表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
15章 あなたとわたし

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

610/1170

第610話 秘密の謁見② ヘンテコスキル

「病み上がりであるそうだが、まずはこうして、生きている令嬢と会うことができて嬉しいぞ。秘密裏に来てもらったのは他でもない。なにゆえかはわからないが、令嬢が亡くなったと頑なに信じている輩がおってな。外国にも噂は届き、主に令嬢を嫁に迎えたいと思っている貴族たちが国に訴え、多くの国から問い合わせが相次いでいる」


 そう言って、小さく息を落とす。

 言葉通り、嫁にしたいんだけど、療養中としか言わないんだよね、本当?って問い合わせだったら、国も陛下も取り次いだりしないだろう。でもそれは相手が犯罪者だったというと趣は変わってくる。


 勝手に縁を結びたがってきて、こちらは断っているのに、しつこく求婚してきた。けれどその相手が罪を犯していた場合、何かしらの繋がりがあると、悪い噂が立ったりする。それを避けるためには、騙されていたとばかりに追求したり、攻撃するしか手立てはない。要するに保身だ。


 わたしが死んだとされ、メロディー嬢追放の立役者だったという噂が蔓延している今、事実を詳かにと各国から問い合わせが殺到しているのだろう。


「現在、令嬢にまつわる噂が飛び交っておる。亡くなった以外に、令嬢が罪を侵したとするものだ。耳にしているか? 発言を許す」


「はい、存じております。第1王子殿下の元婚約者であったコーデリア・メロディー嬢の資金の着服、それが彼女を失錯させるために、わたしが仕向けたことだと」


「単刀直入に聞こう。其方は、そう仕向けたのか?」


「いいえ、わたしはそんなことをしておりません」


 陛下は顎を触った。


「そなたが亡くなり、死人に口無しとばかりに、この噂が広がっている。療養中でそなたが亡くなっていると噂が出た時、どうして生きていると世間に公表しなかった?」


「それは、わたしが死んだと言い出した者たちを、炙り出すためでございます」


 陛下はまたニヤリと笑った。


「炙り出せたのか?」


「……実態は掴めておりません」


「ほう、コーデリア嬢だとは思っていないのか?」


「その答えを本日聞けると思い、参上いたしました」


「それはがっかりさせることになるな。コーデリアの行方は掴めていない」


 表に出てこないということは、やっぱりメロディー嬢ではないのかな?


「普通ならコーデリアだと思うところだろう。そう思わぬのはなぜだ?」


「メロディーさまかもしれません。首謀者は誰だかはわかりません。でも噂に紛れて名前が出され、その本人が黒幕と思うのは、早計だと思ったのです」


「黒幕だったら、自分の名前を使うわけがないと?」


「そうとは言い切れません……。ただ……メロディーさまをよく知っているわけではありませんが……メロディーさまが考える計画とは趣が違う気がしたのです」


 そうなんだよね。彼女は今まで、いろいろ計略を巡らしてきた。

 それはねちっこくまとわりつく感じで、執拗な嫌がらせだと感じた。今回みたいにスパーンと呪って殺しちゃって、全部罪被せちゃって、ほらまあるく収まった!とはストレートすぎて、彼女らしくないと思った。


「それにしても不思議だな。あちらは、どうしてシュタイン嬢が亡くなったと頑なに信じているのか、その心当たりはあるか?」


 まあ、そこだよね。

 わたしは父さまと顔を見合わせる。


「わたしは少し前まで、本当に伏せっておりました。起き上がることもままならない日もあったのです」


「そうであったか……。では奴らは、それを知っていたということか? どこからか、漏れたと?」


「いいえ。わたしは呪術で呪われました。それゆえに、あちらはわたしが死んだと確信しているのです」


 皆さまの目が開かれる。


「呪い?」


 ロサが声を上げる。


「母君が光魔法で呪術を浄化したのか?」


「いいえ」


 わたしは、呪術の浄化に対しての誤解を、解こうと思った。今後、光の使い手に、呪いの欠片を残してほしくないから。


「シュタイン領の町外れの家は、魔使いの家でした。家族しか入れない部屋があり、そこには書籍が数多くあります。魔力本なども存在します」


 魔法士長さまたちが、身を乗り出した。


「それにより知ったことですが、呪術は呪術でしか浄化はできないそうです」


「なんだと?」


「光魔法で呪術を浄化すると、光の使い手に呪術の残滓が残るそうです。だから魔の規制される300年より前は、光の使い手は呪術も習ったそうです。呪術の解呪を学んでないと命をすり減らすだけだから」


 みんなうっすらと口を開けている。


「わたしは幼い頃、隷属の呪符を使われました。身体の中に元々瘴気が少なかったからでしょうか、わたしの中に未だその呪符の残滓が小さくあるそうです」


 みんな息を呑む。


「それによって、よくないものを引き寄せることがあると、教えてもらいました。わたしはその残滓をどうにかできないかと、家の書物を読み漁りました。そして、呪術は呪術師によってしか浄化できないことを知りました。知ってから、わたしは違法なことを知っておりますが、呪術師を探しています」


 陛下を見上げれば、苦いものを噛んだような顔をしている。


「そんな最中(さなか)に、今回のことは突然起こりました。わたしは呪術をかけられました。……わたしのスキルが発動し、わたしは死を免れました」


「スキルで呪術を回避!」


 神官長さまは驚きながらも、称えるような声音だった。


「呪術師は媒体となるものを介して、呪術を施します。呪術が成功したかどうか、その媒体の状態で見極めるようです。成就すれば媒体が壊れます。媒体を壊したか壊されたかで、呪った人か、呪われた人か、どちらかの命が消えます。わたしは呪術を回避しましたが、恐らくその媒体は壊れ、呪った人も死んでいない、だから成功したと思える状態なのだと思います」


 皆さま、重たく頷いた。


「わたしのスキルはヘンテコ……少し特殊なようでして。呪詛回避が発動し、変化(へんげ)の尻尾切りが施行されたのです」


「……そんなスキルは聞いたことがないな。特殊だから令嬢が名付けたのか?」


 少し話疲れたのを感じていると、父さまが変わりに説明してくれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
[良い点] 光持ちの未来のために権力者に光魔法の浄化と呪術の解呪について伝えられる機会が出来て良かった。 [気になる点] 残滓が残るのは呪術の形にした場合だけなんでしょうか? 呪術は瘴気を利用して行う…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ