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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
16章 ゴールデン・ロード

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第736話 眠れる獅子⑤提案

 クイの雷で、大きな黒い毛並みのクマもどきが真っ黒に焦げて、プスプスいっている。


「おおー、階段だ! これで107階クリアだな!」


 ロビ兄は嬉しそう。空っぽダンジョン107階クリア。

 攻略して次の階へと道が開けるのは、達成感もあり、やはり気持ちいい。

 心は逸るが、焦りは禁物だ。


「そろそろお昼にしよう」


「そうだな、この階でお昼にして、食べ終わったら108階に下がろう」


 アラ兄が告げたスケジュールに、みんなが頷く。

 ダンジョンの中は階ごとにテイストが違う。フィールドによって暑さも違った。80階以降は概ね涼しいフィールドが続いた。

 今いる107階もひんやりした森フィールドで、今が夏とは信じられない。


『クマ、金塊だった』


 つまらなさそうにクイが言って、わたしに戦利品を持ってくる。


「でかっ!」


 思わず品性のかけらもなく、叫んでしまった。


『一撃だったからだな』


 レオが価値あるドロップ品の理由を推測する。

 もふもふ軍団&もふさまは、ドロップ品がお肉の時だけテンションは上がるけど、あとはそれほどでもない。

 金塊を収納ポケットにしまう。


 セーフティースペースでお弁当を広げることにする。

 今日はお肉のお寿司だ。すし飯にお肉と薬味を乗せて握っている。

 それからスティックにした野菜サラダ。こちらは甘じょっぱいから辛いまで各種ディップを用意している。

 甘い卵焼きに、角煮と花巻。キャベツとニンジのスープ。

 家族のみなので、料理ごとにお皿に入れて、各自好きなだけ取り分けるスタイルだ。


 エリンとノエルはひと月の謹慎を言い渡され、課題がそれぞれに出ている。だからダンジョンにも来ていない。

 かわいそうだけど、仕方ない。

 あの日、やっぱりエリンとノエルは怪しげな商人について行ったのだ。

 領地に入れたから犯罪歴はない。見た目は商人風。魔力も自分たちの方があるとわかる。それにここは領地。ハウスさんの名を呼べば、すぐに助けてもらえる。

 商人風の男たちは、わたしが手を離せない状況で、ふたりを呼んできてと言われたと言った。手が離せない状況でも、わたしが双子を呼ぶ方法はいくつもある。

 伝達魔法、それから、もふさまだったり、もふもふ軍団だったり。ハウスさんの気が行き渡っているので、ハウスさんを通してそれぞれの仮想補佐を頼る手もある。

 でもそんなことをしなくても、領地の誰かに、「エリンとノエルを見なかった?」とでも尋ねれば、瞬く間に伝言ゲームのように伝わって、探していることが伝わるし、どこにいるかもすぐにわかる。わたしたちは領主の子供なので顔が知れているし、みんな協力的だ。

 だからエリンとノエルも、領地民でもない人からそんなことを言われて、すぐにおかしなことだとわかった。

 だから余計に何を企んでいるんだろう?と好奇心でついて行ったようだ。

 これについては、自分の力を過信する現れであり、結果眠らされていたのだから、起こりえたいろいろなことを父さまから説かれた。今度ばかりは反省したと思う。ダンジョン攻略に参加できなくても、駄々をこねずに、大人しくしているのから。


「ドナイ侯のこと、計画立てたのか?」


 ロビ兄に尋ねられた。


「うーうん、まだ。今、情報を集めているとこ」


 情報が集まるのをただ待つのもアレなんで、素材集めのため空っぽダンジョンを訪れた。

 午前中はもふもふ軍団に分かれてそれぞれに付き、素材を集めるのを手伝ってもらった。楽しいけど、攻略済みの階だけでは物足りなくて、お昼前に107階に集合した。難なくクリアして、108階への道が開かれた。


「ウッドのおじいさまに、また頼んだの?」


 アラ兄に聞かれる。

 それなんだよね。商売のこともなんだけど、ウッドのおじいさまに頼りすぎなのだ。


「それなんだけどね、提案したの」


「提案?」


 アオが角煮をもう一度お皿に取っていいか悩んでいるようなので、スプーンで掬って入れてあげる。

 みんながジト目で見てくる。

 はいはい。

 レオにはわたしのお肉のお寿司、アリには卵焼きをお裾分けした。クイには収納ポケットから出して、角煮の上に温泉卵をトッピング、ベアには蜂蜜のマスタード焼きのお肉を足し、もふさまにはミニ角煮温泉丼を。

 ロビ兄とアラ兄もお腹はまだいっぱいじゃないというから、ハンバーガーを出した。みんな嬉しそうに頬張っている。


「提案って?」


 アラ兄に促されて思い出した。その話をしていたんだっけ。


「ウッド家の優秀な人材が世界の至る所にいるでしょ? 頼るのは良くないと思っていても、情報を得るには持ってこい、なのよね。報酬を払えればまだいいんだけど、おじいさまはもらってくれないし。それでね、情報網を作るのはどうかと提案したの」


「情報網?」


「そう特に人員を割かなくても、今まで通り普通に働き、そして少し情報を流すだけで済むから、経費がそれ以上かかることもないわ。ウチにもそういった情報を流してもらいたい見返りとして、2つのプレゼント付き!」


「プレゼント?」


「うん。ひとつは……blackが人材育成していたの知ってるでしょ?」


「ああ、兄さまが当主をおりてもみんなついていくって言って、どうしても話が平行線になるから、当主を守る新たなblackを育成できればついてきてもいいって話がついたんだよな?」


 ロビ兄に頷く。

 そうなのだ。当主というか、バイエルン直系の血筋についていきたいみたいで、兄さまは当主をおりるといっているのに、兄さまに生涯仕えるといってきかないらしい。


 兄さまは条件を出した。

 新たな当主に仕えるblackを育成するように。そうしたらそのものたちに任せて、自分について来てもいいと。と言えば、ついてくることは諦めて、当主に仕えると思ったんだけど、なんと彼らは本当に人材を育成し始めた。

 まぁ少数精鋭であるものの、引退やら何やらで、人を足したり入れ替わりはあった。だから元々、人を育てるノウハウがあった。こんな何人もいっぺんに育成したのは初めてみたいだけど。時々試験をするとかで、兄さまに新人が付けられることもあるそうだが、仕事の手伝いなんかも含めてかなり優秀だという。

 育てることもできるんだ。それってすっごい能力だわ。

 わたしは兄さまに断ってから、blackと話をする機会をもらった。受けてくれるかどうかはblack次第で。

 わたしの依頼は、商人であるウッドの人たちに隠密的な働きのことだったり、情報を得るノウハウを教えてくれないかってこと。こちらもウッドの人たち同様、お金で動く人たちではないから報酬には魔具を打ち出した。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] アンドレとの一戦後、もふさまと軍団はよくダンジョンに通ってましたが新規階層更新にはいかなかったんでしょうか? [一言] アダムの情報網とは別の範囲の情報網になるだろうからより得られる情…
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