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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
15章 あなたとわたし

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第634話 王子殿下の婚約騒動④幽閉の真相

「お嬢さま、変化されますか?」


 少し顔を赤らめた、兄さまが言った。

 頷きかけて思い留まる。変化したら眠ってしまう。話せるように戻りたいけど、アダムともふさまから情報を得て、対策を立ててから、戻るかこのままでいるか決める方が良さそうだ。

 もふさまが戻ってくれば、通訳してもらえるし。

 わたしは首を横に振る。


「わかりました。ソックスにも飲み物を持ってきましょう」


 ソックスにもわたしにも飲み物を持ってきてくれた。

 浅いお皿にいれてもらったミルクを、ぴちゃぴちゃと飲んだ。生き返る。

 ソックスが首をかきたがっているのを見て、兄さまがスカーフをとってあげる。ソックスは大きく伸びをしてから、部屋を駆けまわった。


 ソックスにひっついていれば温かいけど、ひとりだと、まだ寒い。

 兄さまをチラチラ見ていると、エプロンを取り替えた。ヒダは王宮のよりおとなしいけど、胸ポケットがある!


「入りますか?」


「(入る!)きゅい!」


 兄さまは掬いあげて、胸ポケットにいれてくれる。中にはタオルが仕込まれていた。わたしは兄さまの胸ポケットの中で、ウトウトしながら過ごした。





 夜前にやっともふさまとアダムが帰ってきた。


「(おかえり)きゅっ」


 もふさまの機嫌が悪い。

 なんかあったのかな?

 兄さまがアダムに確認する。


「お風呂にされますか? それとも食事になさいますか?」


 なんか美男、美女だけあって、別のドラマが始まりそうな錯覚に陥る。

 アダムはお風呂に入るといい、もふさまには先に食べてくれてかまわないと言った。

 アダムの着替えを手伝ってから兄さまが戻ってきて、もふさまご飯をてんこ盛りに出す。

 わたしは着替える前に、テーブルへと下ろしてもらっていた。


 もふさまに話を聞きたかったけど、獣の姿になっていると、強さもだけど、状態がなんとなくわかる。今も怒っているんだと思う。だからせめてご飯でお腹がいっぱいになって、穏やかになったら話そうと思う。もふさまが怒るのは稀なことだ。

 なんて過ごしているうちに、アダムがお風呂から出てきて、みんなで食事となった。


 わたしには兄さまが、スプーンで食べさせてくれた。

 具沢山スープとベリーをくれた。ベリーはひとりで抱え込んで、食べることができる。甘いベリーは、力が湧いてくる気がする。

 ソックスは走り回って疲れたのか、早めのご飯をもらい、もう夢の中だ。

 お茶タイムにする頃には、穏やかなムードになってきていた。



 どんな話し合いが持たれたのか聞きたかったけど、アダムたちが口を開くのをまった。

 飲み物が半分ぐらいになったところで、アダムは兄さまにわたしから話を聞いてないんだよね?と確かめた。

 兄さまは聞いてないと、はっきり答える。


 では、聖堂に向かったところからと話し始める。

 まず規制されていたにもかかわらず、外には人の気配があったこと。

 本宮殿の中にも気配があり、第3王子であるバンプー殿下と会った。

 聖堂で陛下たちと合流し、その話をしている時に外が騒がしくなり、闖入者が現れる。

 メネズ候爵とその派閥の者だった。

 メネズ候の特徴としては、何の意図があるのかは知らないけれど、いつも何か新しいことには、まず反対する人だそうだ。何かあったときに突っかかるのに適した人で、ちょっと情報を流せば喜んで特攻していくような人。

 つまり、敵だか何だかに利用されたと、アダムは思っているみたいだ。

 彼らはアダムの過ちを、正しに来たと公言した。

 ということは、何かがあると察し、その場所が聖堂だったことから、婚約式であることも視野に入れ、止めに入ったと思われる。


 最初は、今日はただの婚約式を本当に行ったのだと、見せかけるために聖堂に入っていただけ。この後に発表し騒がれたら、わたしが生きていること。猫に変化しちゃったので公けにしにくくてとするはずだった。が、役者は揃っていたので前倒しにした。

 婚約式はすでに終わったこと。婚約者はアダムの抱いていた猫で、それがリディア・シュタインであることを匂わせ、都合よく鑑定士がいたので鑑定され、見事その3つをクリアした。

 わたしが陛下の威圧の余波を受けたとして、寝所に帰し、アダムは戻った。




 陛下が用意した室は、皮肉をきかせ、犯罪者を取り調べる室だった。

 陛下と父さまが椅子に座り、侯爵は立たせたまま。

 アダムが到着してから、発表をしたそうだ。

 

「明日、公式に知らせるが、ユオブリアの第1王子、ゴット・アンドレ・エルター・ハン・ユオブリアが婚約の儀を無事、終わらせた」


 陛下がそう告げると、みんな息を呑んで、物いいたそうにした。


「シュタイン伯第三子、リディア・シュタインがゴットの伴侶となるわけだ」


「陛下、発言をお許しください」


 メネズ候が声をあげた。


「なんだ、祝福の言葉なら受けつけよう」


 陛下がニヤリとすると、メネズ候は目を細めた。


「恐れながら申し上げます。第1王子殿下の婚儀のことは、議会に通ってきていません」


「それはそうだろう。通してないからな」


 陛下はこともなげに言う。


 王族の婚姻に関しても、陛下の鶴の一声ではあるけれど、貴族の摩擦を少なくするために議会に先に伝達する。それがなかったと難癖をつけた。

 それに対して陛下が烈火の如く怒ったそうだ。

 余の決めたことに異論があるのか?、と。

 続けて陛下は、議会に対する不満をぶちまけた。


「余は議会に妥協した。王族との婚姻は最終的に余が決めるとしても、絞り込むまでを把握したいというから、先に伝えてきた。それがどうだ? 今では難癖をつけてばかり。第2王子は14だというのに、婚約者も決まらぬままだ。

 それに議会は余の第一子に何をした? 狂う前提として話を進め、幽閉を決めた。ゴットにずっと危険だと言い続け、自分から幽閉を受け入れるように仕向けた」


 わたしはてっきり、国が……、陛下が、アダムの幽閉を決めたのだと思っていた。

 それにアダムが従うのだと。

 でもそれは違った。ことあるごとに幽閉をほのめかされ、アダムが決めたことだそうだ。

 陛下はそんな必要はないと言ったけれど、アダムの魔力量は桁違い。抑えられるのは陛下ぐらいらしい。人が狂うというのは、それだけでとんでもないことだけれど、本来ならそうなってから、閉じ込めるなどの対処を考えるのが普通だ。

 でも前もってそれをするのは、狂って魔力の暴走が起きたときに、それを止められるのが陛下しかいないからだった。陛下がご存命の時はいい。けれど、お隠れあそばした後に、そんなことになった場合。暴走は王都を破壊ぐらいでは済まないかもしれない。

 ……それが、アダムの幽閉に頷いた件を、陛下が撤回することができなかった理由でもあった。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] いつ頃からの話かわかりませんが幼い頃から危険な存在だと言われ続け幽閉を選ぶよう仕向けられるなんて普通に性格歪みそう。 リディアが聖樹さまとコネクトした時に魔力増加が起きたように王位に就く時…
[気になる点] 登場人物で誰が一番魔力量を持っているんでしょうか? 王様>第1王子=アダム>リディアて感じですかね? [一言] 幽閉は議会で決められたものだったんですね。 これだけ優秀な王ならもう少し…
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