表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
15章 あなたとわたし

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

627/1175

第627話 子供たちの計画⑭雄問題

 さて、どうやって切り出そう。

 一応、わたしにも慎みというものもあるし、勝手なことはよくわかっている。

 でも、変化へんげが自由自在でなかった場合、どうしても兄さまの協力が必要なのだ。頼んでみるけれど、もしダメな場合……どうしよう……。

 それからその頼みの綱でも戻れなかった場合も……。



 明後日は、アダムとわたしの嘘っこ婚約式だ。

 本来なら、最初に婚約するという噂を流し、婚約式したよとするはずだったのだけど、そういう慶事は星廻りが大切になってくる。偽りといっても当事者は第1王子殿下。そういうのすっ飛ばしたら、嘘だとすぐにバレそうだしね。明後日を逃すと、次の吉日は結構後になるそうで。それなら婚約式を先に済ませ、そこで発表しようということになった。

 訳あって参列者はいないし、当事者のふたりと神官長とこっそりとやるものだ。

 ってことで、明日父さまが、ソックスを連れてきてくれることになっている。


 作戦会議は思うように時間が取れなかった。というのは、成人していないのに、ロサが公務でかなり忙しいからだ。毎日のように、何かしらの予定が入っている。アダムは地下の幽閉が決まっているし、病弱ってことになっているから、免れているそうだ。



 とても言いにくかったのでここまで先延ばしにしてしまったが、もうあとがない。わたしは食事の後、兄さまを部屋に呼んだ。

 ベッドにはもふさまが寝転んでいる。



「兄さま、お願いがあります」


「お願い? なんでしょう?」


「……きいてくださいますか?」


「内容を聞いてみないと、なんとも申し上げられません」


 ……だよね。


「実験につきあって欲しいのです」


「実験? どんな?」


「ソックスが鑑定される時に、リディア・シュタインと鑑定されなければなりません」


「……ソックスとは?」


「農場からついてきた猫の名前です。ソックスと名付けました」


「鑑定された時ということは……まさか、お嬢さまが猫に変化した姿を……」


「そうです。もふさまにも懐いているし、同じ翠色の目だからちょうどいいと思って……」


「父さまはご存知なのですか?」


 兄さまが真顔だ。


「え? ソックスのこと? え、ええ」


「あの猫は雄ですよね?」


「え?」


「主人さま、あの子は雄でしたよね?」


『そうだな』


 もふさまは顔を毛繕いしている。


「ええっ? ソックスって男の子だったの?」


『リディアは知らなかったのか? 何か意味があるのだろうと思っていたのだが』


 …………。

 わたしが変化して、雄の猫になる。性別が変わる、〝あり〟なのだろうか?


「猫の性別って見かけでわかるものなの?」


 兄さまは眉根を寄せた。


「確かな見分け方は、尻尾をあげたらわかるでしょうね。生殖器で」


 あーーーー、それかぁ。

 なんてこと。

 ソックスはお風呂嫌いだし、帰ってきてからも、洗ってあげる体力はないから、母さまに連れて行ってもらって、恐らくはハンナが洗ってくれたんだと思う。だからわたし、一緒に遊ぶぐらいで、世話をしてないから、全然見てなかったんだよね。

 尻尾をあげたら雄ってわかっちゃうってこと?


「なぜ、雌だと思ったのですか?」


 反対に、兄さまに尋ねられる。


「だっていつもうにゃうにゃ言ってお喋りだし、もふもふ軍団が一歩ひいた感じだから、女の子だからかと思ってた」


 すると


『それは、魔物ではないからだ』


 もふさまが冷静に言った。それが理由か……。


「……今から、猫を探しますか?」


「……いえ。翠の瞳の猫を明後日までに見つけるのは難しいと思うわ。それにすぐに懐いてくれるとは限らないし。その猫を見たことがあるとか、知っている猫である方がマズいよね。王族を巻き込んでいるんだもの」


 町にいた猫だなんて、お披露目して足がついたらマズい。王族が嘘事に加担していたとバレるのは、かなり良くない。

 全てが終わり、暴くためだったとなってからなら許されると思うけど。

 だから他国から連れて来たソックスなら、ちょうどいいと思ったのだ。


「……お嬢さまがいいのなら、いいです。それで、実験とは?」


「……自分の意思で、変化してみようと思うの」


 兄さまが息をのんだ。


「あれは起き上がれないぐらい、魔力を削られるんですよね?」


「多分だけど。魔力は使うと思うけど、あれは変化で削られたのではなくて、呪いを享受し、尻尾として切り落とすのに魔力がいったのだと思うの」


「……それで?」


「なれたとして、魔力をいっぱい使ったとか、戻れない可能性もある」


 兄さまはわたしを不可思議なものを見るように首を傾げた。


「戻れなかったとき、兄さまに協力して欲しいの!」


「……具体的に、どんな協力ですか?」


 グッと詰まる。すっごく言いにくい。


「その……すっごく嫌だと思うんだけど。わたしが人型に戻れたとき、……直前に……その……口が当たって」


 くーーーっ、めちゃくちゃ恥ずかしい。


「もし、自力で戻れなかった場合、同じ方法で戻れないか、た、試させて欲しいの」


 兄さまの返事がない、恐る恐る顔をあげると、真っ赤な顔をした美女がいた。


「き、君は、あれが、人型に戻れた理由だと思っているのか?」


「……じゃないかと思ってる」


「もし私が断ったら、王子殿下に頼むつもり?」


 え?

 赤い顔した兄さまが、睨んでくる。


「兄さま以外じゃ……」


 そこまで口にし。あれ。え。待って。もしそうだったら……嫌だな。誰でもよくて、節操なくキスすれば戻るものだったらどうしよう。

 試したわけではないことに思い当たって、わたしは困惑した。

 咳払いが聞こえる。


「わかりました。協力しましょう」


 あ、よかった!


「でも本当に私が断ったら、どうするつもりだったんですか?」


「ひたすら頼み込んで……それでもダメなら」


「ダメなら?」


「脅すこともチラッと考えた。あ、でも、できなかったと思うけど」


「脅す? お嬢さまが私を? なんと?」


 兄さまは余裕の笑みだ。


「できなかったと思う。けど。

 協力してくれなかったら、言いふらすって」


「言いふらす?」


「兄さまは、トカゲに口づけするような人だって」


 兄さまが口を開けたまま固まった。

 かなり衝撃を受けている。


 あれは事故だったけど、兄さまはトカゲのわたしに、おでこをコツンとつけていた。それが悪いとか気持ち悪いとか、わたしは思わないけど! 一度トカゲになった身だからね。でも世間の評価はいろんな意見があると思うんだ。


 他の生き物に愛情深くいられる人の目を、自分だけに向けるのは難しい。

 だから一般的に令嬢は、そういう人を恋人候補から外すと思うんだ。

 兄さまに群がる令嬢をシャットアウトするのにも、いいかなと思って。

 わたしが黒い心全開で考えた脅迫。使えないとは思っていたけど。

 ふと見上げれば、未だ兄さまは固まっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ