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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
15章 あなたとわたし

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第614話 子供たちの計画①地下の基地

 湿り気のある空間に、人と、もふさまの歩く音が響く。

 夏には涼しくて良さそうだけど、何、この長く薄暗い廊下。


 離れの宮から、奥の扉をくぐり、いくつか廊下を曲がると、こじんまりとした扉があった。そこまでも、誰一人としてすれ違わなかった。人払いしてくれたんだろうけど、王宮でこんな人がいないところがあっていいのかって思っちゃう。

 そこからは秘密の通路と呼べそうな、人が3人並んで歩くのがやっとの、手狭な石造りの廊下が長く続いた。


 そうして(ひら)けたところにつき、そこは玄関のようなところだった。

 一歩先を行くもふさまは、尻尾を振りつつ、わたしを振り返る。


『結界が張ってある』


 アダムの許す人しか入れないって言っていたのは、そういうことか。


『魔力の流れが途切れているぞ』


 魔力の流れが途切れている? どういうことだろう。

 そこから入ると、無機質な部屋がいくつも立ち並んでいた。広さも結構ある。なかでも運動場ぐらいの大きさの、体を動かすのに持ってこいのような、恐らく体育館もあった。


 窓がほとんどないからか、息苦しく感じる。

 立派なキッチン、お風呂、トイレ。

 そっか、ここがアダムの2年後から暮らしてくスペースなのか。まだ使われてないからなのか、冷たい感じの空間に思える。

 っていうか、アダムのお嫁さんより前に使わせてもらうのを、申し訳なく感じる。

 アダムは話をするのは休んでからにしようと、一室に案内してくれた。

 王族が暮らすにしては地味な部屋だ。他の部屋もそうだったけど。

 ベッド、机、クローゼットがある。質のいいものだけど、華やかでは決してない。

 なんだか、物悲しい。


 ここはアダムの許す人しか入れなくて、現在、わたしとお遣いさま、そしてロサに門戸を開いただけなので、本当に気楽にしていいよと言ってくれた。

 わたしは着替えさせてもらうことにして、2時間後に居間へ集まろうと決めた。



 タボさんに1時間45分経ったら教えてもらうことにして、ハッと気づく。

 このドレス、後ろホックだった。愕然とする。

 しまったぁ!

 もふさまを見てしまったが、……破くのなら得意そうな牙が見えるだけだ。

 これは仕方ない。

 もふさまに断って、部屋を出る。


「アダム」


 居間へ行ってみると、ソファーでアダムが本を読んでいた。


「どうした? 何か必要なものが?」


「悪いんだけどさ、ドレスが一人じゃ脱げなくて……」


 初めて見た。アダムの点目。

 次の瞬間、アダムは頭を支えた。


「ああ、侍女問題があったか。君、ひとりでなんでもできるから大丈夫だと思ったけど、そうだね、さすがにドレスは……」


「背中のホック外してくれる? 上の方だけでもいいから」


「君は恥じらいというのを、少し持った方がいいよ」


「十分、恥ずかしいわよ。でもそれより、こんな窮屈なのを早く脱ぎたい方が勝っているだけ。アダムも一度着てみるといいよ。ご飯も食べられなくて辛いんだから」


 アダムは目頭を抑えている。


「わかったよ。外すから後ろ向いて」


 わたしはホックが見えやすいように、髪を左右に分けて前に垂らすようにする。

 アダムの冷たい指が首にあたる。上の方からどんどん外されていき、ドレスが緩まってくる。

 アダムもロサも侍従なしに行動していることが多いから、自分でなんでもできそうだ。服ももちろん着替えられるみたいだし、女性用のドレスのホックはコツがいるのに難なく外している。すごいな。

 ドレスのホックは背中じゃなくても難しい。閉じるところに強度のある糸を渡してある。反対側にある薄くほとんど隙間のないような〝つ〟型のホックを糸の綴じ目に掛けるのだ。

 腰のところまで外してくれた。スッと風が入り込み、ちょっと寒くなる。


「あと、ごめん、お腹のところの、紐の結び目を解いてくれる?」


 これでギュッと締めているから、自分でだと緩めるのに難儀する。

 お、息がしやすくなった。結び目が解かれ、ベルトの役目をしていた布あてと紐がドレスの下に落ちる。手はふたつしかない。ドレスを落ちないように持っていると、ベルトと紐が取れないなー。


「ありがとう」


 お礼を言って、片手でドレスを押さえて屈もうとすると、後ろから止められる。


「な、何する気?」


 怯えたように、アダムが言った。


「え? 落ちた当て布と紐を取ろうと」


「しゃがんだら、下着姿、僕に見えちゃうよね?」


 そ、そんなこと言ったって。


「こうして片手で押さえてるから、見えないよ。大丈夫」


 アダムは大きなため息をついた。そして

「動くな」と言った。

 下に落ちてしまった布あて、ベルトごと集めて、わたしを抱きあげる。


 え。


 器用に背中で扉を開けながら、わたしにあてがってくれた部屋のベッドに下ろす。

 ペタッと床に伏せていた、もふさまが顔を上げた。


「着替え終わるまで、もう部屋からでないでね」


「……ありがとう」


 アダムの耳の後ろが赤くなっていた。

 あら、悩殺しちゃったかしら?

 けど、別に露出狂なわけではなく、本当に脱げなくて困っていたんだってば。


 ベッドから降りれば、ドレスがストンと下に落ちる。

 ウエストの戒めもなくなった。やっほーい!


『何をしている? 早く何か羽織らないと風邪をひくぞ』


「戒めが解けた自由をね」


 くしゃみがでた。

 もふさまは、言わんこっちゃないといいたげだ。


 慌てて収納ポケットから部屋着を取り出す。もこもこのあったかいやつだ。もふもふ軍団がダンジョンから持ってきてくれたドロップ品、スリーピングシープという魔物の毛糸で作った部屋着だ。ロングガウンをその上から羽織る。

 ドレスはクリーンをかけてポケットに収納。

 ご飯前だけど、お腹が空いたから軽く食べておこう。

 もふさまと卵サンドを半分こした。


 時間まで部屋にいるつもりだったけど、このままベッドにいたら眠ってしまいそうだ。今日は最初の作戦会議だから、ちゃんと起きてないと。

 うーーん、今日のご飯は、そうだ、焼肉にしよう。

 魔道コンロも買ってあるし、鉄板もある。魔物のお肉もいっぱいあるし、野菜も!

 それじゃあ、下準備しとくか。


 キッチンはもちろんまだ使ったことがないようだ。これは使っちゃ悪い感じがするね。料理は魔道コンロでやるのがいいかもね。悪いけれど、流しは使わせてもらいたい。排水できる流しがあるのが、ありがたいから。このキッチンを使うのは下準備だけにしておこう。


 野菜を洗って、切っていく。ボウルにてんこ盛り。

 お肉も分厚くね!

 焼肉のたれは、もちろん常備してある。

 いろんな旨みを足しているから、かなりおいしいよ。

 葉っぱ野菜も準備しておこう。

 大根おろしもマストだね。


「リディア嬢、何をしているの?」


「ああ、アダム。ご飯は焼肉にしようと思って、下準備をしていたの」


「焼肉?」


「うん、鉄板あるから、焼きながら食べようね。どの部屋で食べる?」


「食堂でいいかと思っていたんだけど……」


 ああ、このキッチンと繋がっている、他の部屋よりは小さめなところね。


「本当に食材まで……なんでも持ってるんだね」


 今日から王宮に隠れるとなり、必要な物は?って聞かれたんだけど。持ち歩いているから大丈夫って答えた。食料も十分持っている。

 アダムたちは、まあ、わたしがそう言うなら……、言われたらすぐに用意するって感じだったんだけど。遠慮してとか思ってたのかもしれない。


「義兄上? リディア嬢?」


「あ、ブレドが来たようだ。リディア嬢、呼び方、気をつけてね」


 あ、そうだった。

 ゴットさま、だよね。

 気をつけなくちゃ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 隠れ家に着いて早々アダムへの誘惑笑 いくら紳士なアダムでも気をつけないと駄目ですよ。 物語中では初めての兄弟揃っての食事。 焼肉パーティーは楽しめるといいんですが。
[一言] 王子様に侍女役をさせた人なんてリディアしかいなさそう。ロサもアダムも手先が器用ですね…リディアは恥じらいがあるとは言えない。 地下基地は秘密基地には良さげだけど生涯幽閉場所とすると幽閉計画…
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