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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
17章 わたしに何ができたかな?

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第829話 覚醒

「トスカ、ただ、聞いて欲しい。今のは多分、言葉か思いが君の過去に触れ、負荷がかかったんだと思います。だからなるべく早く、ユオブリアに行き、瘴気を取り除くことを勧めます」


 ルシオは真摯で誠実な瞳をしていた。

 わたしはそうかもしれないなと思って、ちゃんと頷いた。



 あ。


 わたしは顔を上げる。

 同じように何かを感じたようで、ルシオも上の方を見た。

 わたしは〝何か〟を感じた。それが何かはわからないけれど。


 ルシオが立ち上がる。椅子が倒れた。

 彼はそれを気にせず、天を見上げたまま胸の前で十字を切った。


「ルシオ?」


 イザークが気遣うように名を呼んだ。

 ルシオは胸の前で手を組み、天に向かい祈るようなポーズを続けた。


 そしてため息をついて、わたしたちに視線を合わせる。


「聖女さまが覚醒された」


 聖女さまが覚醒!?


「どういうことだ? 2年も早い!」


()()()()が〝終焉〟に関係があるということ、なんだろうな」


 仲間にだからか、ルシオの口調が砕けている。


 イザークがなぜかわたしに目を走らせた。

 なに? 終焉って恐ろしげな言葉だよね?


「そっちも、もうやってくるってことか?」


「それはわかりませんが……。でもそんなすぐには新たな力を使えないはずですし」


 イザークが頭に手をやっている。痛みがあるとでもいうように。


「……ふたりは聖女さまを知っているの?」


 わたしが不思議に思って尋ねると、イザークとルシオは静かに顔を見合わせた。


「聖女候補のアイリス嬢が聖女になると、僕たちは確信していました。その通り、アイリス嬢が聖女になられたので、特に伝えませんでした。イザークもそれで分かったのでしょう」


 へー、神官になると、そんなこともわかるんだ。


「終焉ってなんの話?」


 イザークたちは息をのむ。


「それは……トスカが瘴気を取り除いたら話す」


 今は教えてもらえないみたいだ。


「僕はこれからちょっと忙しくなりそうです。

 ユオブリアにもすぐに帰ることになりそうだ。その前にトスカに会えて良かった」


「わたしも。瘴気のことも、聖水もありがとう」


 ルシオはにっこり微笑み、ポケットから包み紙を出した。

 包み紙の中に何かを入れ、上で絞ってある。

 それを渡してくれた。


「甘いものは好きですか? 雪砂糖です」


 わたしはガサガサと包み紙を開いた。氷砂糖? 透き通ったような結晶の飴のように見える。

 ひとつつまんで口の中に。

 あっまーい。甘いのに、口の中がひんやりとする。


「あまーい。嬉しい!」


「それはよかった」


「ありがとう、ルシオ!」


 イザークにもひとつ食べるか尋ねたけど、彼は眉を寄せて断る。甘いの好きじゃないのかな?


「次はユオブリアで会いましょう」


 ルシオに手を出され、わたしは反射的にその手を握った。

 ルシオはその手を自分のおでこにつけた。


(あし)きものを払いたまえ。良きものは全てこの者の手に。神の使徒カルロが目の前のこの者に祝福を授ける」


 おおおおおおお、これが神官の祝福か。

 お布施とか払ってないのに、祝福してもらっちゃった。


 ルシオがわたしから手を離すと、イザークに帽子を被せられた。


「また馬車に入るまで、話さないようにな」


 わたしはウンウン頷く。


「ルシオ、聖女さまのこと、頼むぞ」


「……一足先に帰っているよ。そっちも気をつけて」


 短い会話を終わらせ、魔具を回収し、ルシオが先頭にたち、ドアを開けてくれる。そこでルシオは立ち去るわたしたちに深くお辞儀をして、わたしはイザークのエスコートで歩きだす。


 外に近づくにつれて、人とすれ違うようになってきた。

 外への扉が見えてきた時、わたしの前をゆっくり歩いていたおばあさんが転ぶ。

 驚いて、ひゃっと声が出てしまった。


 イザークがわたしをおばあさんから遠ざけるようにしながら、大丈夫ですか?と尋ねて手を貸す。

 おばあさんはその手を借りて立ち上がった。


「ありがとうございます」


 と何度も頭を下げる。


「優しいご子息とご令嬢に、神のご加護がありますように」


 そうわたしたちに向かって祈る。

 イザークと顔を合わせ、ではと歩き出しすれ違った時、おばあさんはわたしの手の中に何かを滑り込ませた。

 感じからいって紙だろう。


「スラプリコさま!」


 そのまま歩きかけて、イザークはヤベッと思ったみたいで止まった。

 架空のわたしたちの名前だった、かもしれない。

 イザークはゆっくりと振り返った。


「スラプリコさま、担当の神官は、失礼がなかったでしょうか?」


 少しお腹のでた中年の神官は、揉み手をしていた。


「ええ、とてもよくしていただきましたよ。お嬢さまも説教に胸を打たれたと言われて……」


 そう言って、ちらりとわたしを見る。

 わたしはにこりと笑ってみた。けれど、そうだ、ヴェールがあるから見えないね。

 でも話すなって言われているし。


 少し前でもお嬢さまとメイドさんが引き止められていた。なにやら神官と話し、そして令嬢はスカートを少しつまんで、挨拶をした。

 あー、貴族令嬢の挨拶だ。なんだっけ、そうカーテシー。


 わたしがそちらに気をとられている間も、イザークと神官は世間話をしていた。

 そしてやっと終わり、神官は胸の前で十字をきって、そして手を組んだ。

 あ、これはこちらも挨拶するのか?

 イザークも胸に手を当て頭を下げる。

 うっ。わたしは? お嬢さまという触れ込みだから、やっぱりカーテシー?

 えっと、スカートをつまんで、足を……。

 よし、ふらつかなかったし、なにも言われなかったぞ。

 わたしたちは神官に怪しまれることなく、教会から出られた。

 すぐにシモーネとガーシがわたしの警護に立った。


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覚醒そっちか。でもリディアが一年の時の話で多少差はあれど大体覚醒は2年後、世界終焉が5年後って言ってなかった?誘拐前が1年半後だったから少々早いけど覚醒時期はほぼ予定通りなんじゃ?最近の予知では終焉の…
タイトルでやっとかと思ったらアイリス嬢の方でしたか。 予定よりもかなり早い覚醒が良いことなのか差し迫ってのことなのか。 全てはユオブリアに着いてからですね。 それにしてもお嬢様=カーテシーという解像…
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