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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
15章 あなたとわたし

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第635話 王子殿下の婚約騒動⑤第一の制裁

 改めて、アダムが規格外だということがわかる。

 本物の第一子が、陛下の次に魔力量が高いのはわかるけれど、それと同等にアダムには魔力が備わっているのだ。きっとその点が、王子殿下の影になった、最大の理由な気がする。アダムしか判断しちゃいけないことだけど、それは幸か不幸かと思いを馳せてしまう。


 陛下は思惑通り、アダムを幽閉することになったんだからいいだろうと言い、それゆえに伴侶ぐらいは自分で選ばせたかったと言ったそうだ。

 陛下の怒りどころを察した彼らは、軌道修正をした。


「第1王子殿下には(むご)いことを強いているのはわかっています。ですから余計に良い伴侶と過ごしてほしいのです。でも陛下、リディア・シュタインはなりません!」


 と強烈なわたしのバッシングが始まったっぽい。アダムは言葉を濁した。

 まぁ、理由としてあげたのが、わたしの悪い噂が絶えなかったこと。

 しかも獣憑きが王族に名を連ねるなど言語道断。

 それについては陛下がやり返した。


「お前たち、ゴットを幽閉した後、名を剥奪すると言っていたじゃないか。

 それなら、どんな者でもいいのではないか?」


 議会はとことんアダムに、ひどいことをしようとしていたみたいだ。


「それでも犯罪者はいけません」


「犯罪者?」


「自分が殿下の伴侶におさまりたくて、前婚約者を嵌めた張本人ではありませんか!」


「お前は噂を、ただ鵜呑みにしているのか?」


 陛下が一喝した。


「陛下、煙のないところに火は立ちません」


「ウチの娘を侮辱するのか?」


 父さまが参戦する。

 部屋の中は激しい口論で、いっとき騒然とした。

 その言葉の端々で、右肩上がりのシュタイン家が、今より力をつけるのは許せないと、そんな気持ちが見え隠れした。

 そうやって不満を口に出させ、陛下とアダムは静かに見定めていた。真の敵を。


 前から幽閉される第1王子を見下してはいた。

 けれど、いくら止めるためと言っても、規制区に立ち入ってきたのは、あまりに馬鹿のすること。叛逆と取られても仕方のないことだからだ。もうこれは本当に小者で頭が悪い。

 そんな者がわたしの一連の噂を動かしたり、今陥っている危機を企てることができるだろうか? 否、この頭で、できることではないと結論は出ていた。

 ただ、真の敵にけしかけられたのは確実。一通りきいたところで、情報はこれ以上持っていないと判断する。

 陛下は全ての者を牢に入れ、また、身分剥奪を言い渡した。

 これには悲鳴が上がったが、オール無視。叛逆と同じことであるのに、家門の取り潰しはしないし、命があるだけありがたく思えと言い募ったそうだ。


 ちなみに第3王子は3ヶ月の謹慎。第4夫人においては3ヶ月の修道院での奉仕を命じられた。

 全ての決定権はもちろん陛下だけど、貴族に対しての統括は陛下のすること。王族に対しては王妃さまが音頭をとる。でも、王妃さまは伏せっているので、ロサのお母さんである第2夫人がその役を担っている。規制区域を告げたのに、それを守らなかったことは、王族は第2夫人に歯向かったことになるそうだ。なるほどね。

 奉仕活動はもちろんだけど、そんな罰則を受けた夫人ということで、これからの王宮生活は辛いものになるそうだし、第2夫人からの制裁も、もちろんあるだろうというのがアダムの考えだ。


 貴族たちに対しては、身分剥奪を言い渡し、牢に入れ、ひとりずつ呼び出す。

 今日の聖堂の情報はどこから得たのか、聖堂に押しかけることは、誰が言い出し、どのように計画したのか? 正直に話せば刑を軽くしてやろうと悪魔のささやきをする。


 ひとりずつ呼び、聞き出したので、小者らしく保身に走り、ぺらぺらとよく話したそうだ。メネズ候に情報を入れたのはデュボスト伯であることがわかった。第4夫人にも接触していた人だ。他にも名前が上がった人がいて、その人たちはデュボスト伯の傘下であることがわかった。


 さて。陛下たちが強気でいたのには訳がある。

 それは本物の反逆者を炙り出すためだ。

 命に背いた対処としては妥当だが、シュタイン家を猫っかわいがりしているのは変わらない。こんな王家はついていけない、そう盛り上げるためでもある。


 今後はデュボスト伯とその傘下、そしてデュボストが与している人を探っていくという。

 明日、正式に発表することになるというので、トカゲは解かないことにした。



 それからアダムは、父さまから預かったと、封書をくれた。

 わたしは持てないので、もふさまに預かってもらった。


 アダムはガインと会ったことを、話さなかった。陛下にも言ってないのかもしれない。何か考えがあるのかもしれないし、ただ言いにくいのかもしれない。

 そこでお開きとなった。


 わたしは大きめの入れ物で、お風呂に入れてもらった。新品の掃除用具だという歯ブラシのようなブラシで、身体をこすってもらって気持ちよかった。

 ぽかぽかになったところを布で水分を拭いてくれ、もこもこのタオルに包んで、兄さまが作ってくれたベッドに入れてくれた。空き箱を利用した寝床で、上の半分まで蓋がスライドするようになっている。隠れられるようなところに安心するので、とても心地いい。

 うとうとしている間に、兄さまはもふさまとお風呂に入ったようだ。


 兄さまたちが戻ってきたので、父さまからの手紙を読んでもらう。

 儀式の前に父さまが書いたものだった。

 もふもふ軍団が帰ってきたそうだ!

 新しい情報とともに、仕掛けてきたから、そのうちわかることがあるかもと、頼もしいことを言っている。


 手紙を読み終わると、兄さまがわたしに質問していいかと言った。

 もちろんと答えると、


「お嬢さまの変化した姿、第1王子は全く驚かれていませんでしたね?」


 え。

 ああ、アダムは領地に来た時に、わたしのトカゲ姿を見ている。

 兄さまはそれを知らないから、どうしてかと思ったのだろう。


 わたしはガインが来て、呪術師集団のことを教えてもらったことを告げた。

 その呪術師集団のことを知らないか、情報通のアダムに尋ねたことを話した。その後、療養の噂がでて、心配して来てくれたこと。療養で誤魔化そうとしたけれど、お遣いさまの気配はあるのに?と言われ、トカゲの姿で会ったことを。

 もふさまが通訳してくれた。

 兄さまは息を呑み、無言になった。


 なんともおかしな夜だった。

 兄さまはぶっきらぼうに就寝の挨拶をするし、もふさまは機嫌が悪いまま。

 どうしたのか聞いたんだけど、答えてくれなかった。

 気にはなったけど、わたしのベッドをもふさまが抱えてくれて、その暗いところで、いつしかわたしは眠りについていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 高魔力持ちのいずれ狂うかもしれない人を恐れて幽閉したい感情までは理解できるけど、暴走して大被害を受けたわけでもないのに名まで剥奪して存在を消そうとする意味ってなんでしょうね。貶めたい悪意とし…
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