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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
16章 ゴールデン・ロード

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第725話 若君の野心③聖霊王

「ウチに獣憑きがいるのは知っているだろう? 彼らが拾い集めてきたことだ」


「人族が知り得ないような、情報のような気がするんだけど」


「ウチは蔑まれる国だから、そういう蔑まれたものたちが集まってきた。……その中には自分の力だけでは自分を守れない、希少種族もいた。匿ってやる代わりに、情報を得た」


 なるほど、そういうわけか。

 ガゴチは一部で嫌われていたりするけど、そういう世間からはみ出した、弱い人たちの受け皿にもなっていたんだ。

 他種族は人族より少ないからか、同族間の繋がりが強い。だから過去の話もしっかり伝えられていたりする。シュシュ族、ポポ族、名前は知らないけれどオババさまの種族。彼ら独自に伝わってきたことを教えてもらい、わたしも、助かったことも多い。


「聖なる女王、その条件とは何? 誰に聞いたの?」


 そこが要だ。


「ああ……神聖国を興すにはシュシュ族の協力がいる。けれどワーウィッツがシュシュ族を絶滅させた。そんな噂も流れたね。真偽はともかく、毛皮は有名だったから非難が集まったよね。でも、絶滅される前に逃げていたシュシュ族もいたんだ」


 逃げた子たちもいたんだ……そしてガゴチに保護された。そうアタリをつける。


「獣憑き、他種族。オヤジやジジィはいい顔しなかったけど、俺は彼らの目が、自分と同じに思えたんだ。はみ出しているって感じが一緒で。だから俺の部隊を作った。情報収集部隊だな。俺は強さではジジィたちには勝てないけど、その情報を武器にしてガゴチの上位にいるんだ」


 直系でも何かに秀でていなければ認められなかったんだろう。獣憑きや他種族を受け入れたガインの行動が、情報をとってくるという点で評価を得ることになったんだ。

 ってことは今のガゴチの情報収集能力は、ガインの部隊に頼っているところがあるだろう。


「ジジィたちは神聖国を興したくても興せないと思っていた。だから、嘘っぱちで立ち上げる、とね。聖域を作れないで、それでもそれっぽいのを作って神聖国と言い張る気だった。

 俺はシュシュ族から情報を手に入れた。女王を立てて、聖霊王に降りてきてもらう。その女王に君は当てはまる」


 ゴクリと喉が鳴る。


「当てはまるって?」


 ガツガツしないように、平静を装って聞いてみる。


「聖霊王が降り立つとそこは聖域になるそうだ」


 シュシュ族ならそれを知っているだろう。けれど聖霊王が2度と大地に降り立たないことも知っているはずだ。


「……だから当てはまるって?」


「聖霊王は女王と婚姻して、女王に子を為す」


 フリーズする。

 ん? 待て。子を成す?


「あ……あんた、わたしと婚姻を結びたいとか言ってたじゃない。そう言っておいて、聖霊王の子を生ませるつもりだったわけ?」


「じ、実際に人族のように子を生むわけじゃない。聖霊たちが聖力から生まれるんだ。聖霊が増えれば聖霊王も帰っていくみたいだし」


 ガインは真面目な顔をした。


「聖力で聖霊を生み出すには、純潔でないとできないらしい。瘴気が多いと聖霊王への障りとなるから、光の使い手で瘴気を浄化できると、聖霊が生まれやすいという。君は元々瘴気が少ない。光の使い手だ。そしてほんの少しだけど魔力を絶えず外に出している。それは器が受け止められないからだね? 魔力もたっぷりあるんだろう。そして聖なるお遣いさまと、とてもうまくやっている。聖霊たちを生み出すのに、君ほどぴったりな人はいないと思う」


 聖力って? 魔力とは違うの? わたしに聖力があるってわかっているの? どうやって? なんでわかるの?


 そう言われ疑問が湧き上がった時、バンとドアが開いた。


「姉さまになんてことを! 姉さまにそんなことをさせるぐらいなら、あたしが聖霊王と結婚してやるわ!」


「エリン〜!」


 颯爽と現れたエリンが、ガインの胸ぐらを掴んでいる。そのエリンの服を引っ張っているのはノエルだ。


 ガインは片手で、お付きを止めるような格好をしていた。

 お付きがエリンをどうにかしようとしたのを防ぎ、自分の胸ぐらを掴ませたのだろう。


「エトワール・シュタイン、ノエル・シュタイン。手を離して、こちらに来なさい」


 厳しい声をあげると、エリンもノエルもビクッとしてわたしを見上げる。

 手を離し、わたしの横に来た。

 モニターで、誰かしら見ているとは思ったけど。


「ガゴチの若君、妹と弟が失礼いたしました」


 どこかで見ていたこともばらしたのよ、どうするのよこれ。

 そう思いながら、頭を下げる。


「ノエルはお会いしてますね。エリン、非礼をお詫びして、それからきちんとご挨拶しなさい」


 エリンは上目遣いにわたしをチラリと見る。


「第4子、エトワール・シュタインです。胸ぐらを掴んで痛くしてごめんなさい。けれど、姉さまに聖霊王の子を生まさせようとするなんて、聞き捨てならないわ!」


 あー、もう。

 わたしはベルを取って鳴らす。


「あたしが聖霊王と結婚するから! あたしが聖霊を生むから。だから姉さまの幸せの邪魔をしないで!」


 ハンナがやってきた。

 エリンの目尻に溜まった涙を親指で拭いて、ノエルとエリンを引き渡す。

 静けさを取り戻した部屋で、わたしは謝る。


「妹たちがすみません。話も聞いていたみたいですね」


「あれが妹か。公言していないが光の使い手みたいだな。瘴気も多そうだけど。いや、それだけじゃない。シュタイン家は獣憑きが生まれやすいのか?」


「? エリンは獣憑きではないわよ」


「? 強い魔物のような気配だから、獣憑きかと思ったよ」


 エリンも魔物クラスに強いからな。


「若君、ひとつ情報を開示しましょう。これはある方から聞いたことですが、信頼できる情報です。神聖国は興せません。なぜなら、聖霊王が大地に降り立つことは2度とないからです。創造神から禁止されたんです。若君が話してくれた神聖国の成り立ちでもそうだったでしょう?」


 シュシュ族からもそう聞いたはずだ。

 ガインは表情を崩さなかった。

 ……何も言わないけれど、知っていたんだと思う。


「……それらしく見える儀式でも、するつもりでしたか?」


 それだと、結果、将軍たちと同じことをすることになる。


「昔、聖域を増やしたかったのは、聖女が暮らしていけるようにするためだと思います」


「聖女が暮らしていけるように?」


「はい。聖女は聖域で力を使わないと命を削るからです」


 だって、聖域が神が入ってこられない場所だなんて、誰も知らないと思う。神殿から出てきている情報は、聖女に関するそれだけだ。


 でもほんと不思議なんだよな。聖女は「聖」と名づいているけれど、女神が手助けする神属性。神殿預かりでもあるしね。それなのにどうして、神を入れずに人を守るための〝聖域〟で力を使わないと命を縮めるってことになるんだろう? 矛盾してるよね。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 聖力とは何か。ステータスボードでも見れない能力をどうやって知るんだろう?ステボのレベルで見られるようになるのかもしれないけど エリンの気配。リディアの「魔物並に強い」とは理由が違いそ…
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