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プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
3章 弱さと強さと冬ごもり
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第76話 ケリーナダンジョン①魔石と果物

 今日はみんなでダンジョンに行くことになりました! 

 父さまが兄さまたちの勇姿を見たいんだって。でも、なんとなく別に理由がある気がした。ただ、家にいたくないような。わたしはダンジョンに興味があったので行くことにした。土人形で身を守れると信用されたのか止められなかったよ。

 みんなといっても、母さまとアルノルトさんとピドリナさんはお留守番だ。父さまはアルノルトさんに母さまを任せるとお願いした。〝多少家が壊れるぐらいは何でもない、お前たちに怪我がなければ〟と言っていた。

 何、そのフラグたっぷりの台詞はと思ったけど、考えてもきっとわからないだろうと思い、聞かなかったことにした。


 昨日行った海辺の町ゲルンの近くに、町中にダンジョンがあるケリーナという町があるそうだ。地下に潜っていくタイプではなく、塔の形で登っていくダンジョンなんだって。初心者の冒険者のパーティが編成に慣れるためによく使われるところらしい。


 最初は別段気にならなかったみたいだけど、魔物がウヨウヨいると聞いたら、もふさまが俄然張り切り出した。父さまは町で馬車を借りていくつもりだったみたいだけど、もふさまがまどろっこしいと、自分が空を駆ると言った。そしてわたしたちも、一度これを体験してしまうと、速さと快適さに抗えなくなっている。

 初心者オススメダンジョンなので、もふさまには手応えが足りないかもとは念を押しておいた。



 ケリーナの町はイダボアと同じぐらいの規模だった。ダンジョンがあるためか、冒険者スタイルの武装した人が多い。ただ治安はいいようで、抑えた赤の点は数えるほどしかなかった。

 さすがにわたしほど小さい子はダンジョンへと入る列にはいなかったが、シヴァに抱えられているからか、何も言われなかった。

 門番さんがいて、チェックらしいものがある。といってもカードを見せたりはしない。ほとんどのダンジョンはレベルが設けられていて、そのレベルに達していないと入らせてもらえないそうだけどね。


「ずいぶん小さいのも一緒だね」


 ダンジョンの係りの人に言われる。


「ひとりで置いておくわけにもいかないしね」


 と父さまがいうと、彼は頷いた。


「ちげぇねぇ。けど、あくまでダンジョンだ。気をつけてくれよ。1階だけなら子供だけでも入るからいいけどな」


 このダンジョンの1階は、野菜やお花があるだけらしく、子供たちも入るのだとか。だから、ノーチェックなのかもしれない。


 塔の中に入ったのに、そこは草原のようなところだった。

 もふさまの尻尾がパタンパタンと地面を叩く。

 もふさまに頼まれて、トパーズ色の魔石にみんなの指をのせてもらう。


『わかるか?』


「おお!」


 父さま、感動している。

 本当だ、子供たちが野菜を収穫していた。お花を抱えたお嬢さんもいる。冒険者たちはさっさと上へと続く階段を登っている。

 わたしたちも母さまとピドリナさんへのお土産にいくつかのお花をいただいてから階段を登った。



 2階も草原のようなフィールドだった。

 猫サイズのネズミのような生き物が走っている。

 あちこちに小さな魔物はいて、冒険者たちがあしらっていた。


「父さまに、お前たちの力を見せてくれ」


 ウキウキした声だ。双子も兄さまも短剣をすちゃっと手に取る。

 わたしは戦う気はない。土人形は使うかもしれないが。

 今日は鑑定を慣らすためと、ダンジョンを知るためだ。辺境伯に、辺境のナンバー2と、ナンバー3になれる実力を持った父さま。そして圧倒的に強いもふさま。この布陣でダンジョンに臨めるなんて、なんて恵まれたことだろう。

 そうです。危険を避け、気持ち悪いことや怖いことは全部丸任せで、ダンジョンを攻略できる機会なのですよ。ふふふ。


 お子様組3人は今日は剣でいけるところはなるべく剣でと目標を掲げていた。

 走ってきたネズミにアラ兄が剣を振るう。

 短剣だもん、距離が近くないと届かない。魔物に近づくなんて絶対やだよ、わたしは。


 アラ兄の剣で傷をおった魔物は歯肉を見せて威嚇する。

 それをロビ兄が切り捨てた。

 動かなくなったそれは、やがてグレーの煙みたいになって消えた。小さな丸っこいグレイの石が残った。おおおおおーーーーー、消えた。これがダンジョン!


『それが魔石だ』


 へー、ただの石にしか見えないね。

 ロビ兄が拾って、アラ兄の手をひく。そしてふたり揃ってシヴァに抱っこされたわたしの前にきた。


「はい」


 ん?


「リーにあげる」


「……ありがと」


 ふたりは顔を見合わせにっこり笑うと、また走って魔物を探し出す。

 と、兄さまがやってきて


「はい、リディー」


 こっちは黄色の魔石? わたしに押し付けるようにするから、もらうことにする。


「ありがと」


 兄さまも笑ってまた戻っていく。

 もふさまがやってきた。


『やる』


 白や黄色や黒やオレンジっぽいバラエティーにとんだ魔石たち。


「あ、ありがと」


 わたしは黒い布袋に入れた。

 母さまに見本として作ってもらった、ダンジョンからドロップするはずの収納箱の袋だ。ただ普通に縫ってるからね。人工ものって感じがする。あたりまえだけど。


「お嬢、大人気ですね」


 シヴァが微笑む。

 父さまとおじいさまは兄さまたちの剣捌きを指導したりなんだりしている。

 兄さまたちの動きは合格のようだ。上の階に上がるほどに魔物の強さは強くなる。ウォーミングアップは十分とばかりに階段を探している。

 階段があったので3階に登る。森の中のようだった。


『下の階よりは格段に強くなっているから、気をつけろ』


 もふさまの注意が飛ぶ。


「りんご!」


「ああ、リンゴンですね」


 小さい村のものよりもビッグサイズで赤く熟れている。


「シヴァ、おりる」


 おろしてもらって、バッグから布をだし広げる。できるかなと思いながらその布をちょっとだけ浮かせる。5センチくらい。おお、できた。それを保ったまま、今度は果実をみのらせた木を風魔法で揺する。

 リンゴンが落ちて、浮いた布が受け止めた。成功。傷もつかないね。果実は黒い袋に入れていく。

 そうやってリンゴンの木を丸裸にし、隣の桃の木で桃をいただき、梨も山盛りいただいた。

 シヴァが腕を組んで、感心していた。


 ふとみんなの方を見れば、ライオンサイズの4つ足の獣と戦っている。

 わたしは肩をすくめた。怖い怖い。


「お嬢!」


 シヴァに呼ばれて振り向くと、カンガルーみたいな獣がわたしの前にいた。凶悪そうな顔をしている。

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