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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
14章 君の味方

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第572話 記念パーティー⑥空似

「フランツ、お前の元々の髪は何色だ?」


「はい、殿下。私の元の髪は紫がかった銀髪でございます。

 ご存知の通り、私は養子です。雪山で遭難していたところを、救っていただきました。商隊が盗賊にあい、何もかも無くしました。恐ろしい目にあい、覚えているのは扱っていた商品で計算ができることだけです。

 北の辺境は雪深い山でございます。そこでこの白く見える髪は寒々しく見えました。それなら一層のことと、シュタイン家の子供たちと髪色を揃え、兄妹のように私を迎え入れてくれたのです」


「嘘だ!」


「上級魔法士よ、嘘だと言っているが?」


「いえ、魔法は解きました。こちらが、この方の本来の髪の色です」


 茶色の髪の人は自信を持っていう。


「わたしになんの恨みがありますの? わたしの記念すべきパーティーに乱入し、場をめちゃくちゃにし、わたしの婚約者を犯罪者呼ばわりをして!」


 涙も浮かべちゃる!


「ああ、リディー、泣かないで。魔法をかけていたのがよくなかったね」


「いいえ、同じ髪色がいいと強請(ねだ)ったのはわたしだもの。それを、こんな嫌な思いをさせてごめんなさい!」


「リディーが謝ることないよ」


 もふさまが戻ってきたと思ったら、リュックが膨らんでいた。

 そして、レオからいいことを聞く。

 わたしはキッとキリアン伯を睨みつける。


「ウチを陥れるつもりでしたね?」


「私の髪が黒かったと、嘘の情報を流した方も気になりますね」


 兄さまもキリアン伯を睨んだ。


「こ、これは何かの間違いだ! か、髪色が違ってもわかるだろう、こんな似ている他人がいるはずない!」


「……そうですね、不思議ですわ。本当に赤の他人が似ることなんてあるのかしら? 上級魔法士さん、バイエルン候には魔法がかかっておりませんか?」


「は? 何をおっしゃいます?」


「わたしはふたりがそう似ているとは思いませんけれど、こうやって陥れようとしていることを鑑みて、……そちらに細工をしているのではないかと疑いたくなりますわ。バイエルンさまは、お顔をフランツさまに似せたり、髪の色を変えたりはされていませんの?」


 素直なバイエルン侯は顔を青くする。


「な、何を! これはクラウス・バイエルンが小賢しくみんなを騙しているんだ!」


 まだ言うか。


「上級魔法士よ、どうだ、バイエルン候に魔法がかかっているのか?」


 魔法士はチラッとまたキリアン伯を見たけれど、一国の王子に質問されていると思い出したんだろう。


「バイエルン侯にも、微かですが魔法の波動を感じます」


「な、何を言うんだ!」


 バイエルン侯は下を向き、イキリ出したのはキリアン伯だ。


「殿下、これは罠です!」


「お前たちが勝手にやってきて、勝手に騒いでいただけなのに……それがどうして罠を仕掛けられたと言う話になるんだ?」


「殿下、私には魔法がかかっております」


 初めてバイエルン侯が、自分の意思で話した。


「それはどんな魔法だ?」


「私が前バイエルン侯に似ていると思わせる魔法でございます」


「バイエルン侯!」


 うわー、本人を下の者が候呼びだよ。爵位文化が根強いだけに、会場の皆さまも目を細めている。


「なぜ、そんなことを?」


「シュタイン嬢、めでたき席に本当に申し訳ありません。

 ただ、私は確信しております。そこの者は、我が一族のクラウス・バイエルンだと。ですが、今提出できるような証拠はありません。そこでキリアン伯爵より提案いただきました。この記念パーティーにて、そこの者がクラウス・バイエルンだと印象づけようと。それには見た目を似せるのが一番効果が高い。私は小細工は必要ないと申し上げたのですが、キリアン伯は見た目が大事だとおっしゃるので」


 おどおどして見せたのは演技か。この人、小細工は必要ないって言った。なんか隠し玉があるんだ。

 兄さまが大丈夫だと言うように、わたしの手を握る。


「魔法を解けば、黒髪のフランツが現れると思って、小細工は必要ないと思ったのか?」


「いえ。魔法で、私の見た目を変えるのと同時に声も少しばかりいじっておりまして。さて、この会場で前バイエルン侯と話したことがある方はいらっしゃいますでしょうか?」


 誰も反応しなかったので、ロサが尋ねる。


「それが大事なことなのか?」


「はい」


 ロサが、前バイエルン候と話したことがある者は前に出てきてくれというと、何人か気が進まないと言う感じで歩み出た。

 ロサが目で尋ねると、バイエルン候は頷く。


「魔法士よ、私の魔法を解いてくれ」


 魔法士はロサを見て確認すると、バイエルン侯に向かって何かを唱える。

 そうすると……顔は整っているけれど、別に〝似てる〟わけではない人だった。


「私より、そこのフランツ・シュタイン・ランディラカの方が、前バイエルン侯に似ているでしょう?」


 あ、声が違くなった。

 前に出ていた、前バイエルン侯を知っている人たちの目が見開く。


「ん、どうした?」


「私は顔よりも、前バイエルン侯の声に似ているそうなのです」


「そうなのか?」


 ロサが尋ねると、彼らは驚きつつも頷いた。

 嘘じゃないんだろう。わたしの手を握る兄さまのギュが少し強くなったから。


「その前バイエルン侯と似ている声は、フランツとは似ていないようだが?」


「殿下、私は前バイエルン侯が再婚した時の映像を持っています。それは録音録画の魔具ができてすぐの頃で、ねだって買ってもらったものでした。

 それで撮ることを条件に一族の末端の私が結婚披露宴に行くことができたのです」


「それで?」


「そこには幼いクラウス・バイエルンの声が入っています」


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