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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
17章 わたしに何ができたかな?

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第820話 笑うことを忘れた少女⑲それぞれの優しさ

 フランツの作ってくれた野外料理はおいしかった。

 わたしが気に入っているからだろう、収納袋からおにぎりも出してくれて。

 青菜を混ぜ込んだものや、肉味噌が中に仕込んであるもの。

 どれもそれぞれおいしい!

 わたしは3つもいただいて、お腹がいっぱいだ。


 火の番を立て、交代で眠る。〝見張り〟と言わないのは、わたしを気遣ってくれているんだと思う。

 わたしは体力がないので免除とのことだ。

〝被害者の子供扱いしない〟と言っていたけど、めちゃくちゃ優遇されているし、気を使ってもらっている。

 その優しさに包まれ、もふもふに抱きついて、いの一番に寝てしまった。


 朝、目が覚めると、フランツがスープを作っているところだったので、手伝った。

 メニューは、スープに茹で卵と、炙り肉だ。

 もふもふにはお肉山盛りが用意されていた。

 大きなお皿に山積みになっていたのが、あっという間に空になる。

 昨日の夜もいっぱい食べていたけど、不規則だったからだと思ってた。

 夜あんなに食べたのに、朝もこんなに食べられるんだ……。


「もふもふ、そんなに食べられるんだね。それじゃあ、今まで足りなかったでしょう? ごめんね」


 もふもふのご飯代、頑張って稼がないとだ。



 最初からわかっていたけれど、3人もガーシもとてもいい人だった。

 前から知っている人みたいに、何を思っているかわかる時がある。気を配ってもらっていることも手伝って、5人の旅はとても楽で快適だった。


 街に入って宿屋に泊まるより、野宿の方が楽しい。

 森の中に入ると、もふもふは獲物を見つけ、それをみんなで仕留める。わたしもちょっとだけ貢献している。

 そのお肉はご飯にもなるし、多く取れたものは、街に行った時に売った。もふもふが見つけたものということで、そのお肉のお金や、素材として買ってもらえた代金はわたしが貰えた。

 もふもふはとてもしっかりしているから、自分の食い扶持は自分でなんとかできそうだけど、街に長くいたらお肉はとれない。そんな時は買わなくちゃいけないから、お金を貰えるのはとてもありがたかった。


 休憩中にもふもふを撫でる。

 ガーシは川で足を洗っている。今日は少し涼しいのに。冷たくないのかな?

 馬に水をやっていたロサが、こちらに歩いてきた。


「トスカ、君はもう少し人に頼ればいいのに」


 ?

 馬も乗せてもらっているし、なんだかんだかかるお金は、今まで全部出してもらっている。


「……十分頼ってるよ?」


 わたしが答えると、ロサは静かに笑う。

 笑う要素あった?


「あ、ごめんごめん。君がそう答えるだろうと思っていたら、そのままのことを言うから」


「ロサもか」


「え?」


「わたしも、みんなの言いそうなことがわかる時があるんだ。前から知ってる人みたいにさ」


「……そうなの? それは嬉しいなぁ」


 なぜだかロサは、本当に嬉しそうにした。


「情報料、やっぱりもらい過ぎな気がするんだけど、よかったの?」


「なかなか得ることのできない情報だよ。相応のものだ。それにしても……」


 ロサは再びクスッと笑う。


「なに?」


「いや、ね。君が情報料が多いんじゃないかと、きっと気にするって言ってたから、さすがと思ってね」


 え、わたしが気にするって、わかってたってこと?


「それにね、君は食事をする時に代金を出そうとするだろうし、収入がないわけだからきっと困ると、情報料を早く渡そうって言われたんだ」


 わたしは驚いてロサを見上げた。


「そうだったんだ。……実際、とても助かる」


「君のこと、私以上に本当によくわかるんだな、フランツは」


「フランツが?」


「? ああ」


 フランツが、そう言ってくれたんだ……。

 そんな気配りをするのはアダムかな?と思ったから意外だ。


 フランツもいい人なのは確かだけど、いつもこう、睨まれている感じでさ。

 睨んでなかったのかな? 嫌われてはないと思うけど、フランツはきっちりした人だから、わたしの大雑把なところがカンに触るのかなと思っていた。

 それでわたしのやることなすことチェックしていて、冷たい目で見ているのかと。でも、そっか。フランツが言ってくれたんだ。


 必要経費からと、いつも食事代なんかもロサたちが払ってくれている。

 もらった情報料のおかげで、いざという時に支払えると思うから平然としていられるわけで。一文無しでただただご馳走になっていたら、毎日がいたたまれないと思う。

 そんなわたしの気持ちまで汲んでくれてたんだ……。


「トスカ」


 フランツのことを考えていた時に、本人に呼びかけられどきっとする。

 目の前に突き出されたのは、カーディガン?

 思わず受け取ってしまったけど。驚くほど上等な素材のものだ。薄いレモンイエローで、お花の刺繍がついている。


「今日は少し涼しいから着て。私の家族のものだ」


「え、いいの? ずいぶん上等なものだけど」


「ああ。風邪ひかないように、気をつけて」


「ありがとう」


 実は今日は風が冷たいなと思っていたんだ。

 でもローブに包まるのは暑くなりすぎそうだしと、躊躇っていた。

 カーディガンに袖を通すとピッタリサイズだ。

 それを見て満足そうに頷き、背を向ける。


 ……みんな違った優しさを持っている。

 わたしはこの出会いを、少しばかり神さまに感謝した。


 襲撃に遭うこともなく、順調にフォルガードに近づいていた。

 この山を越えれば!

 勾配のあるところを馬に乗って登っていくのは、けっこう怖い。どうしても力が入ってしまい、それがガーシにも伝わりやりにくそうだし、お馬さんもそんなわたしに反応している。もふもふだけは、あくびして寛いでいるけど。

 先頭を走っていたアダムが馬を止めた。


「迂回するしかなさそうだ」


 後ろのわたしたちに告げる。

 ん?

 うわっ。

 吊り橋が真ん中らへんで、切れて落ちていた。

 はるか下には川が流れている。

 なんてことだ。

 うわっ、迂回ってどこまで戻るんだろう?

 登りも怖いのに、またこの急勾配を下りるの?

 迂回といっても山を超えるのは変わらないだろうから、また急勾配を登るんだろうな。

 大変なのはお馬さんと、ガーシだけど。

 乗せてもらっているだけのわたしだけど、これには脱力してげんなりした。


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― 新着の感想 ―
ガーシ、綺麗好き? 兄として同じ家で暮らしてたんだから一緒にいた時間も違うしそこは気にしなくて良いと思うよロサ(笑) フランツは誤解が早めに解けて良かったねぇ…チェックの目つきが険しすぎたか… 橋…
心配で見ているだけなのに睨まれていると勘違いされているフランツが不憫… 最後、なんだかバッカスが先回りしてそうですね。
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