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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
17章 わたしに何ができたかな?

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第821話 笑うことを忘れた少女⑳恩返し

 方向転換を試みていると、そこに影がさした。

 鳥の影? いや、鳥よりずっと大きい〝何か〟な気がする。

 危険を察知すると吠えるはずのもふもふが、ただ上を見上げているので、わたしも空を見た。


 え? 人? 真っ白の翼のある、人?


 天使?と思わなかったのは、人型の容姿の部分が凹凸がはっきりしていて。つまり女性はボン・キュッ・ボン、で、男性は上半身は見事な逆三角形、絶対腹筋も6つに割れてるボディーのセクシーな男女たちだったからだ。

 わたしのイメージの天使は色っぽくないらしい。

 褐色の肌に、ドレッドヘアってやつだ。


 ロサとアダムがわたしたちの前へと、馬に乗ったまま移動してきた。

 降り立ったその人たちは羽をたたみ、すると翼は見えなくなった。

 その人たちがわたしに向かって頭を下げた。

 え? あれ、わたしじゃなくてもふもふに?


 すぐに頭を上げる。

 後ろから、色っぽい女性と、少し頼りなげに見える男性が進み出た。


「空から見えたのです。お困りに見えたので、おりてまいりました……」


「向こう側に渡りたいのではありませんか?」


 色っぽい女性はわたしを見て、優しい声で言った。

 わたしはどう答えていいかわからず、おろおろした。


「……その通りだが」


 ロサが代わりに答える。


「我らが運んでやろう」


 え?

 人はなぜ、ただ素直にありがとうと思えないんだろう。

 まずどうして?と思ってしまった。

 それはわたしだけではなかったようだ。


「どのように? それから、どうして助けてくれる?」


 わたしに問いかけた女性が、一瞬悲しそうな顔をした。

 頼りなさげな人も、言葉を探している感じ。

 ひとりが進み出てきた。運んでやろうと言った人だ。


「ポポ族は恩を忘れない。そこの者たちに、我らの同輩が世話になったと聞いた。だから我々はお前たちを助ける」


 フランツが咳払いをした。


「……フランツ、心当たりが?」


「すまない、ある」


 え、あるの?

 フランツの知り合いってこと?


 気弱な人が顔を上げた。


「エトワールさまに、お嬢さまのことを尋ねました。詳しくは教えていただけませんでしたが、なにやら複雑で、苦労されているような話ぶりでしたので、何か手伝えることがあればと思っておりました。

 こちらの大陸には同胞を訪ねてまいりました。空を散歩しておりましたら、皆さまが見えまして……ご無事でほっとしました」


 エトワールってあの新聞に出てた子供のことだ。

 ああ、そうか。彼女のお姉さんは拐われているんだものね。

 バッカスのことを暴いて子供を助けたそうだから、そうやって他にも誰かのために何かをしていたのかもしれない。それで、このポポ族のことも助けたことがあるのかもね。

 フランツがエトワールって子の仲間だと知っているから、そのポポ族に、わたしたちは手を差し伸べられている。


「秘術ゆえ目をつぶって欲しい」


 一番体の大きな、いかつい人が言った。

 馬は目を瞑らないと思うけど、いいのかな?

 そんな思いがちらりとよぎったけど、わたしは大人しく目を閉じた。

 少しして、もういいぞと声がした。

 目を開けると。

 嘘、動いた感じは全くなかったのに!

 谷を渡っていた。わたしたちがいたのは向こうの山だ。


「あ、ありがとう」


 わたしたちは個々にお礼を言った。

 いかつい人はにこりともしなかったが言った。


「先に世話になったのは我らだ。気をつけて行け」


 降り立った時と同じように、唐突に跳び立っていった。

 さっきの色っぽいお姉さんはわたしに手を振ってくれたので、わたしも手を振ってみた。


「……迂回せずに済んだな。ここを降りれば、すぐにフォルガードだ」


 ロサが嬉しそうに言う。


「どうやって移動したんだろう? ガーシ、動いたのわかった?」


「いや、なにもわからなかった」


 後ろに体を捻って聞いてみたけれど、ガーシもわからなかったみたい。驚きだ。

 秘術ってどんなのだったんだろう? すっごく気になる。



 山から山を渡ったけれど、フォルガード側の山にきただけだ。

 やっぱり急勾配を下りることになるのか。

 そりゃそうだよね、登ったら、下りることになる。それは鉄則だ。

 山の中腹あたりで、野宿することにしたようだ。

 まだ陽が落ちるまで時間はあるけど、わたしがヘロヘロになっていたので、休みをとってくれたのかもしれない。


 3人は狩りに行くと言って、わたしは馬のブラッシングを任された。

 わたしは感謝を込めてお馬さんたちの世話をした。

 ちょうどよく、低いところで二股に分かれている木があったので、そこまでお馬さんに来てもらい、わたしは二股のところに登って、お馬さんのブラッシングをした。

 最後にそのブラシでもふもふをブラッシングしてあげた。

 気持ちよさそうにしている。

 とても穏やかな時間だ。


 ガーシが火の調子を見ながら、腰の短剣に手を伸ばしたので、緊張した。

 けれど、茂みをがさがささせて出てきたのは、狐だった!

 尻尾が太いからか、けっこうな大きさに思える。


 え? もう1匹、2匹、3匹??

 兄弟?

 ええええええっ?

 一家総出? いや、親戚一同だね。

 30匹はいるんじゃない?

 のそのそ近づいてきて、わたしの前に何かを置いた。

 果物? 果物? ネズミ? 魚?? 果物? 木の実? 蛇??????

 な、なんで?

 狐たちはお供えでもするように、わたしの前に獲物を置いて、そしてまた茂みの中へと帰っていってしまった。


「な、な、何?」


 ガーシも、もふもふも、この珍事を驚いてないよね?


「ハハ、トスカは動物にモテるな。貢ぎ物じゃねーか? もらっといけばいい」


 貢ぎ物って……。


「こりゃ、七色蛇じゃねーか。スッゲー高値がつくぞ」


 え、この蛇が?

 ネズミと蛇は勘弁と思ったけど……。

 フランツの収納袋に入れてもらえないか頼んでみよう。街で売る!

 わたしは高値がつくと聞いて、ゲンキンにも〝お蛇さま〟と思った。

 わたしは立ち上がり、茂みに向かって大きな声でお礼を言う。


「ありがとう。いただくね!」


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― 新着の感想 ―
ポポ族もシュシュ族も初手で久しぶりって言ってこないけど記憶喪失なことも知らんぷりすることも聞いてるのかな? ポポ族兄妹ってエリンと知り合いだっけ?そういえばアラン達上双子は今何をしてるんだろう? 記…
ポポ族とシュシュ族がこの機とばかりに恩返しに。 人だけではなく他の種族との繋がりを得ていたリディアならではですね。
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