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プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
2章 わたしに何ができるかな?
62/1125

第62話 隠蔽

本日投稿する1/2話目です。

 少しくぐもっているが、外からの声は聞こえてくる。


「ほら、早いとこ、いつものをやれ」


「アニキ、どう見てもオレが一番働いてるじゃないですか、もっと金くださいよ」


「お前のその使い所のないスキルに、役目をやったのは誰だと思ってんだ?」


「冗談ですよ。ちょっと言っただけなのに、本気で怒らないでくださいよ」


「いいから、さっさとヤレ」


「へいへい。子供が入っているのは隠蔽、っと」


 そう声がしたかと思ったら、ガンと衝撃がくる。蹴られたみたいだ。


「う、うわーーーん」


 落ち着いてきたところだったのに。直接じゃなくても蹴られて、物盗りにドアをガンガン叩かれ蹴られた記憶も蘇ってきた相乗効果で涙が出る。まずい。


「お前、何やってんだ。ガキが泣き出したじゃねーか、今まで静かだったのに」


「つい、クセで」


 閉められた上蓋が開いて、明るくなった。3人の男から覗き込まれる。


「おい、ガキ、足が当たっただけだ。泣くんじゃねー、静かにしろ」


 顔が四角いひょろんとした男に睨まれて、ブワーと余計に涙が出てくる。


「布でも口に詰め込め」


 リーダー格の〝アニキ〟が言った。


「ガキにそんなことしたら死んじまいますぜ」


 そう諫めたのは、わたしを受け取り、樽の中へと入れた背の低いちょっと横幅のある男だ。


「どうすんだよ。夜が明けちまってんだから、開門に合わせてすぐ商人の馬車が行き来するぞ」


 〝アニキ〟が舌打ちする。


「しょうがねーな。ほら、菓子だ。これやるから、泣き止め」


 菓子? お腹が空いていたわけではないが、目が男の太い手元を追いかける。

 男はわたしに包み紙ごと押し付けるようにする。涙が止まった。

 弾くタイプの紙みたいのに包まれている。何、この紙。なんか使い道がありそうなやつだ。

 そして、お水の入った瓶も一緒に渡された。


「ほら、ガキなんてのはな、こうやって扱うんだよ。大人しくしてたら、後でまたやるから、声出さないで静かにしてろ。わかったか?」


 この中では優しさのある、背の低い男にわたしは頷く。

 上蓋が閉められた。蓋に割れたところがあるから、そこから光が漏れてくる。

 焼き菓子だね。上にザラメみたいのがのってる。これは兄さまたちと食べよう。


 さて、わたしは聞いた気がする。とてもいいことを。恐らくひょろんとした四角い顔の男。最低な〝人売り〟だが、彼らはわたしにひとつだけいいことをした。


「で、ちゃんと隠蔽できているんだろうな?」


「さっき、したでしょ? これでちょっとした鑑定ならバレませんから門に入るのも問題ありません」


 はい、いただきました! 隠蔽!

 想像したのと一緒だね〝隠蔽〟。記憶で下地があるからだろう。多くを知らされなくても、上辺を見知るだけで記憶と擦り合わさり、わたしの〝知識〟となる。

 隠蔽をステータスボードにプラスすれば、鑑定されても魔法の属性も魔力量もバレずにすむ。


「で、水にはちゃんと仕込んだか?」


「はい、小さいのでかなり薄めましたが、1日はぐっすりですよ」


 睡眠薬いりですか。なるほどね。町門に入るときに荷を持った商人だと商品チェックがあるのかもしれない。隠蔽をしてかいくぐるわけだ。騒がれないように、さらった人には睡眠薬入りのお水を飲ませるわけね。


「おい、確かめろ」


 光が入ってこなくなる。蓋を開けようとしている? 確かめるってわたしが寝たかどうかを?

 わたしは慌てて、瓶の栓を抜いて、ちょっと溢してから、眠ったふりをした。


「眠ってますぜぃ」


 瓶を取り上げられた。お菓子は食べていないけれど気づかれなかったみたい。包紙ごとしっかり握りしめる。これは渡すもんか。


「あの菓子は口の中の水分を持っていかれるからな」


 ほー、あの飴と鞭の使い分けみたいなやりとりは、この人たちの十八番なのかもしれない。そう思うとゾッとする。子供をさらい慣れているということだ。絶対捕まえてもらわなきゃ。


 男たちの会話が遠ざかっていき、馬車が走り出す。下に布もないからお尻が辛い。


 逃げる際に魔力がどれだけ必要になるかわからないから、ひとつも使いたくないところではあるが、魔力の量や属性は鑑定を受ければわかってしまうことなのかもしれない。そしてどこに鑑定者がいるかもわからないし、いつ鑑定を受ける羽目になるかもわからない。後手にまわるのは嫌だから〝隠蔽〟をしておこうと思う。


「タボさん」


『YES、マスター』


「ギフト、プラス・隠蔽」


『新機能追加〝隠蔽〟。情報を秘匿・操作できるようになりました』


「魔力量、スキルを秘匿」


『YES、マスター』


「魔力量は、そうだな15に。属性は、水と風だけ。わたしが許可する以外はわからないようにして」


『YES、マスターの〝許・可〟がない場合は、魔力量〝15〟、及び属性は〝水、風〟のふたつに操作されます』


「お願いします。……あとは5歳児として目につくところはないよね?」


 後半は独り言だったのだが。


『人・族、5歳平均より、著しく〝数・値〟が開いたものが〝8〟件あります』


 え? 高性能だな。そんなことまでわかるんだ。

 ふふ、それにしても8件も? いやだわ〜、有能すぎると隠さないといけないことが多くて。

 わたしは気をよくして、マップからステータスモードにチェンジした。



名前:リディア・シュタイン(5) 人族 

性別:女

レベル:1

職業:???

HP:47/57

MP:4087/5007

力:13

敏捷性:15

知力:75

精神:77

攻撃:15

防御:15

回避:90

幸運:82

スキル:生活魔法(火A・水A・土A・風A・光S・無SS)

    自動地図作成(レベル3)

    探索(レベル2)

    仮想補佐(タボ・レベル5)

    隠蔽(レベル1)

ギフト:+

 

 少しずつ変わっている。あ、隠蔽をプラスしたのと操作でけっこう使っちゃった。でも4000あれば、うん。

 あれ、生活魔法にレベルがついている。あら、なかなかね。生活魔法以外のレベルは数字が大きくなっていくみたいだ。ふぅん。

 でも他には、そんなに目を引く数値があるとは思わないんだけど。


「その8件を教えて」


『YES、マスター。HP、5歳児平均値は175』

 は? 175? わたし、57……半分以下じゃん。開いてるって、そっち?


『力、平均値、75」

 へーー。……わたし、13。


『敏捷性、平均値、75』

 うっ。……わたし、15。


『知力、平均値、35』

 おお、クリア。……5歳児平均をだけど。うーむ。


『精神、平均値、40』

 ふう。


『攻撃、平均値、121』

 うっそぉ。普通が100越えですか? ……わたし、15。


『防御、平均値、73』

 ひぃーーっ。……わたし、15。


『回避、平均値、50』

 ほっ。


 数値が高くて目立つんじゃなくて、そっちね……。確かに数値の差が開いてるね、そっちにね。ちっ。

 わたしは魔法使いタイプってことね。うん、そう思おう。


 ステータスボードが一般的に知られてないんだから、鑑定でもステータス丸々みられることはそうそうないだろう。家に帰り着いたら、そこら辺も情報操作しておこう。


「タボさん、ありがとう」


『ご用の際はなんなりとお申し付けください』


 さて、どうやって逃げ出すか。水か風を使って。あ、そっか。魔力15設定か。大技ができそうなレベルじゃないね。

 わたしは樽の中。樽って、水物入れるものよね?

 じゃあ、人がきたら、水魔法で外に知らせよう。どこかの町に入るときに、チェックを受けるだろうから。

 でもその前に早く着いてくれないと、お尻が辛い。

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