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【コミカライズ決定】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
13章 いざ尋常に勝負

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第548話 魔法戦⑥助けてもらった

 アマディスはお父さんが狩人だそうだ。それで、骨をまとめて処分するなんてこともあるそうで、骨を小さく砕くのにベトラジアーゼを塗って使っていたのを見たことがあるそうだ。骨の成分の何かを溶かす働きがあるらしい。

 エトガルは家が鉱石を飾り細工にするような仕事をするらしく、鉱石中の成分を取り除く手法なんかでも使うそうで、そのことを思い出したんだって。

 薬草学では動物性の素材で飲み薬を作る時に、素材が変化しないように使用した気がする。


「で、リディア持ってるの?」


 みんなに期待の目で見られる。


「ベトラジアーゼは持ってないけど、貝とワラと布とメーゼ持ってる。あとチオノスも」


「なんでチオノス持ってるのって聞きたくなるけど、それってベトラジアードは作れるってことね?」


 ジョセフィンが言った。


「うん。飲むので使うんじゃないから、ベトラジアードでもいいよね?」


 ベトラジアードは液体だ。ベトラジアードから身体に悪いなんだっけ、何か反応させて物質を抜くとベトラジアーゼとなる。


 誘拐された時、カタリの花の根の汁が、メーゼの代用品になると知って助かった。あれからわたしは、薬草学で、代用品や、その薬品はどうやって作ることができるのかを先生に聞いた。試験には関係ないんだけど、どこでどう役立つかわからないからだ。自分でそれを最初から調べるより、せっかくの専門家がいるわけだからと、聞きまくっている。面白かったようで、みんなもそれを真似した。

 ベトラジアードは貝を砕いたものと、ワラと布の燃えかすとメーゼを混ぜれば代用品ができる。


「貝、持ってるの?」


 アダムが惚けた顔で言った。


「うん、砕いたやつあるよ」


 500年前の貝を砕いた残りがね。

 わたしは火魔法が使える人に藁と布の燃えかすを作ってもらった。

 3:1:1:2。

 薬草学のノートを出して一応確認すると、そんな物までいつも持ち歩いているのかと笑われた。っていうか、家に収納するもの以外、全て収納ポケットに入っている。

 でも、役に立ってるもん。


 器に全てを入れて、すりこぎ棒でゴリゴリやる。やがて粘り気が出てきたので、同量のチオノスを注いだ。このチオノスは代用品がないって聞いて、買っておいた物だ。けれどギリギリの量だった。

 少しかき混ぜて放っておけばベトラジアードの完成だ。


 


 アイデラが胸の前で手を組む。

 目を瞑り……ドラゴンが、ん? と首をもたげた。

 足の下に隠したはずのものを確認した。

 知能高い。あ、あるじゃんって理解して、他のには見向きせずダメかと思ったけど。

 ドラゴンはやはり、少し先にある白い物が気になったようで、体を伸ばした。

 起き上がり、口で引き寄せようとすると、遠くにコロコロと転がった。

 ドラゴンは一歩出て、今度は足で引き寄せようとしたが、それはさらに遠くへ行った。

 ドラゴンが近づくと、それは逃げる。



 さ、今のうちだ!

 骨の細いところに、ベトラジアードをベタっと塗った。

 あ、真っ白だったところが灰色がかったり、くすんだりした。

 色が変わったところで、アダムが短剣をあてると、ただ短剣を当てた時よりは手応えがあったみたい。けれど、それを折ることはできなかった。


 もう一度ベトラジアードを同じところに塗りつける。

 アダムが短剣を下ろすタイミングで風を込めた。

 あ。5センチくらいだけど、一部を落とすことができた。

 やった!


 みんなガッツポーズをしたり、小さな喜びのアクションをした。

 みんなが地上に戻るぞと移動しだす。

 わたしは大元の骨に水をかけて薬品を落とした。そしてそっと浄化する。

 これでよし。

 ごめんね、一部を切っちゃって。

 立ち上がるとアダムと目があった。


「ん?」


「君……」


「みんな早く上へ」


 ベンの低い声が焦りを帯びて聞こえる。

 みんな走って穴の下へと急いだ。

 幻影部隊に合図を送ると、アイデラはその白いのを逆方向へと転がらせていく。ドラゴンは追いかけて、本物の白い骨にたどり着く。

 よかった。



 ん? 白い骨にたどり着いたが、ドラゴンは穴の下、つまりわたしたちの方を見た。見ている。


「い、急げ」


 その様子に気づいたリキが声をあげた。

 リキのペアのダリアを風で上にあげようとして、下からの出た風と相まってダリアが高いところへ放られ、その勢いままに下に落ちてくる。

 もう一回、風!


 風を出す前に、横から来たドラゴンがパクリとダリアを咥えた。


「いやーーーーーーー」


 叫んだら口をアダムに押さえられた。

 ドラゴンはそのままぴょんと飛び上がって、地上に出る。



 ! 上に行けるの?

 下に残っていた子たちも、慌てて上にあがる。

 わたしもスケボーで上にあがった。


 ドラゴンがダリアをペッとした。

 キャシーがダリアに駆け寄る。

 ダリアが起き上がる。怪我とかしてなさそうだ。噛まれた感じもない。

 胸を撫で下ろす。

 けど、ドラゴン。目の前にドラゴンがいる!





 ドラゴンが息を吸い込んだ。


「風、来る!」


 D組だけじゃない人の気配、というかマップの点。わたしは大きい声で告げた。


 みんな地面に伏せた。ドラゴンが口から風を出すと、風の刃でいっぱい立ち並んでいた木が倒されていた。

 破壊力、ヤバイ。

 まさか地上にあがってくるとは思わなかった。

 その時


「D組、こっちに走れ!」


 あれはA組の男子だ。

 手を上にあげ、グルグル振っている。

 ドラゴンに追いかけられているわたしたちは、その声に従って素直に走った。

 わたしたちが通り抜けると、そこにA組の5人が出てきて、ドラゴンに向かって手を突き出す。


 魔法だ!

 ドラゴンの胸でそれは光った。

 多分、火と風を標的に合わせたんだ。

 ドラゴンが後ろ向きに倒れて、穴の中に落ちた。


 わたしたちはほっと地面に座り込んだ。


「ありがたかったが、なぜここにいて、僕たちを助けた?」


 みんなの疑問を代表したように、アダムが尋ねる。


「出遅れたようでね。それなら、君たちが手にしたものを、いただこうと思ったんだ」


「きったねーぞ!」


 イシュメルが叫んだのを皮切りに、みんな口々に侮蔑の言葉を投げかけた。


「そうなんだ。だから少し心苦しかったけど、今助けたから、これで貸し借りなしになると思ってね?」


「比重が合わねーだろ」


「でも、窮地だったろ?」


 確かに。そして学園側が奪い合いを禁止していないのだ。


「大将とペアは行けよ、ここは俺らが!」


「そうはさせないよ?」


 A組の子たちが次々と姿を現した。

 木がなぎ倒されたスペースは、対戦するのにちょうど良さそうだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ドラゴンかわいい。ダリアについては助けてもらったように見えるけどどうなんだろう? 少なくとも過激な子ではなさそう。
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