟に行きたいと思った理由。それは置いていかれるのが嫌だったんだ。

 背中を見せられると不安になる。

 だって……離れてしまったら、本当に次また会えるか……。


「もふもふ。中には入らないから! みんなが出てきたらすぐ無事って確認したいの。近くにいたいだけだから」


『そーだよ、置いてけぼりひどい』


『フランツにはフランツの考えがあるのです。危ないところに連れて行きたくないのですよ』


 大きめアリクイのベアが丁寧な口調で言った。


「それもわかるんだけど。わたし、置いて行かれるの、すっごく怖くて嫌みたい」


 ぬいたちはぐりんと一斉にもふもふを見上げる。


『『『『主人さま!』』』』』


「もふさま、願いを叶えてあげるでち!」


 アオはもふもふを〝もふさま〟と呼んだ。


「出世払いでお願い!」


『……出世払いとはなんだ?』


「大人になって働いたら、お礼にメーいっぱいごちそうする!」


 もふもふは、渋々言った。


『……近くまでだぞ』


「ありがとう」


 わたしはもふもふに抱きつく。

 窓を開けろと顎で指示され、わたしは窓を開ける。

 静謐な空気が流れ込んでくる。まだ地上が温められていないから、ムアっとした暑さがない。

 もふもふが大きくなりながら窓枠に足をかける。


『乗れ』


 わたしは椅子を壁につけて、そこからあがって、もふもふに乗り込む。

 みんなもピョーンと乗ってきた。


「トスカ、入るぞ」


 ガーシの声がして、ドアが開いた。

 目を見開いたのはシモーネとガーシだ。


「お待ちください!」


 ガーシが片膝をつく。


「トスカ、行かないでくれ」


 ふたりとも、心からわたしを心配してくれている。

 だけど……。


「ガーシ、ごめんなさい。施設の中には入らない。近くで見ているだけだから!」


「それでもし誰かが危ない目に遭っているのを見たらどうする? トスカは助けようとするだろう?」


 唇を噛み締めていた。

 もし見てしまったら、確かにじっとしていられないかもしれない。

 わたしは足でまいといだ。助けられる力量がないことは百も承知。

 だけど、何かしたくなってしまうだろう……。


「どうして安全なところで守られていてくれないんだ? そんなに難しいか?」


 正論だけに、うなだれるしかできない。


「はぁー」


 ガーシのすっごく重たいため息。


「でもそれでこそ、我らの姫。俺は護衛です。せめて、ご一緒させてください」


『……乗れ』


「トスカ、お遣いさまはなんと?」


 ?

 もふもふはもう話せないふりはやめて、喋っているのに。

 あれ、ガーシはもふもふの、頭に響いてくるような声が聞こえてないのかな?

 もふもふぬいたちも、アオ以外は、声が頭に響いてくる感じだ。


「……乗れって」


 ガーシは後ろのシモーネに合図をして、ふたりは後ろに乗り込んだ。



 

 もふもふは、明け始めた空へと駆け出した。飛ぶんじゃなくて、空中も自由自在に走っている。

 アリとクイはわたしの肩に乗り、アオはわたしのお腹に背を預ける。

 ベアはわたしの横にぴったり。レオはわたしの膝の上に乗ったり、進行方向の前に行ったり。

 なんかすっごい安心感があるなー。

 わたしの後ろはシモーネ、そのまた後ろがガーシだろう。


『主人さまー、みんなのいるところ、わかるのかー?』


 クイの問いかけにもふもふは答える。


『我でなくてもお前たちも探れよう。こんな明け方に大勢で動いているんだ』


『そっかー。誰って特定しなくても気配でいけるのか』


 へー、もふもふぬいたちも気配を探れたりするんだ。

 もふもふが聖なる御使いだとすると、もふもふぬいたちはなんなのかな? 御使いさまの弟子?


 林ぐらいのこんもりした木の向こうに佇む建物。

 鬱蒼とした茂みが、薄暗いのも手伝って、気味が悪く思える。

 もふもふは、茂みの中で腰をおろした。


『ここなら見えるだろう。フランツたちが出てきたら教える』


「ありがとう」


 わたしはもふもふの首に抱きついた。


『もう出てきたぞ』


 え?

 もう終わったのかな?


 思った瞬間、目の前に、唐突にイザークとフランツが現れたように思えた。


「どうしてここに?」


 フランツの声は低い。

 めっちゃ怒ってる感じ。


「も、もう終わったの?」


「これからだ」


 イザークが教えてくれる。


「お遣いさま、屋敷に戻ってください。ここは危険です」


 フランツがもふもふに請う。ガーシとシモーネを一瞥してる。


「お願い、ここに居させて」


「トスカ、聞き分けてくれ」


 小さな声なのに凄みがある。


「お願い、置いていかないで。背を向けないで。拾ったんなら、もう捨てないでよ」


 言ってるうちに、ボロボロと涙がこぼれた。感情が昂ったというより、キーワードで条件反射のように泣けてきた。


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― 新着の感想 ―
聖霊王、アウトワードかと思ってたけど今回は大丈夫だったね。もふもふ軍団優しい。 やっぱり「置いてけぼり」はアウトだよね。そりゃそうだよ。捨てられた情報と結びついて当然。 フランツは以前も自分が自分の…
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