表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
15章 あなたとわたし

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

611/1170

第611話 秘密の謁見③開示情報

「皆さま、百聞は一見に如かずと申します。ステータスとお唱えください」


 父さまは神妙に切り出した。

 皆さまが口にした後、揃ってものすごく驚いた。

 わたしとしては、陛下も知らなかったとは予想外だ。

 でもそっか。冒険者ギルドや商業ギルドは国の干渉を受けない独立した機関だ。冒険者たちの上層部が、高位の冒険者のみにと秘匿しているのかもしれない。


「な、なんだ、これは?」


「冒険者が高位になれば、自分の能力値をみる術がある、などという話を耳にしたことはありませんか?」


「それは聞いたことがある」


 宰相が答え、ふむふむと頷いている。

 父さまはオープンまでつけると、他の人にも見えてしまうから気をつけるように注意を入れた。


「そこにスキルが記載されていると思います。娘もそれで、そのスキルの名前を知ったのです」


「呪術回避と記載があるのですか?」


 宰相さまに聞かれる。


「娘のスキルは特殊でして、スキルのレベルがあがるのではなく、どうやら進化するようなのです。それで名前が変わっていきます。そのうちのひとつが、スキルを読み解くものらしく、それでスキル名を知っています」


 ユオブリアのお偉いさまたちが、なるほどという感じに頷く。

 でも自分のボードをチラチラ見てしまっているのは、なんだか可愛らしかった。気になるよね。


「では、呪術をかけられスキルが発動し倒れたが、スキルを見て呪術を回避していたことを知ったということか?」


「その通りではありますが……。詳しく申し上げれば、スキルが発動し、わたしは変化(へんげ)しました。それでスキルが発動したことを知ったのです」


「変化?」


「はい、わたしはトカゲに変化していました」


 場がシーンとした。

 みんなにわかには信じられないのだと思う。なんと言っていいのか、言葉を繋げずにいるみたいだった。


 父さまもそこは端折ってもいいんじゃないかと言った。伯爵令嬢の体裁を保つためにね。でも外国にまで広まり、ここまで話が大きくなってしまった以上、わたしには国の保護がいる。権力の。守ってもらうためには、全部はさすがに打ち明けられないけれど、ある程度は話すべきだろうと思ったのだ。


「トカゲの尻尾切りと洒落たつもりなのか、トカゲに変化して、呪術を回避したようです。魔力を消耗し、幸い人型に戻れましたが、しばらく起き上がることもできませんでした」


「トカゲとは、あの独特な皮膚の、四つ足で壁にも垂直に移動できる、あいつのことでいいかね?」


 わたしと父さまは同時に頷いた。


「今もその姿になれるのか?」


 騎士団長に恐る恐る聞かれる。


「戻れたのも魔力が戻ったからかと思っています。変化して魔力がなくなり、体が辛い散々な目にあったので、もう一度なろうと思ったことはありません」


 みんな頷く。ロサが珍しく、呆気にとられた顔をしている。


「ではリディア嬢を亡くなったとし、罪を被せようとしている輩は、恐らくリディア嬢に呪術をかけた者……」


 わたしはアダムに頷いた。


「そうだと思います。ひと月療養したからって、普通死んだとは思わないですよね? そして罪を被せてくるのは、本当に意味がわからないのです」


「ゴット、お前はどう思う? 元お前の婚約者がかかわっていると思うか?」


「コーデリア嬢を追放した時、後をつけさせました。彼女のしたことは弁明の余地はありませんが、生粋の公爵令嬢。メロディー家から破門され、……つまり彼女は生き延びられないと思えたのです」


 陛下が顎を触る。知ってたろうと思うし、恐らくロサも同じように手を回したのではないかと推測している。なんだかんだいって、ロサもアダムも心根は優しいし、情がある。


「それで?」


「追放されたその地に、彼女の迎えが2組ありました」


「ほう」


「ひとつはメロディー公爵の使いだったそうです」


 それには、みんな驚く。

 なぜって公爵は、コーデリア嬢を最初に見限ったと聞いているから。


「余を欺いていたのだな」


 陛下が肘掛けに肘を置き、つまらなそうに言った。


「家門を手放したら、娘も助けられないと思ったのでしょう」


 宰相さまがもっともなことを言った。

 そっか、メロディー嬢はお父さんに見限られたわけじゃなかったんだ。そこは素直によかったと思う。


「けれど、コーデリア嬢は、その手を取らなかった」


 え?


「……もうひと組は、何者だったのだ?」


「それが、調べてもわからなかったのです」


 陛下も宰相たちも訝しげな顔をした。


「コーデリア嬢は公爵家の使いに言ったそうです。自分は死んだものと思ってくれと。渡された手紙が、今までで一番嬉しい贈り物だと。そうして馬車の者に従者に手荒なことをしないよう、自分はこの馬車で行くのだからと言ったそうです」


 静けさが舞い降りた。

 公爵家の保護を蹴る。それが彼女の矜持なのだと思う。着服という悪いことをした自分に対しての。公爵令嬢としてのプライド。


「それでお前は、この一連のことにコーデリア・メロディーが関係していると思うのか?」


「駒にされているのかもしれないとは思います。でもそれを望んだわけではないでしょうね」


「どうしてそう思った?」


「それは……。彼女は私を嫌っていて、私の婚約者に返り咲くことを望んでないと思うからです」


 え。ちょっと待って。彼女は第1王子の婚約者に返り咲けるの? 

 うそぉ。着服が唆されたものなら、追放は解かれるってこと? いや、彼女がやったことなんだから……。脅されたとなれば話は変わってくるか。うーむ。敵が話をそう持って来るってことも、考えられるってことか。

 メロディー嬢が仕組んでいた場合、第1王子と結婚するという利点が作れるってことか。

 でもわたしもそこは引っかかるな。メロディー嬢は第1王子さまの婚約者であることが嬉しそうではなかったから。アダムの言うように、メロディー嬢はアダムの婚約者を嫌がっていたように思えるから、今更返り咲きたいなんて考えない気がするけど。



「お前は婚約者の気持ちも、繋いでおけなかったのか?」


「……申し訳ありません」


 ただ頭を下げるアダム。わたしだったら〝知らないよ!〟って怒りたくなっちゃう。

 陛下は肘をついて、頬に指を添える。


「シュタイン家でも敵の姿が見えてないとなると、困ったな」


 って、陛下は全然困ってない口調なんだけど。


「リディア嬢、あなたは炙り出す方法を、すでに考えられているのではありませんか?」


 アダムにそう促される。


「なんと、そうなのか、シュタイン嬢?」


「……ウチの仕掛ける網ぐらいでは、敵は引っかからないようです」


「それはもっと大きな網なら、敵が引っかかると言っているのかな?」


「さようでございます、陛下」


 わたしはとっておきの笑顔で、にこりと笑って見せた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
[良い点] 自分のボードをチラ見する偉い人たちかわいい。 魔法大国でもトップの人たちのステータスってどんなもんなんでしょう? 神々の加護がいっぱいあるのかな [一言] もう一組がずっとコーデリアの協力…
[気になる点] メロディー嬢を迎えに来たもう一組 彼らが一連の黒幕かな? [一言] シュタイン家以外にも明かされたステータス。 王様の魔力量とか見てみたいですね。 それにしても王様はリディアのトカゲ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ