表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
14章 君の味方

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

593/1171

第593話 君の中のロマンチック③見た?

「見た?」


 顔だけ振り返り尋ねると、兄さまはわたしから視線をそらした。


「見てない」


「嘘!」


「……見た。けっこうしっかり」


 だよなぁーーーーーーー。


「忘れて!」


「……目に焼きついちゃったから、無理、かな?」


 う、うわーーーーん。

 泣き散らかして、失態を忘れたいところだけど、うう、寒い。


「君のことだから収納袋に服、あるよね。まず着替えようか。話はそれからだ」


 収納袋、アレは魔力に関係なく出せるから……、わたしの魔力戻ったのかな? それで呪いが……? ステータスボードを呼び出す。魔力が8だ。

 あ、これ、やばいやつ。


「魔力が……寒い」


「リ、リディー?」


 あ、やっといつもみたいに呼んでくれた。

 ガシッと抱えられる。


「魔力が低下。ダメだ、寒い」


「え?」







 ん?

 鳥のさえずりが聞こえる。

 あれ、誰かに抱きかかえられてる。


「気がついた?」


 後ろから兄さまの声がする。

 わたしは兄さまのマントやら服やらにぐるぐる巻きにされていて、兄さまに抱えられ眠っていたみたいだ。


 うっ。な、なんてこと!?


 うっ、わたし臭くないかな。

 トカゲになってから、お湯にはよく浸かっていたものの、体は洗ってないのだ。だって自分の手が届かなかったんだもん。けれど誰かに洗ってもらうのもなんなので、長くお湯に浸かるだけにしてきたのだ。絶対臭ってそう。


 動こうとしたけど、頭を上げようとしただけで、頭がガンガンしてまた頭を落とす。


「どこか痛いの? 大丈夫?」


 ステータスボードをみると、魔力が10になっていた。


「魔力の低下で動けないみたい。でも8から10にはアップした」


「……魔力10じゃ、起き上がれないか……」


 魔力の容量がかなり多くなってから、1000を切るとあり得ないくらいのダメージを受ける。少ないときに魔力を使うと命を削ることがある。魔力を使わなければ命にかかわるような問題にはならないけれど、身体ってのは元の状態っていうか、満たされた状態に戻ろうとするからなのか、魔素を取り入れることに一生懸命になって、その他のことにはエネルギーを使わせないようにしているんじゃないかと思う。

 魔力酔いも辛いけど、この枯渇状態はもっと辛かった。


「兄さまをつけてたとかじゃないの。本当に偶然で……」


 姿を替えてまで、つき纏ったなんて思われたら哀しい。

 頭がガンガンしている。


「言っておくと、ありったけの布でぐるぐる巻きにしたのに、君が寒いって呟くから、こうしてあたためてる。他に意はないから」


 うう。ありったけの布を奪ってるのね。


「君が伏せっているって噂に聞いたけど、どこかを調べるのに不在ってことにしてるの?」


 わたしの噂を気にしてくれてたのかな?


「ううん、呪いに掛かっちゃったの」


 声を出すと、またそれが頭に響く。


「呪い?」


 驚いた声がする。

 でもこの頭痛のおかげで感情が一部麻痺していて、助かっているのかもしれない。こんな恥ずかしい状況、まともな思考では身が持たない。


「……呪いでトカゲに?」


「ちょっと違う。呪術にかかって、多分わたしのスキルが発動して、呪いをはねのけたみたいなんだけど、トカゲになっちゃってたの」


「トカゲに?」


「トカゲの尻尾切りで、死を免れたんじゃないかと推測してる」


 わたしを抱きしめる力が、一瞬強くなった。


「魔力がなくなって、トカゲのままだったのかもしれない。ウチと懇意にしたい人がいっぱいいて、それで療養中ってことにして、わたしはルームに籠もっていたの」


「ルームに籠もっていたのに、どうしてこんなところに?」


「……それはもふさまたちと農場に……遊びに来て……」


 声が小さくなる。


「父さまたちは知ってるの?」


 マズい……。


「それより兄さまはなぜこんなところに? クイとベアはどこに偵察へ?」


 体の向きを苦労して変えると、動いたから頭痛がひどくなる。


「うっ」


「動かないで。まだ、辛いだろ?」


 びっくりするぐらい近くに、兄さまの顔があった。


「父さまたちには内緒で来たんだね? 主人さまたちはどこにいるの? なんではぐれたの?」


 お見通し感がすごい。一緒に育ったんだもの、当たり前か。


「動けなさそうだから、伝達魔法で父さまに連絡して迎えに来てもらう?」


 兄さまはニコッと笑った。


「今、君はひとりだし、自由に動けない。私を頼るしかないなら、事情を話すぐらいは当たり前じゃないかい?」


 う、その通りだ。


「ごめんなさい」


「変わらず、素直だな。そんなに素直だと……わかってる? こんな無防備にひとりで。トカゲでも、今の姿でも、どうにでもされちゃうんだぞ? 父さまや主人さまたちの手の届かないところで、簡単に命を奪われるかもしれないんだぞ?」


 本当にそうだった。

 トカゲになっても鈍臭いと言われていたものの、なぜか人型のリディアよりは危険はない気がしていた。だから、農場まで来たし、鳥に咥えられるまで、本当にそんなことが起こり得ると理解してなかった。




 気がつくと、また時間が経っていた。兄さまがご飯を食べさせてくれる。

 話しては眠り、眠っては食べて、話してまた眠りと、どれくらい 繰り返しただろう。やっと魔力が50を超え、身体を起こせるまでになった。でもそれ以上は動けなくて、服を着ることも自分ではできず、わたしは兄さまの服やら何やらにくるまったままだ。


 クイとベアが帰ってきた。

 わたしを見つけると、ためらわずわたしに抱きついてきた。わたしもふたりを抱きしめる。そこまで長い間離れていたわけじゃないのにね。ふたりとも外で暮らしているからか、毛が硬いものになっている。自然ってのはよくできてる。自分の身を守るために、自分を作り替えていくんだから。


 わたしがここにいる経緯を話し、みんなが農場にいるというと、わたしを動かせないので、みんなを連れてきてくれることになった。

 わたしがいなくなってどれくらい経ったかわからないけど、すごく心配をかけたはずだ。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
[一言] トカゲ中はずっと枯渇で人に戻っても回復が遅いんだなあ。 よく眠ってたのも寒いからだけじゃなくて魔力量のせいもあったのかな? 枯渇させたら魔力が伸びると最初の頃書いてあったけどまた伸びるんだろ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ