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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
16章 ゴールデン・ロード

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第785話 急病⑦瘴気使い

 陛下は声に圧をのせている。

 ナムル氏は微かに顔をあげた。


「私と歓談されている時は、特に変わったところはありませんでした」


 陛下に対してもわりと堂々としている。


「……そうか」


「公子のお召し物は、セイン国のものとは違いますね?」


 兄さまが尋ねた。


「今は亡き国の衣装だそうよ。その国はとても文明が進んでいたのですって」


「なんという国ですか?」


 アダムが尋ねる。

 ナムル公子は、仕方ないといいたげに笑う。


「グレナンですよ。シュタイン嬢、嵌めましたね?」


「はめる? ホアータさまのおっしゃることは、いつもよくわかりませんわ」


 ナムル公子はフーと息を吐いた。


「グレナンの文明が素晴らしいのは、少しかじれば皆さまわかると思います」


「そうですね。要はその素晴らしい文明の使い道を間違える方がいるのが、問題ですからね?」


 兄さまはにっこりと笑う。


「グレナンかぶれではありますが、……私でよければ、殿下の様子を診ましょうか?」


 ナムル公子は余裕のある顔で言った。


「そうか? それでは頼む」


 陛下はあっさり頼んだ。え? 頼むの?

 ロサは本当は元気なのに?




 陛下についてゾロゾロとロサの部屋に向かった。

 陛下がロサに声をかける。

 朦朧としている感じなようだ。

 頬、いや顔全体を赤くしている。


「皆、ありがとう。公子も、ありがとう」


 弱々しい声。演技だとしても胸をつかれた。

 魔力の動きがあったら、わかるであろう陛下。

 瘴気が動いたらわかるであろうトルマリンさんは、きっとこの部屋のどこかにいる。


「ブレド殿下、私は薬師でもあります。殿下のお体を診させてもらってもいいですか?」


 ロサは微かに陛下に目をやり、頷く。


「お願い、します」


 お芝居だとわかっているのに、その弱々しさは不安になる。

 ナムル公子はロサの額の上に手を翳す。

 その手を顔に、胸にと動かした。

 微かに首を傾げる。


「殿下、お辛いでしょうが、舌を出していただけますか?」


 ここからだと見えないけれど、多分ロサは舌を出して見せている。


「ありがとうございます」


 公子はロサの体に沿って手を翳していく。

 途中で手を止めて、こちらを振り返るからビビる。

 何さ。

 兄さまが気づいて、わたしの手をギュッと握ってくれた。


「……不調はないように見受けられます」


 陛下がため息を落とす。


「医師たちと同じ見解だな」


「……確かユオブリアの王宮には呪術師がいたんでしたね」


 公子はそう言いながらわたしを見た。その目がどこかうつろに見えて、わたしはびくりとする。


「私は元から嵌められていたんですね」


 そう俯いたと思ったら、笑い出した。

 兄さまに抱えこまれ、アダムがわたしたちの前に出る。


「陛下、申し訳ありません。どこも悪いところがない殿下を私は治すことはできません」


「公子、ブレドに何をした?」


 陛下は圧のある声で聞いた。


「きっかけになっていただこうと思いました」


「きっかけ?」


「私とユオブリアを繋ぐきっかけです。あの日シュタイン嬢が風邪をひかなければ、殿下こそ風邪を引いただけで済んだのです」


「何をしたのだ?」


「わかっておられるのでしょう? 私はユオブリアを甘く見ていたようだ」


 そう言って大きなため息をついた。


「2、3日であっても瘴気を取り込むようにしたんです、体への負担は大きかったようです。殿下、謝ります。申し訳ありませんでした。すぐに引き取るつもりだったんですよ」


 認めた!

 陛下をはじめ、人がこんなにいる状況で。

 ましてや国の王子に害あることをしたんだ。罰を受けることなのに。

 逃げられないと思ってこんな堂々と告白を?


「これは詫びです。私は敵ではありません。ユオブリアが警戒するべきはカザエルです。ホアータ家の人々は私と全く無関係ですが、責任を追及してくださって構いません。彼らは私と縁を切れることを喜ぶでしょう」


 違和感。だって公子は一族という言葉を使った。

 公子の言っていた一族は、ホアータ一族とまた違う?


 え?

 黒いモヤ?

 護衛たちが一斉に動く。

 モヤ……これ瘴気。一気に気持ち悪くなる。


 どこからか伸びた手に引っ張られる。

 もふさまが吠えた。

 呻き声。ナムル公子?


 モヤが晴れる。

 トルマリンさんが見えた。手を組んで何かを唱えていた。

 キンと冷えた高い音がしている。

 トルマリンさんが払ったんだ。


 ナムル公子は驚いたようにトルマリンさんを見ている。手を押さえていた。血が出ている。もふさまに噛まれたってこと?

 わたしを引っ張ったのは彼?


「陛下、御前で失礼します!」


 兄さまが言って、手を突き出す。

 光が動いたように見えた。兄さまの手から光が飛び出して、ナムル公子の胸を突いた。衝撃を受けたように、2、3歩後退する。


「陛下、御前失礼します」


 アダムが言って、やはり公子に向かって手を突き出した。

 光の縄みたいのが公子をぐるぐる巻きにする。

 公子は身動きが取れない。


「ブレドに術をかけ害をなしたナムル・ホアータを捕縛せよ」


 陛下の声に、衛兵が公子に群がる。

 その様子を見ていると公子と目があった。ニヤッと嗤った。


「君は自ら私に会いに来るよ。またね、リディア」


 公子は引っ立てられる。

 わたしは慌てて手袋を外して、公子に触れる人はこの手袋をつけてとアダムにお願いする。


 聖水。

 聖水を出して、口に含む。密度の濃い瘴気だった。


『リディア、大丈夫か?』


「もふさま、ありがとう」


 廊下から派手な音がした。

 振り返れば、衛兵が駆け込んでくる。


「ナムル、ホアータに逃げられました!」


 廊下に出ると、アダムがうずくまっていた。


「アダム!」


「……大丈夫だ」


「何があった?」


 陛下が恐ろしい声を上げる。


「廊下にでた途端、あの黒い……先ほどより大量のモヤを出し、窓に体当たりし逃げました」


 ここ3階。割れた窓に近寄ろうとしたら、兄さまに引き戻される。

 ロビ兄が窓から下を覗き込んだけど、振り返り、首を左右に振った。



 アダムを支えてロサの部屋に戻り、光魔法で治療をする。

 その間、どんどん報告が届く。

 すぐに城門は閉めたし、ナムル・ホアータの捕縛は最優先されたけれど、彼が捕まることはなかった。騎士たちが奔走し、各領地で検問もしたがナムル・ホアータは逃げおおせている。


 セイン国、そしてホアータ家への厳重注意が飛び、セインからはミッナイト王子の迎えがきて引き上げて行った。ホアータでは、養子であったナムルをとは縁を切ったし、もし見かけたら捕まえる。匿ったりしないと言っているそうだ。そして命だけはお助けをといって、早々に爵位を返上した。

 




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― 新着の感想 ―
王族を害するつもりがあったのに、厳重注意で済むのかなと疑問。戦争レベルでもおかしくないかと思います。
ロサ毎度演技力高くて面白い。激昂系から弱々しい系までイケるのか(笑) ナムルも切羽詰まってるのかな?虚ろな目とか何か事情がありそうで気になりますね。 フランツとアダムは光魔法じゃないんだろうけど何の…
ナムルの力はホアータ家とか関係なく彼個人のものなんでしょうか? トルマリンが抑え込んだりと最大出力は大きいけど精度が甘い感じなんですかね。
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