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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
15章 あなたとわたし

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第655話 vs呪術師⑦女術師

 アダムがゆっくり口を開いた。


「そう、たとえば。詐欺に加担していたワンダ夫人。途中でいなくなったんだよね?」


 確認されて、ロサがそうだと返事をした。


「詐欺だとわかってしまう前に行方をくらませたのだと思ったけど、彼女が詐欺グループを裏切ったのだとしたら? キートン夫人に罪を被せるべく置いてくるはずだった盗まれた宝石も、キートン夫人の持っていた宝石も、ワンダ夫人は持って逃げた。だからキートン夫人の事件は中途半端なものになったんだ」


 そう言われてみると、そう思えないこともない。

 キートン夫人がワンダ夫人の事業に寄付をした。詐欺だとバレる前にそのお金を持ってドロンした、それはあり得そうなことだと思えた。

 仲間のコルヴィン夫人は、さらにキートン夫人から家を巻きあげようと思って、残っていたんだと思ったけど、よくよく考えてみると、お金が欲しい詐欺事件なら、寄付金を得たことで終えても良かったはずだ。あのお屋敷がそんなに欲しかったのだろうか? キートン夫人を子供の家庭教師になってくれないことで逆恨みして……。買い叩いたのだとしてもそれは出費だから不思議ではある。

〝ちっちゃい人だ〟とあの時も思った。自尊心を傷つけられて、逆恨みしたのかもしれないけどさ。

 彼女はあの時、ロサとかかわりを持とうとしたし、褒美をもらおうとしていた。浅はかだと思ったけど、実はワンダ夫人に裏切られていて、入ってくるお金がゼロだったとしたら?

 仲間だったワンダ夫人が、キートン夫人からのお金を持ってドロンする。お屋敷を買ったお金はコルヴィン夫人の自腹かもしれない。逆恨みを加速させていたところに、ワンダ夫人にも裏切られ、その怒りがキートン夫人に向いていたとしたら?

 あの時、異常な人とも思ったのを覚えている。でもあの時、彼女が仲間に裏切られていたのだとしたら、その異常性もわかる気がした。もちろん、だからってやっていいことと悪いことはあるけど。


 そう思ってみれば、確かにあのお茶会で、わたしが拐われたことの意味がより通る気がした。あの時、実行犯たちが亡くなり、事件の詳細は実際に起こったことしかわからなかった。だから悪党の考えることは、一般人と違うからよくわからないんだと、そう無理やり納得していた。

 だけど、あの詐欺が裏切り者が出たために不完全なものだったとしたら、……物語に盗まれた宝石というワードを混ぜたから、キートン夫人がワンダ夫人から何かを聞いていて、わたしが何か聞きかじったと思ったのかもしれない。キートン夫人は大したことではないと思っていて気づいてないけれど。

 彼がキートン夫人と会うのはバレる率が高くなるので、わたしに接触を測った。そして接触したわたしは口を塞いでしまえばいい。


「もし、そんな台本だったとしたら、前バイエルン候の時と似ていますね。屋敷に盗まれた宝石があり、それが証拠となり、罪が発覚する」


 ダニエルが息を吐き出す。

 前バイエルン侯は、エレブ共和国の彼の持つ農場に、精巧な地図の端っこがあったとして、しょっぴかれた。


「なー、ロサ殿下、宝石……、いや魔石。たとえば持ってちゃいけない魔石ってあるの?」


「持ってはいけない魔石? いや、それは聞いたことがない」


「そっか」


「なんでそんな事を聞いたんだ、ブライ?」


 ダニエルが尋ねた。


「ほら、もし持ってちゃいけない魔石があるなら、盗まれた宝石より、前バイエルン候とますます同じ感じになるじゃん?」


 持ってちゃいけない魔石……とは違うけど。

 ふと、思い出して、もふもふ軍団に尋ねる。


「ねーみんな、飲ませる魔石ってどんなのだった?」


『飲ませた魔石? 嫌なあかーいやつ』


 あ……。

 アダムと顔を合わせる。


「植える木って、もしかして魔力を出す、あの赤い木?」


「ユオブリアを攻撃していた、ダンジョンの魔物を凶暴化させる魔石」


「劇団が運び屋になっていた赤い魔石」


「核を入れると力を発揮させる魔石……」


「なんかぼんやりと、繋がってきたってこと?」


 みんなが次々に口にする。


「王子殿下、ロサ殿下、お嬢さま、そろそろ用意をしないと」


 兄さまに言われて、ハッとして時計を見る。


「中途半端になってしまうが時間だ。呪術師に会ってくる」


 アダムは、まだ推測にすぎないからと、みんなに釘をさし、みんなも頷く。

 みんなに見送ってもらった。



 気持ちを切り替えよう。

 って、わたしは何をするわけでもないんだけど。

 でも気合を入れてないと、さっきの怖いことをぐるぐると考えてしまう気がするのだ。

 本物の呪術師とご対面となるのかな?

 私は今日ももふさまの背中にいて、姿は隠してもらう。

 ソックスは、今日はちょっと不機嫌だ。アオに尻尾をあげないよういい含めてもらったんだけど、あれが嫌だったのかも。



 なんて考えているうちに、室にたどり着いた。

 今日は上級貴族しか立ち入れないし、警備も徹底している4階の会議室だ。


 中にはメラノ公とサマリン伯がもう席についていた。

 昨日と同じ配置で、メラノ公の前に赤の三つ目氏、サマリン伯の前に、男爵とトルマリン。

 そして新たに用意された真ん中の椅子には、まだ年若い女性が座っていた。

 貴族の女性? ドレスを身につけている。装飾品はなかなかかっ飛んだ選び方だ。統一感がなく……失礼だけど、値段のいいもので揃えたような、そんな上品でない印象を受ける。


「面をあげよ」


 わたしは真ん中の女性を見ていた。

 ゆっくり顔をあげた彼女を見て、わたしは息をのんだ。


 !!!!!!!!!!!!!


 たっぷりした栗色の髪。薄い茶色の瞳。

 血色のいい頬には余裕の笑みが浮かんでいる。


『リディア、大丈夫だ。我がいる。息をしろ』


 わたしはいつの間にか床に転がり、もふさまに顔を舐められた。

 息が荒い。一瞬のことだったとは思うが意識が飛んだ。


『大丈夫か? ここから出るか?』


 わたしは首を横に振った。

 もふさまがぐったりしたわたしを咥え、自分の背中に放った。

 もふさまの背中の毛をギュッと掴む。


 わたしは見えていない。大丈夫。


 目の前にいた、少し品位にかける令嬢は、砦にいたアイラだった。

 わたしを嫌っていて、砦から追放された、アイラ。

 平民のアイラが貴族令嬢のような格好で、優秀な呪術師として王族の前に出てきた。……そういえば、アイラの母君は呪術師だと言っていた……。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] アイラの父親はどうなったのか 彼も呪術師のところにいるんでしょうか [一言] ここに来てアイラがまさかの再登場。 読み返してきましたがたしかに母親が呪術を返されて亡くなっていましたね。…
[一言] ワンダ夫人まさかのファインプレー??別の陰謀組織に所属してるわけでなく裏切って無事逃げ果せたならそれはそれで凄い人ですね。 赤い木と赤い魔石、大分繋がってきたなあ。 懐かしのアイラは呪術…
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