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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
15章 あなたとわたし

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第679話 彼女のはかりごと⑭言霊

「何があった?」


 地下基地で、居間のソファーに座らせてもらい、ロサがわたしの両頬を両手で挟む。


 わたしはアイラに言われた通りの行動をしようとしていて、怖くなったのだと胸の内を話した。

 わたし、また術をかけられた?

 それとも魔石の欠片がいつの間にか入っていて、いうことを聞くようになっている?

 それとも解呪しきれてなかった?


 兄さまが琵琶茶を用意してくれて、もふさまに尋ねる。


「その時、お嬢さまはどんな様子でしたか?」


 もふさまは魔石を触る。通訳の魔具だろう。


『少しぼーっとして見えた。フラフラと扉に寄っていくから吠えた。するとハッとしたようだ』





 しばらくして、アダムと一緒に地下基地に入ってきたのは、トルマリンさんだった。

 ロサたちが伝達魔法を使っていて、アダムに連絡をしているとは思ったけど。

 トルマリンさんには、できたらしばらくの間、王都にいて欲しいと話をつけてあったらしい。呪術師を相手にするので、意見など聞くこともあるかと思ったそうだ。


 トルマリンさんに診てもらう。


「呪術はかけられていませんし、解呪も問題なくされています」


 状況を聞かれて話す。

 トルマリンさんは、タン、タン、タターンと手を打った。


「話す時に、こういうリズムではありませんでしたか?」


 リズム?

 わたしは首を傾げる。リズムは意識してなかったから、思い出せそうにない。


「……そうですね。ちょっと実践してみましょうか。

 シュタイン領はとてもいいところだと聞きました。領地が好きですか?」


 実践? 急になんだと思ったが、わたしは答えた。


「……はい、好きです」


「長いお休みには、領地に帰られるんですか?」


「はい」


「帰ったら何をしたいですか?」


「ワラたち、あ、ウチのコッコたちに顔を埋めて、馬のケインとアニーとニルスの毛繕いをして。領地の隅々まで行って、みんなと話して、領地で取れた食材で食事を作りたいです」


 最初にやりたいことである〝家族に甘える〟は、気恥ずかしいのでカットした。


「なるほど。そういえば、北の方で病が流行り出したと聞きましたが、ご領地は大丈夫ですか?」


 え? 流行り病? そんなの聞いてないけど。


「近頃、連絡は取りました?」


「……連絡はありましたけど、そんなことは一言も……」


「心配かけないように、おっしゃらなかったのかもしれませんね。何でも家畜に甚大な被害があるとか……。コッコたち、心配ですね。あ、大変な時に余計なことを申し上げました」


 病気なら母さまが光魔法で治してくれると思うけど……。


「お嬢さま、ものには〝期〟というのがございます。まさにその時と申しますか。これを逃すと、二度と会えないというね。お嬢さまは私から聞いて、今知り得た。これが〝期〟というものです。巡り合わせです。これを逃したら、二度とコッコと生きているうちに会えないかもしれません。

 お嬢さま、コッコに会いに行くんです! 今、行きなさい!」


 パン!

 トルマリンさんが両手を打った音だった。

 わたし、立ち上がってた。領地へ帰ろうとしていた?

 わ、わたし、どうなっちゃったの?


「お嬢さまはとても素直でいらっしゃいますね。

 申し訳ありません。北の流行病というのは、嘘でございます」


「嘘? ……よかった」


「すみませんでした。関心のあることが一番成功しやすいので」


 力が抜ける。

 病が嘘ならよかったけど、わたし言われるままに領地に帰ろうとしてた……。


「わ、わたしに何をしたんですか?」


 トルマリンさんは、すまなそうな顔をしている。


「何かしたわけではありません、これはただの手法でございます。呪術とは編み込む言葉も大切となりますので、言霊をこめる修練をするのです。少し瘴気を動かします。訓練し習得すると、その気にさせるようなことができます」


 彼は痩せこけた顔で、少しだけ微笑んだ。


「まず、驚くようなことを言われませんでしたか? それで、もっともなことを言われる。意表をつき、その上で信頼させる。そして、強い口調で後押しする。すぐに行動に移す方は稀ですが、なんどもそうやって重複して訴えかけると、頼ってこられるようになる方も。お嬢さまは瘴気も少ないから、効きがいいのだと思います」


「わたし、これからも、いつの間にかアイラの言霊に、はまっていたりするのでしょうか?」


 彼は、微妙な顔をする。


「アイリーン術師は柔軟で腕がある。そして度胸もある。目的のためにはためらわない気概も感じます。瘴気の少ないお嬢さまと、相性が悪いと思います。

 そうですね……。では、私が〝まじない〟をかけましょうか? 呪術ではありません。瘴気は使いません」


「かけてもらったらどうだ?」


 ロサが言う。


「呪術でもなく、瘴気も使わないなら、いいのではありませんか?」


 兄さまも言う。


「あの呪術師が怖いなら、寝込んだとでも言って、もう会わなければいい。あとのことは私たちに任せれば」


 アダムが言った。


 それは嫌だ。

 アイラの言う通りにしていたり、頼っていたりするのも怖いけど、売られた喧嘩をただ人に解決してもらうのも嫌だ。それも、探れる機会を自分で蹴って。


「泣きごと言ってごめんなさい。知らないうちに術をかけられたと思ったら、ものすごく怖くなってしまったの。もう、大丈夫。でも念のため、トルマリンさん、まじないをお願いします」


 彼は頷き、わたしの両手を取った。

 そして、聞き取れなかったけど、何か唱えた。あの魔物の寝息のような不思議な音を出す。


「お嬢さま、その方と話すときは、親指を軽くでいいから握ってください。そうすれば、言霊に惑わされることはありません」


 親指を握っていれば、アイラに惑わされることはない。ほっとした。


「ありがとうございます」


「それにしても、呪術だけではなく、呪符を作ったりもするし、まじない、それから言霊、呪術も多岐に渡るのだな」


 アダムが腕を組んでいる。

 そんなアダムを見上げ、トルマリンさんは言った。


「……皆さまは、呪術の成り立ちをご存知ですか?」


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― 新着の感想 ―
[一言] 呪術もアイラもはリディアには相性が悪すぎるのか。 解呪のことも前に少し説明してもらって実際にやってもらって見たけど『探索』や『付与』等の時のように解呪能力をギフトプラス出来るんでしょうか? …
[一言] 言葉による暗示ですか。 こういうのは数を重ねるごとにかかりやすくなるだろうからトルマリンのまじないは必須ですね。 それにしても多才な呪術師。 そうでもしないとここまで残らなかったのでしょう…
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