表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
15章 あなたとわたし

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

692/1173

第692話 はかられごと⑤嘘でしょ?

「ここ、どこだろうね?」


 暗いのも手伝って、街並みを見ても、どこに連れてこられたのかわからない。

 探索マップを出してみたけど、やっぱり今歩いてきたところが表示されるだけだし、それも長く記録されていない。王都のどこかだとは思うけど、これでは特定できない。


「どこだろうねぇ?」


 アダムはクスッと笑う。

 捕らえられたというアダムらしくない失態をしたからか、様子がちょっと変。

 何がおかしいのか??

 でもそれほどテンパっているのかも。


「……大丈夫だよ、なかなかアダムが来なかったら、トルマリンさんが不思議に思って王宮に問い合わせるだろうし、裏門の騎士たちがわたしたちを覚えているだろうから、すぐに見つけてもらえる」


 そう言うと、アダムは穏やかに微笑んだ。


「それより、戻らなくて、兄さまが心配しているだろうな」


「……フランツが?」


 ん? 幾分、過剰反応のような気がしたが、わたしは頷く。


「……ああ、そういうことか。秘事は睫……」


 アダムの顔から表情が消えていく。


「あ」


 唐突に思い出して、声をあげれば、アダムが驚く。


「え?」


「クラッシャーくん、呼び出すね」


「……クラッシャーくん?」


「あれ、話してなかったっけ? 今日も魔封じの腕輪の魔具壊したでしょ」


 そこまで言って、わたしは大変なことを思い出した。

 アガサ王女から恐らく陛下に渡っただろうクラッシャーくん、返してもらってなかった!


「ああ、収納袋か……」


 アダムがひとりごちる。


「あああああー、陛下から返してもらってないや」


 魔力封じられているの、すっごく困るんだけど。


「持ってても収納袋も呼び出せないし、この魔遮断は生半可なことじゃ壊せないから、落ち込まないで」


 アダムから変なフォローが入る。

 え? 収納袋を引き寄せられない?

 え、本当だ。魔力が封じられようが、収納袋は所有権によって引き寄せることができるだけだから、関係ないはずなのに。

 収納ポケットもダメだ。


「な、なんで?」


「さぁ。所有権のある袋を呼び寄せられない、そういう遮断する方法もあるみたいだね。高度な魔具だ」


 アダムは大したことじゃないように、サラリと言った。

 収納袋や収納ポケットが呼び出せないって、めちゃくちゃ不安だ。

 魔力も封じられ、収納袋からアイテムも取り出せない。本当に身ひとつの状態なんだ……。


「君、そんな魔具持ってたんだね」


「ほら、わたし、魔力を逃していないと、死んじゃうから。魔を封じられるより、封じられて逃せないことの方が怖いの。だから必需品なんだ。1日ぐらいなら平気だけど、まずいな」


 早いところお城に戻りたい。


「アダム、どうやってお城に帰る? 明るくなるまで待つ?」


「……君との逃亡劇を楽しもうかと思ったんだけど、気になることができちゃったな」


「気になること?」


 アダムが立ち止まる。


「君は私との婚約を解消するつもり?」


 アダムは首を傾げる。


「そりゃ、元々この件が解決するまでのことだったし」


「私は君を伴侶としたい。君の望むものはなんでも手に入れると約束する。君が王妃になりたいと言うのなら、王にもなろう」


「ちょっとどうしちゃったの、アダム。何言ってんの? アダムはわたしを好きでもないでしょ?」


「私は生まれた時から君を好きだった。愛してる」


 真面目な顔つきだ。

 ちょっと、どうしちゃったの、アダムってば。

 生まれた時からってそれ早すぎ。会ってないじゃん。なんかの冗談?


「嘘、でしょ?」


「ブレドが好きなの? それともまだフランツを?」


 わたしの顔を見ながら、そこまで聞いて眉を寄せた。


「……やっぱり、フランツは邪魔だな」


 え?


「ちょっと、アダム?」


「君の望みをなんでも叶えてあげる。でも君は私の隣にいないと。他の場所は危険だからね」


 両腕を掴まれる。なぜか、ゾッとした。


「何言ってるの? アダム変だよ?」


「変なのは君だよ。自由にさせすぎた。自由な君を見るのは楽しかったけれど、やっぱり独占したくなった」


「な、何の話?」


 なんだか恐ろしくなってきて、わたしはあとずさった。

 グッと引き寄せられる。

 え?

 今、唇が合わさった?


 目の前の人は極上に微笑んだ。


「どんぐりまなこ、だね。ロマンチックなのは、また今度。今は、魔力を吹き込ませてもらったよ」


 え?

 パニックだ。口が合わさったのもびっくりだけど、魔力を吹き込んだって何? なんで魔封じの魔具をつけられているのに、魔力を出せるの?


 ぐるぐると思考が巡る。

 ひとつ、何かおかしいと思えば、追随して思い出されてくる。


 ……眠らされ捕まり、魔力は封じられていたけれど、自由に動けたのはなぜ? 手足が自由だったのは……。それは目の前のこの人が、アイラ側の人間だから。

 たびたびあった違和感。

 アダムじゃない。


「……あなた、影ね?」


 見分けがつかないぐらいアダムそっくりだけど、目の前の人はわたしの知ってるアダムじゃない。傍若無人ではあるけれど、アダムは人の気持ちを無視するような人じゃないもの。


「アイリーン」


 アダムに似た誰かがアイラを呼ぶ。

 アイラと偽アダムは繋がっていた。


「ここにおります」


 暗がりの中からアイラが現れる。


「リディアを部屋に。そしてそこから出すな。決して傷つけるでないぞ? 髪一本でも傷つけたら命はないと思え」


「承知いたしました」


「ちょっと、あんた何する気?」


「邪魔者は消しておかないと」


 え……。


「ちょっと待って。邪魔者って」


「そう、君の大切な人、フランツだよ。あれも、しぶといね。いずれ出生の件で消えるから放っておこうと思ったけど、君の表情みたら我慢ならなくなった。大人しくここで待ってて」


「出生の件って、あんたがやったの? あんたがキリアン伯を唆したり、変な噂をばらまいたの? けしかけたの?」


「君、その短絡思考は直した方がいいよ。私はあんな杜撰な計画を立てたりしない。やるなら一分の隙もなく完璧にやるよ。あまりにも決定打にいつも欠けてるから、私はちょっと補ってあげただけ」


 偽アダムがニヤッと笑った。

 本気だ。引き止めなきゃ。

 影のひとりなら、アダムと同様、魔力がとんでもなく高いだろう。


「アハハ」


 影が突然笑い声をあげた。


「引き止めようと、必死に考えている顔だ。報告にあったように、本当に全て顔に出るんだね」


 影は曲げた人差し指の背を口にあて、少し考える。


「やっぱり、フランツは消しておこう。君、変なこと考えそうだから」


 そう身を翻す。


「待って!」


 影を止めようとしたら、手を持って邪魔される。アイラだ。


「離して」


「リディアさまじゃ追いつけないし、止められませんよ。暴れるなら、眠らせます」


 ポケットから魔具みたいのを取り出した。眠らせることのできる、何かなのだろう。眠らせられたら、何もできない。わたしは唇をかみしめた。

 アイラに引っ張られて、民家に入る。中は明かりがついていたけど、誰もいなかった。


「アイラはあの影の勢力なのね?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
[気になる点] リディアが魔力を封じられて偽アダムが使える理由 単に彼が魔力封じされていないのか別の理由があるのか [一言] 偽アダムが真の黒幕。そしてメラノ公が王位継承権を渡す先は偽アダムだったんで…
[気になる点] 魔を吹き込んでどうするんだろう?人に戻るのはリディア限定なのでキスといえば祝印だったけど [一言] これはうっかリディア。アダムだと思ってるにしろ地下以外でフランツの話は迂闊ですよ。 …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ