表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
15章 あなたとわたし

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

694/1170

第694話 はかられごと⑦幸せをあきらめない

「ハッ!」


 アイラは怒りを含んだ声をあげた。


「馬鹿ね。同等、もしくはそれ以上の立場の者しか、取り引きってのは持ちかけられないのよ。あたくしからの取り引きならまだしも、あんたに何ができるって言うの?」


 表情が驚くほど歪んでいる。


「ほんっと、何か持ってそうに見せる才だけはあるんでしょうね。あの方も、みんなあんたに騙されてる!」


「そうね、あなたにだけ見えない才能が、わたしにはあるのよ」


 そうにっこり笑えば、アイラはさらに激昂だ。

 棒をわたし目掛けて振り下ろしてきたから、その手をいなして、後ろ側に回る。

 わたしより体が大きいから、長い時間をかけてのバトルになったら負ける。


「兄さまが危険なの。わたしを助けるわけじゃないわ。あなた、兄さまのこと昔好きだったでしょう?」


 油を注いでみる。


「あんたの足で追いつける? それに止められやしないわ。でも覚えておくといいわ。あんたのせいでフランツさまは命を落とすのよ」


 振り返って仕掛けてきた、攻撃をかわす。


「フランツさまもお気の毒だわ。でもあんたみたいのに惚れたのが悪いのよ、自業自得だわ」


 わたしはアイラの右手首をつかみ、後ろに回って捻じ上げた。

 アイラの顔が苦痛に歪む。

 わたし、体力ないけど、魔法戦も成績〝5〟だから!

 棒を落とし、左右の手首をタオルで縛る。


「ちょっと、解きなさいよ!」


「って言われて解くと思う?」


 彼女を突き飛ばして床に転がす。その間に隣の部屋に行き。

 おお、紐があった。

 部屋に戻って、アイラを椅子に座らせ、紐で椅子と一緒にグルグル巻きつける。


「リディアのくせに! あんたが今から駆けつけたって、絶対に間に合わないわ」


「あなたとわたしの決定的な違いを証明してあげる。わたしは幸せをあきらめない」


 わたしはアイラに言い捨てて、家の外に出た。誰もいないみたいだ。

 アイラが信用されているのか……。


「もふさま?」


 わたしは小さな声で呼んだ。

 茂みがガザッと揺れて……もふさまだ。

 ちっちゃなみんなもいる。


「無事でよかった」


 わたしはみんなを抱きしめた。

 もふさまがあんな奴らにやられるとは思えなかった。それにみんなも起こしたあとだったし。

 様子を見るのに、眠らせられたふりをして、きっとついてきて近くにいてくれると思ってた。


『あの小童はどうしたんだ? 魔力が急に増えた。変だったぞ?』


 もふさまが直前に言った〝変〟は囲まれたことじゃなくて、偽アダムのことだったんだ。


「アダムじゃないの。影のひとりなんだと思う。乗っ取り案を考えたのはあの影で、自分たちの願いを通すのに、ペトリス……ぺしゃんこ公の企てに所々便乗していたみたい」


『あいつは乗っ取り派か?』


「多分そう」


 わたしはみんなにすがる。


「兄さまが危ないの。お願い助けて!」


『フランツが危ないとはどういうこと?』


「あの影が兄さまが邪魔者で、消すって」


 みんなが目を合わせる。


『私が!』


 レオを引き止める。


「兄さまは城の中。レオたちはダメ。もふさまが行ってくれる? レオたちはわたしをお城に運んで欲しい」


『リディアのことは任せたぞ』


 もふさまがそう告げて、虎サイズになり、空を駆け出した。

 レオも大きくなった。


「お城の近くまでお願い」


 そこからは、みんなはまたぬいぐるみになってもらわないとだ。

 レオに乗り込む。しっかり捕まる。ツルツルの皮膚はちょっと怖い。

 でも落ちたこともないから、もふさま同様、飛んでいる時も魔法で落ちないようにしてくれているはず。


『でもどうして、フランツが邪魔なの?』


 レオの背中の上でクイから言われる。

 あーーーー、それね。


「影が変なの。わたしを生まれた時から愛してたとか言って。兄さまが邪魔だって」


『リーの(つが)いなのか?』


『兄さまが番いじゃないの?』


「番いって結婚する相手という意味じゃない?」


 ニュアンス的にちょっと違和感があり、ふたりに尋ねる。


『番いは魂の引き合う相手だよ。生涯寄り添う』


 そういう意味か。


「人族は番いっていう括りはないかな。……でもそうね、あの影は運命的なそういう意味で、わたしを必要としてそうだった」


 自分で言って鳥肌が立つ。

 あの時はアドレナリンが出てて、何を言われているか深く考えられなかったけど、思い返すとずいぶん怖いこと言ってなかった?


 空に上がれば、お城はすぐそこだった。他の地区と違って、明かりが夜遅くてもいっぱいついているからわかりやすい。4区の王都から一番外れぐらいにいたっぽいね。4区外れからお城までは馬で2時間ぐらい。魔法戦試験の時のあのアダムのスキル。高速で動くあれを影が持っていなければ、もふさまは間に合う。

 辻馬車を囲んだ青い点。あの人たちも影についていったのかな、アイラの方にはついていなかったものね。呪術師ではなく、私兵、かな?

 アダムが地下基地に帰ってきてればいいけど、そうじゃなかったら……。


 地下基地に迷いなく入っていく影。結界のあるところで兄さまに声をかける。そして外に連れ出す、そんな映像が思い浮かぶ。


『リーから魔力が臭わない』


 魔力って匂いなの?


「あ、魔力封じをされてるの」


『壊す魔具を作っただろう?』


「それがアガサ王女に渡してから、多分陛下に渡っていて、返してもらってなかったのと、どんな封じられ方をしたのかわからないんだけど、収納袋もポケットも呼び出せないの」


 アリとクイから明るい表情が消える。


『カゲとかいうやつは、凄い魔の使い手だな』


『うん、空間に干渉できるのは、並の魔力じゃない。リー気をつけるんだ』


 急降下。


『人がいっぱいいる。飛べるのはここまでだ』


 レオが裏路地でおろしてくれた。見つかったら魔物が街中にって攻撃されちゃうからね。

 1区だ。お城までちょっと距離がある。それにお城の門から地下基地までの道のりも遠い。


 走るしかない。みんなを入れたリュックを肩にかけて走り出す。

 こんな夜更けに馬の足音がした。わたしは端に寄りつつ、走り続ける。

 馬がスピードを上げ、少し前まで行ったところで止まり、人が降りた。


「リディア嬢?」


 ロサ?


 わたしを認めて目が大きくなる。


「こんなところで何やってるんだ?」


 怒りが含まれている。わたしは荒い息を整える。


「ロサ、ち、地下基地、に、急いで。兄さま危ない」


「フランツが危ないって?」


 後ろから来た、もう一頭の馬がいなないた。

 アダムだ。


「本物?」


 わたしは尋ねる。彼は目を細めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
[一言] 魔法戦の成績は5でもレニータに縛り方緩いと駄目出しされてたけど今回は大丈夫? アイラはリディアに嫉妬してるのかなー? 今度からクラッシャーくんは予備も造っておいた方が良いよ。収納じゃなくて…
[一言] アイラには父の幸せには限りがあるという言葉が縛りになってしまったんでしょうね。 リディアは護身術的なものなら結構優秀? 随分手慣れているようで。 最後に現れたアダムは本物か偽物か。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ